著者
渡辺 理文 森本 信也 小湊 清隆
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.469-480, 2016-03-19 (Released:2016-04-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では, キー・コンピテンシーを基にして, 理科教育において育成すべき資質・能力を, 協同的な問題解決によって科学概念を構築し表現する能力と捉えた。その育成を促す教授・学習方略の実践を行うことを目的として, Taylorらの提案した学習環境のデザインの枠組みである「構成主義に基づく学習環境の五つの鍵となる要素(five key dimensions of critical constructivist learning environment)」に基づいて理科授業を計画・実践した。実践した授業は, 小学校第4学年の空気の温度変化による体積変化の学習である。授業を分析した結果, (1)児童が協同的に問題解決を行っていた, (2)児童は自らの考えをパフォーマンスとして表出し, 学習を進める中で, それを深化させていた, (3)教師は児童のパフォーマンスをアセスメントし, それに基づいて支援を行っていた, ことが明らかになった。本研究で計画・実践した理科授業は, 資質・能力の育成を促す教授・学習方略が具現化されており, 理科授業を計画する枠組みとして, Taylorらの提案が有用であることが明らかになった。
著者
奥村 仁一 熊野 善介
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.421-434, 2016-03-19 (Released:2016-04-23)
参考文献数
10
被引用文献数
1

PISAやTIMSS等の国際学力調査において日本の児童・生徒の読解力に問題があるとの結果を受けて, 平成21年に学習指導要領の改訂が行われ, その大きな7つのポイントの第1番目に「言語活動の充実」があげられた。これは各教科を貫いて改善されなければならないとしている。そこで本研究は, 高等学校生物においてグループ学習による調べ学習および学習内容の発表を行い, 生徒が発表に取り組む様子を撮影したビデオを使って振り返り学習を行った。そして発表直後とビデオによる振り返り学習後にアンケートを行い, 生徒の意識の変容についてt検定や計量テキスト分析により客観的に分析した。その結果, ビデオによる振り返り学習は, 学習内容や発表内容そのものではなく, 発表の態度や声の大きさ, 文字や図・グラフ等についての直接的・物理的な発表における言語活動自体を振り返る効果が大きいことが確認され, 言語活動に対しての意識付けの観点から教育的価値が高いことが証明された。
著者
飯田 寛志 後藤 顕一
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.285-297, 2015
被引用文献数
2

理科授業における, 資質・能力を育成する教育改革に対応した学習評価の在り方について, 国内外の調査では資質・能力の育成の柱の一つである「子供の主体的な学びを引き出す学習を促進させていく」ことに課題があることがわかっている。その改善のためには「内容と学習活動と学習評価」を一体としてつないでいき, 子供の学習意欲を引き出し, 主体的・協働的な学びを促進し, それらを含め資質・能力に結び付けていくことが求められる。さらに, カリキュラム・マネジメントに基づき, 行った実践や学習評価を検証・再構成していくことが必要であると考えられる。そこで, 主体的な学びを引き出すために, 相互評価表を用いる学習活動を取り入れた授業の実践を試行した。相互評価表を用いる学習活動とは, 授業における学習課題に対する記述について, 一定の評価規準を用いて生徒それぞれが自己評価と他者評価を行い, 評価結果とともに課題に対する記述を振り返る中で, 主体的に学習に取り組みながら表現力等を育成することを目的とするものである。本研究は, 相互評価表を用いる学習活動をデザインし, 実践を試行, 検証するPDCAサイクルを授業づくりのプロセスとして意識して取り組む中で, 相互評価表を用いる学習活動の持つ主体的な学びを醸成する仕組みについて明らかにすることをねらいとして行った。実践の結果, 相互評価表を用いる学習活動を取り入れた授業の実践とその授業づくりの過程は, 教師の評価観の転換を促すとともに, 生徒の主体的な学びを引き出すために必要な要素の一つである, 学習意欲の向上に寄与する可能性があることが示唆された。