著者
橋本 真理子 幾竹 浩子 堀田 昇
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.19, pp.67-71, 1997

本研究は,高等学校正課体育授業の中で,自己の健康や体力についての意識を持たせながら,有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行わせることにより,体脂肪量を減少させ,かつ筋力,筋持久力,全身持久力などの体力向上の面からその効果を検討することであった。実験は,MとAの2高等学校3年生女子生徒51名の授業受講者を対象に行い,前後に,オリエンテーション,形態計測,体力測定を行い,Body Mass Index(BMI : 体重(kg)/身長(m)2)をもとに,BMIが23.0以上の過体重の生徒(n=12)を被験者とした。実験は,2校で同一の有酸素運動,筋力トレーニングプログラムを処方し,20時間(週3時間・約2ヵ月間)実施した。形態についてはすべての値において減少が認められた。体重が減少した被験者は,全体の92%であり,体脂肪量については,全員が減少した。また,BMIについては,12名中5名の被験者が正常域に移行し,なおかつ9名の被験者にLean Body Mass (LBM : 体重(kg)−体重(kg)×体脂肪率(%))の増加がみられた。体力面では,脚筋力,筋持久力,全身持久力ともに向上した。以上の結果から,有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせたプログラムは,体脂肪量を減少させ,体力向上を計ることに有効であった。
著者
久保山 直己 大柿 哲朗
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-12, 2005
被引用文献数
1

Voluntary movement is performed by coordinated action of several muscles.Even during simple movement such as finger tapping, it is not performed by single muscular contraction. Therefore the brain region where controls coordinated muscles to carry out voluntary movement must be activated activity. Activated region and degree are different by movement forms and movement frequency. Relationship between movement and brain activity is gradually becoming clear. However, every phenomenon of movement control is not known yet. There is blood flow distribution in brain during movement. Currently, a point of view that blood flow of the whole brain does not increase drastically by simple movement dominant. This knowledge suggests the possibility that blood flow distribution in brain changes into within movement. That is to say, the increase and decrease of blood volume may occur by each movement in cerebral region. To make clear the relationship between movement and brain activity, it will be necessary for investigations about blood flow distribution in brain with movement. In addition, we discussed Nerve placement of cerebral motor cortex and output of a muscle contraction signal.
著者
徳永 幹雄
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.20, pp.21-30, 1998
被引用文献数
3

スポーツ選手が試合で実力を発揮するためには試合前1カ月位からの心理的コンディショニングが重要である。そこで,本研究ではスポーツ選手の心理的コンディショニングの指導に役立つ検査法として試合前の心理状態を診断する方法を開発することを目的とした。スポーツクラブ所属者246名を対象に調査を実施し,診断法を開発すると共に,作成された診断法をいくつかのクラブに適用し,その有効性を検討した。おもな結果は,次のとおりである。1.試合前の心理状態を診断する方法として20項目からなる質問用紙を作成して調査を実施し,統計的手法を用いて分析した結果,質問項目の妥当性,テストとしての信頼性が証明され,質問項目は5因子,9尺度に分類することができた。2.作成された「調査票」を用いて,試合前の心理状態を比較した結果,国体強化選手という明確な目標を持っている集団は高得点を示した。また,継続的に調査を実施することによりチーム全体,レギュラー選手,個人の心理状態の変化を分析することができ,試合前の心理的コンディショニングの指導に役立つことが示唆された。3.これらの結果を踏まえ,診断検査用紙としての形式を整え,「試合前の心理状態診断検査(Diagnostic Inventry of Psychological State Before Competition,略してDIPS-B.1)」 を作成した。
著者
徳永 幹雄 上田 真寿美
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.69-73, 2002

40才〜60才未満の女性541名を対象に,運動経験と更年期症状の関係及びテニス実施者,その他の運動 実施者,運動経験なし群の3群による更年期症状の関係を分析した。その結果は,以下のとおりである。 1.30歳代以降に運動経験がある者はない者よりも更年期症状が低かった。 2.運動経験がある者,とくに球技実施者(テニスやバレーボール実施者など)は,「いらだち」「頭痛」及び「心悸亢進」といった症状が低かった。 3.運動の継続が長い者ほど更年期症状が低い傾向であった。4.更年期症状の低かった者は,30歳代および40歳代〜閉経に「適度なきつさ」の運動を60分以 上,週に1〜4回程度している者が多かった。5.テニス実施者は他の種目を実施していた者や運動を実施していなかった者より更年期症状が低い 傾向にあった。とくに,「よくした者」より「まあまあした」と答えた中程度の実施者ほど更年期症状が低いことが明らかされた。 以上のことから,30歳代以降の運動経験は更年期症状の軽減に有効であり,その運動は無理のない程度で約1時間,週に2〜3回が適当であることから,テ ニスを無理なく行うことは更年期症状の軽減につながることが推察された。
著者
橋本 公雄 徳永 幹雄
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.21, pp.53-62, 1999
被引用文献数
1

本研究は,社会人と学生を対象にメンタルヘルスパターン診断検査(Mental health Pattern: MHP)を 作成し,尺度の信頼性と妥当性を検討するため行われた。結果を要約すると,下記に示すとおりである。 1.SCL-4尺度に生活の満足感(QOL項目)などを追加した調査票から,13因子(全分散寄与率:61.3%)を抽出した。 2.心理的ストレス(こだわり,注意散漫),社会的ストレス(対人緊張,対人回避),身体的ストレス(疲労,睡眠・起床障害)からなるSCL尺度と,生 活の満足感からなるQOL尺度の7つの下位尺度(各5項目づつ)でMHP尺度を作成した。 3.MHP尺度の高い信頼性と妥当性が検証された。しかし,生活の満足感の妥当性の検証は本研究では行われなかった。 4.SCL尺度得点とQOL尺度得点のそれぞれのM+0.5SDを基準値とし,「はつらつ型」「ゆうゆう(だ らだら)型」「ふうふう型」「へとへと型」と命名される4つのメンタルヘルスパターンに分類した。 5.メンタルヘルスパターンの出現率は,性差,年代差はなく,「ゆうゆう(だらだら)型」が60%を占め,その他のパターンはそれぞれ10%強を占めた。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 瀧 豊樹
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-51, 1999

各種スポーツ大会に参加した高校生,大学生,社会 人選手及び国民体育大会に参加した選手を対象にして,試合中の心理状態の診断法とその有効性について考察した。 そのおもな結果は次のとおりである。1.10項目から構成される試合中の心理状態診断法の質問項目の妥当性,診断検査としての信頼性及び因子について証明することができた。 2.作成された本検査と精神力の自己評価,実力発揮度,競技成績の関係について項目別及び合計得点の比較を行った結果,すべて有意な関係が認められ本検査の有効性を証明することができた。 3.本検査法と心理的競技能力(DIPCA.2)を比較すると国体選手では有意な関係がみられた。しかし,大学サッカー選手では有意な関係は認められず,本検査と試合前の心理状態(DIPS-B.1)の関係では有意な関係が認められ,心理的競技能力は試合前の心理状態と有意な関係が認められた。 4.関連する3つの診断検査と実力発揮度及び競技成績との関係を考察することができた。 5.以上の結果より,「試合中の心理状態診断検査(Diagnostic Inventory of Psychological State During Competition,略してDIPS-D.2)」を作成した。