著者
Yasufuku Ryo Ueno Yamato Miyazaki Syuji
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
no.3, pp.101, 2018-03

古典系の相空間の幾何学的構造(周期性を表す「島」やカオスの「海」)が対応する量子系のエネルギー準位の統計性に反映されることが知られている. エネルギー準位が反発したり, 引き合ったりした結果, エネルギー準位の間隔の分布関数にその特徴が現れる. このような間隔の分布については, 人間の行動にも表れる. 鴨川に腰掛けるカップルの間隔が等間隔になるという「法則」が知られているが, 鴨川のカップル間隔に関する統計性を求める. 座っているカップルのみならず, 歩く人, 走る人, 自転車の間隔についても議論したい.
著者
Kamada Akira Duan Zhengnan Masui Ryuji Kutomi Nozomu Sogabe Maina Ohzeki Masayuki
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.2, pp.75-77, 2017-03

今まで日本で発生した地震データから,地震が発生する特徴を表すパターンを抽出し,地震予測に用いることができないかを考えた.そのため,2004 年2 月から2016 年の5 月に日本で発生した地震のデータを「YAHOO! 天気・災害」から取得し,行列として表現し,非負値行列制約因子分解を用いて解析を行った.その結果,地震発生の典型的なパターンと,突発性に伴う困難を示唆する結果を得た.この研究結果は,未来の技術として繋がることを考えている. Using data collected from past earthquakes in Japan, we extracted patterns representing earthquake occurrence characteristics and explored the possibility of using these for earthquake prediction. We obtained data from "Yahoo! Weather and Disaster" concerning earthquakes that occurred from 2004 February to 2016 May, and expressed them in the form of a matrix. We analyzed the resulting matrix using non-negative matrix factorization. Our results suggest some typical patterns of earthquake occurrence as well as difficulties accompanying sudden outbreaks. We expect that this method will lead to the development of future technologies.
著者
上田 佳祐 薗頭 元春 飯山 将晃
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.3, pp.88-90, 2018-03

紙媒体や画像上の文字を計算機により自動認識する文字認識の技術は, ビジネス文書などの自動処理だけでなく人文科学の研究などにおいてもデータ処理にかかる人的資源を削減できるという点で有用である. 本研究では古典文献などのくずし文字の認識を目的とし, 現代文字の認識で高い精度が得られている畳み込みニューラルネット(CNN)による識別と, くずし文字特有のアスペクト比を用いた識別を組み合わせた認識手法を提案する. 実験の結果, 提案手法により, 単にCNNを用いた場合より高い精度の認識性能が得られた.
著者
野沢 福太郎
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
no.3, pp.41-44, 2018-03

2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)は, 東日本大震災を引き起こし, 西南日本では今後数十年内に南海トラフ巨大地震が発生し, 西日本大震災が引き起こされると危惧されている. こういった巨大地震の発生予測は, 現状では困難とされているが, 日置(1)により, 東北地方太平洋沖地震発生40分前に電離層全電子数(TEC)異常が生じたと報告されている. TEC異常は様々な要因で発生するため, 地震発生前のTEC異常については地震発生との関連について, 依然議論が続いている. そこで, 本研究では, 日置(1)が指摘したGNSS観測点と衛星の一つのペアについて, 地震前後の20日間, および2011年を通して各月の11日のTEC変動を調べた. 結果として, 地震発生前を除いて, 同様なTEC異常は観測されなかった. しかしながら, 観測点・衛星ペア数や観測期間が限られているため, 巨大地震発生とTEC異常の関連について, 確定的なことは言えず, 今後更に検討すべき課題と考えられる.
著者
廣瀬 奈々美 野嵜 友成 松浦 健二
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.1, pp.94-95, 2016-03

農学 昆虫世界の謎解き《目的》バッタやカなどの昆虫では、卵生産時の雌個体の脂肪体で核DNAの倍加が生じることが知られており、これは脂肪体で卵生産に必要な卵黄タンパクを大量生産する上で適応的だと考えられている。社会性昆虫の女王は卵の生産に特化したカーストであり、多くの卵を産む女王ほど脂肪体の核相倍化が進んでいるのだろうか。本研究では、ヤマトシロアリの女王の発達段階における脂肪体の核相倍加について調べた。《方法》有翅虫(羽アリ)、一次女王(創設3か月のものと野外で採集したもの)、二次女王、の頭部と脂肪体の核相の倍加レベルを、フローサイトメーターを用いて測定した。《結果》有翅虫と、若い(3か月飼育したもの)一次女王の脂肪体に倍加の程度に差はないが、卵巣が大きく発達した一次女王(野外で採集したもの)と二次女王の脂肪体では核相の倍加レベルが高かった。
著者
森本 玲菜
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.2, pp.106-108, 2017-03

京都大学フィールド科学教育研究センター北白川試験地で採取したコケを光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察し,そのコケを構成する細胞の微細構造を明らかにし,その機能について考察した.採取したコケは,葉,茎,仮根からなり,葉は緑色で中央部に中肋が存在した.葉の横断面を観察すると,中肋の両側に葉身細胞が1列に並んでいて,先端部は舷と呼ばれる厚い細胞壁を持った細胞が存在した.中肋部分にはラメラと呼ばれる細胞一層から成る板状の組織が数層見られた.これらの形態的特徴から,採取した試料はタチゴケ(Atrichum undulatum (Hedw.)P. Beauv.)と判断した.透過電子顕微鏡で観察した葉身細胞は,葉緑体を含み,核やミトコンドリアなどの細胞小器官が存在した.細胞壁は厚く,葉身細胞間は多数の原形質連絡が存在した.これは,光合成産物の輸送に関連しているものと推察された. A moss species was collected at Kitashirakawa experimental station, Field Science Education and Research Center, Kyoto University, and observed under a light microscope, a scanning electron microscope and a transmission electron microscope for observing the ultrastructure of cells. The moss was composed of leaves, stem and rhizoid. Green colored leaves had the mid-rib at its center. Mesophyll cells lined up on both sides of the mid-rib to form the leaf blade. The border of a leaf is composed of the cells with thick cell wall. Several lamellae of mesophyll cells forming a single row were located at mid-rib. These morphological characters suggest that this moss is Atrichum undulatum (Hedw.) P. Beauv. Transmission electron microscopic observation reveals that mesophyll cell has a thick cell wall, and contains nuclei, mitochondria and several chloroplasts. The cells were connected each other with many plasmodesmata which might be involved in transportation of photosynthetic products.
著者
Konaka Yuina Furuta Haruka Nagashima Takuya Kaneko Shuji
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.3, pp.16-19, 2018-03

Every pharmaceutical agent has both directions of effects; that is, therapeutic main effects and undesirable adverse effects. Surveillance of adverse drug reactions has been performed in the post-marketing period by collecting self-reports of clinical cases in which some of adverse events are observed. FDA Adverse Event Reporting System (FAERS) is one of the publicly available databases of adverse event cases. To find a practical solution for reducing adverse events, we have shown that FAERS can be used for finding a drug combination in which the odds ratio of adverse events is statistically lowered with a concomitant drug. In the present study, we focused on the atypical antipsychotic olanzapine, which frequently causes hyperglycemia in patients. Our analysis of FAERS lead to a hypothesis that olanzapine-induced hyperglycemia is mitigated by concomitant use of vitamin D. Subsequent in vitro experiment using cultured myocytes demonstrated that olanzapine induces insulin resistance that can be prevented by vitamin D pretreatment.薬には本来の効能である主作用と望ましくない有害作用(副作用)がある. この副作用は市販後にモニターされており, 有害事象のセルフレポートとして蓄積されている. 米国食品医薬品局FDAが公開している副作用報告データFAERSでは世界中で起こった有害事象例が検証できる. 我々はこれまで有害事象を減らす実際的な方策として, FAERSを用いて特定の副作用を軽減する併用薬を探索することが可能であることを示してきた. そこで本研究では, 非定型統合失調治療薬であるオランザピンの副作用として知られる高血糖に着目した. 我々が行ったFAERSの解析から, オランザピンが誘発する高血糖はビタミンDの併用によって改善するという仮説が導出された. さらに培養骨格筋細胞を用いた実験により, オランザピンが誘発するインスリン抵抗性がビタミンD前処置で改善されることが実証された.
著者
黒田 逸月 高橋 有己
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.1, pp.54-57, 2016-03

薬学Cell membrane permeability is one of the obstacles that must be overcome during drug development. In the present study, antimicrobial peptides that increase cell membrane permeability were used to overcome this obstacle. In particular, melittin, indolicidin, magainin, and dermcidin were selected. Evaluation of membrane permeability enhancement by calcein-encapsulated liposomes suggested that melittin and indolicidin increase membrane permeability. Therefore, we designed the novel peptides melittinR8, or mellitin fused with R8, and indolicidinRGD, or indolicidin fused with RGD. Evaluation of membrane permeability enhancement by using calcein-encapsulated liposomes and 8 different cell types showed that mellitinR8 exhibits the greatest permeability enhancement among the antimicrobial peptides tested. By using FITC-DNA and FITC-Dextran as model drugs, the enhancement of drug delivery into cells by melittinR8 was evaluated. As a result, high membrane permeability enhancement was observed in the case of delivering FITC-DNA into cancer cells. These results indicate that melittinR8 can be a tool to facilitate the delivery of DNA into cancer cells.細胞膜透過性は医薬品開発における問題点の一つである。今回は、細胞膜透過性亢進作用を有する抗菌ペプチドに着目した。抗菌ペプチドとしてメリチン、インドリシジン、マガイニン、ダームシジンを選択した。カルセイン封入リポソームにより膜透過性亢進作用を評価したところ、メリチンとインドリシジンが高い膜透過性亢進作用を示した。そこで、メリチンR8、インドリシジンRGDを新たに設計し、リポソームおよび8種類の細胞を用いて評価したところメリチンR8が高い膜透過性亢進作用を示した。モデル薬物としてFITC-DNAとFITC-Dextranを用いてメリチンR8による細胞内への送達を評価したところ、ガン細胞とFITC-DNAの組合せにおいて高い膜透過性亢進作用が得られた。以上、メリチンR8はDNAをガン細胞内へ送達するデリバリーツールとなりえると考える。