著者
松浦 健二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.227-241, 2005-08-31
被引用文献数
1

進化生物学においてHamilton(1964)の血縁選択説の登場は、Darwinの自然選択説以降の最も重要な発展の一つである。本論文では、この40年間の真社会性膜翅目とシロアリの研究を対比しながら、昆虫における真社会性の進化と維持に関する我々の理解の進展について議論する。まず、真社会性膜翅目の性比に関する研究により血縁選択説の検証が行われていった過程について概説する。一方、シロアリにおける真社会性の進化に関して、血縁選択の観点からのアプローチを紹介し、その妥当性も含めて議論する。なぜ「性」が進化し、維持されているのか。この間題は古くから、そして現在も最も重要な進化生物学の課題の一つである。実は真社会性の進化と維持の問題は「性」の進化と維持の問題と密接な関係にある。社会性昆虫の社会は血縁者に対する利他行動で成立しており、血縁度の側面から社会進化を考えるならば、コロニー内血縁度の低下を招く有性生殖よりも、いっそ単為生殖の方が有利なはずである。つまり、真社会性の生物では、ほかの生物にも増して単為生殖によって得られる利益が大きく、それを凌ぐだけの有性生殖の利益、あるいは単為生殖のコストが説明されなければならない。現在までに報告されている産雌単為生殖を行う真社会性昆虫に関する研究をレビューし、真社会性昆虫にとっての有性生殖と単為生殖の利益とコストについて議論する。
著者
松浦 健二
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

WEB上のコミュニティ空間に、実世界での動作を伴う身体スキルの情報を蓄積し、それを活用する支援環境を設計および構築した。本研究を通じて、個人の身体スキルがコミュニティ空間を媒体として他者に伝播し、コミュニティに属する個人のスキル学習につながる様子が観測された。この中で、身体スキルを表現するには、各種のセンサを用いたメディア処理を適正に実装する必要があり、技術開発も実施した。
著者
矢野 謙典 松浦 健二 緒方 広明 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.682, pp.179-186, 2001-03-03
被引用文献数
2

近年, 高度遠隔講義支援に関する研究やサイバースペース上での仮想教室の実現が注目を集めている. 我々は, "いつでも", "どこでも", "だれでも"参加できる講義・教室型の非同期仮想教室(AVC: Asynchronous Virtual Classroom)の提案を行ってきた. AVCは, ビデオ映像を中心としたマルチメディア教材と非同期コミュニケーション支援環境を併せ持つ. その特徴として, 非同期的に参加する他学習者・講師等をモデル化し, 凝人化エージェントとして学習空間に配置・行動させることで擬似的な同期学習環境の実現を試みる. 本稿では特に, XMLを用いた凝人化エージェントの行動管理手法及び, その3次元仮想教室環境下での表現手法について述べる.
著者
松浦 健二 瀬藤 光利 岩淵 喜久男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

なぜ生物は老いるのか?この問いに答えることは、至近要因的にも進化的・究極要因的にも生物学の最重要課題である。近年の分子生物学的手法の発展により、老化や生理寿命の分子基盤に対する理解は急速に進んできている。しかし、主要な研究は線虫・ショウジョウバエ・マウスといった短命なモデル生物を用いて行われてきた。本研究では、70年以上の寿命をもつと推定されるヤマトシロアリの王に着目し、従来の短命なモデル生物の研究では到達しえない寿命研究の全く新しい領域を開拓するものである。最新の研究により、孵化した幼虫がワーカーとして発育するか、羽アリとして発育するかのカースト決定に、フェロモンだけでなく、ゲノムインプリンティング(精子・卵特異的なエピジェネティック修飾)が影響することが明らかになった。カースト分化に対するインプリンティングの効果を検証するため、まず若い王に対してDNAメチル基転移酵素(DNMT1、 DNMT3)をターゲットとしたRNAiを行い、精子のエピジェネティック修飾を操作し、コロニーを創設させた。現在、子のカースト分化への影響を評価している。王の代謝活性は全体として年齢とともに変化するのか、また、どの代謝経路が駆動しているのかを判別するために水同位体比アナライザー(PICARRO社 L2140-i)を用いた二重標識水法により、代謝フラックス解析を行っている。現在、標識水投与による生存への影響評価を完了し、本試験の実施中である。ヤマトシロアリのワーカーは王と女王に対して特殊な餌(以後、ロイヤルフードと呼ぶ)を給餌している。このロイヤルフードの成分を特定し、その機能を明らかにするため、ワーカーから王と女王への口移し給餌物の直接採取、および解剖によって中腸内容物を回収した。現在、MALDI-IT-TOF 型顕微質量分析装置を用いて成分を分析中である。
著者
廣瀬 奈々美 野嵜 友成 松浦 健二
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.1, pp.94-95, 2016-03

農学 昆虫世界の謎解き《目的》バッタやカなどの昆虫では、卵生産時の雌個体の脂肪体で核DNAの倍加が生じることが知られており、これは脂肪体で卵生産に必要な卵黄タンパクを大量生産する上で適応的だと考えられている。社会性昆虫の女王は卵の生産に特化したカーストであり、多くの卵を産む女王ほど脂肪体の核相倍化が進んでいるのだろうか。本研究では、ヤマトシロアリの女王の発達段階における脂肪体の核相倍加について調べた。《方法》有翅虫(羽アリ)、一次女王(創設3か月のものと野外で採集したもの)、二次女王、の頭部と脂肪体の核相の倍加レベルを、フローサイトメーターを用いて測定した。《結果》有翅虫と、若い(3か月飼育したもの)一次女王の脂肪体に倍加の程度に差はないが、卵巣が大きく発達した一次女王(野外で採集したもの)と二次女王の脂肪体では核相の倍加レベルが高かった。
著者
丸山 伸 大平 健司 佐野 雅彦 谷岡 広樹 松浦 健二 上田 哲史
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-39, no.14, pp.1-6, 2017-09-22

端末教室における環境統一にはネットブート技術が適している.このネットブート技術を利用すると端末の一斉起動や一斉操作でサーバーやネットワークに負荷集中が生じるが,端末側にディスクイメージの複製を持つことで負荷集中を回避できる.しかしながら,各端末にディスクイメージの複製を持つように設計すると,ディスクイメージを更新した際に各端末が持つ複製が同期されるまでは負荷集中が生じがちとなり端末の高速性が失われることが課題となっていた.そこで本研究では,端末の高速化に必要最小限の領域のみを複製することでディスクイメージ更新後における端末側への同期処理を最小化し,ネットブートによる環境統一と端末の高速性を常に両立する手法を提案する.また,徳島大学の端末教室において提案手法の評価をおこない,本提案が有効であることを確認した.
著者
仁木 啓司 松浦 健二 後藤田 中 金西 計英 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.583, pp.139-144, 2007-03-02
被引用文献数
2

近年,パワーポイントによるスライド教材を利用した講義が多くなってきている.しかし,スライド教材での授業を行う場合,授業中は教員から学習者への一方向的な授業になるケースも多い.また,パワーポインドを単にWebコンテンツとして学習者に対して,一方的に配布するだけでは,スライド教材の特徴を十分に生かし切れていないと思われる.そこで,本研究では授業中に用いたスライド教材を,学習者自身が自由にカスタマイズし,それを通じて学習内容だけでなく表現手法の向上も行える学習環境を提案する.
著者
辻 瑞樹 松浦 健二 立田 晴記 菊地 友則
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

東アジアから北米に侵入したオオハリアリに注目し生物学的侵略機構に関する既存仮説全てのテストを試みた。日本、北米とも多女王多巣性コロニーというほぼ同じ集団遺伝学的構造を持ち、北米の方が高い個体群密度を示した。安定同位体分析では自然分布域(日本)におけるシロアリ食から侵入域(米国)でのジェネラリスト捕食者化という栄養段階・食性ニッチの変化が示唆された。病原微生物が原因と考えられる蛹の死亡率が日本でより高かった。これらの結果はアルゼンチンアリなどで議論されている遺伝的ボトルネック説などよりも、外来種一般で議論されている生態的解放が侵略機構としてより重要であることを示す。
著者
松浦 健二
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では日米のヤマトシロアリ属8種およびイエシロアリから見つかったAthelia属の菌核菌に加え、西表島において高等シロアリのタカサゴシロアリの巣内から全く別系統のTrechispora属の菌核菌を発見し、菌核菌によるシロアリの卵擬態は少なくとも独立に2回進化したことを明らかにした。また、シロアリの卵保護行動に関わるフェロモンの分析から、卵の揮発物質が女王フェロモンと共通の物質であり、卵保護において重要な機能を果たすとともに、二次女王分化抑制の役割を果たしていることが明らかになった。
著者
金西計英 松浦 健二 大家 隆弘 三好 康夫 佐野 雅彦 大恵俊一郎 矢野 米雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.101, pp.1-6, 2005-10-14
参考文献数
7
被引用文献数
2

現在,高等教育機関において,学内の様々な情報を有効利用するため,分散されたデータベースを共有し,利用者の属性に適応的に振る舞う,WEBベースのシステムが導入されている.現状のさまざまな大学ポータルシステムを俯瞰しながら,大学ポータルシステムの定義をおこない,徳島大学で我々が導入した大学ポータルの概要とその運用について報告する.Presently, in order to promote on-campus computerization, the introduction of the university information portal has been advanced in higher education institutes. There are many university information portals. In this paper we propose a model for the university information portal. In this paper, the information portal of Tokushima University is taken as a case example and the problems of its development and operation are examined. The practice use is shown following the explanation of the method for sharing the contents. It is shown that our portal is within the range of practical use though the accomplishment of the usage is still small in number.
著者
嵯峨山 和美 久米 健司 金西 計英 松浦 健二 三好 康夫 松本 純子 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.53-56, 2008
参考文献数
8
被引用文献数
4

近年,SNSは大学生間の新しいコミュニケーションの形として紹介されている.我々は,大学生活を支える新たな学生支援のツールとして2007年1月23日から徳島大学工学部を中心に「キャンパスSNS」の運用を開始した.本研究では,本SNSのログデータを抽出し,参加者の属性を明確に分類したうえで,大学版SNSの特性と学生の動向とを解析した.日記関連の機能に焦点を当てたところ,学生は不特定多数のユーザの最新日記を確認するより特定のユーザの日記を読む割合が高く,仲間同士の閉じたコミュニケーションで終始しまいがちであることが示唆された.明確な目標を掲げて運営側が構造化した形を提示することの必要性が推測された.
著者
後藤田 中 松浦 健二 大塚 真二 鍋島 豊晶 金西 計英 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.1144-1153, 2010-07-01

近年,予防的な健康への取組みが重視され,人の日常的な運動の役割は増している.本研究では,そうした運動の代表といえるジョギングに注目する.個人での日常的な実世界トレーニングに対して,オンラインのコミュニティ空間での集団訓練環境を提案する.本システムは,GPSを用いて個々のトレーニング活動ログを蓄積し,同じコースを非同期に共有するジョガー間での競争的なシミュレーション機能を提供する.具体的には,複数のジョガーをアバタとして表現し,それらのペース変化を地図上の移動アニメーションを用いて視覚化する.また,移動アニメーションを見た際の気づきを地図上にアノテーションとして蓄積できる機能を提供する.これにより,ジョガーのパフォーマンス向上を促進させる目的をもつ.これらの提案機能をもつジョギング支援システムを構築し,実験を行った.実験の結果から,オンラインコミュニティ空間での競争的な訓練環境が,実世界におけるトレーニングにおけるタイム短縮につながった.特にアノテーションの登録箇所を中心に局所的なペース改善の効果も確認された.
著者
金西 計英 松浦 健二 光原 弘幸 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.146, pp.33-38, 2008-07-12
被引用文献数
1

日本の大学ではレポート形式の課題が出されることが多い.これまで我々は,「共同レポート作成課題」に注目し,支援するシステムを開発してきた.しかし,開発したシステムを実際の授業で用いたところ,グループによっては全く議論が行われない,一人でレポートを作ってしまうなどの問題点が浮き彫りになった.レポート作成能力を向上するため,学習者の相互評価が有効なことが,これまでの研究で指摘されている.そこで,本研究では,WEBベースのレポート作成システムに,学習者がレポートを相互評価する機能を実装した.そして,このシステムを試用し,相互評価が,レポート作成の学習に有効な手法であることを検証した.