著者
松浦 健二
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.227-241, 2005
参考文献数
83
被引用文献数
1

進化生物学においてHamilton(1964)の血縁選択説の登場は、Darwinの自然選択説以降の最も重要な発展の一つである。本論文では、この40年間の真社会性膜翅目とシロアリの研究を対比しながら、昆虫における真社会性の進化と維持に関する我々の理解の進展について議論する。まず、真社会性膜翅目の性比に関する研究により血縁選択説の検証が行われていった過程について概説する。一方、シロアリにおける真社会性の進化に関して、血縁選択の観点からのアプローチを紹介し、その妥当性も含めて議論する。なぜ「性」が進化し、維持されているのか。この間題は古くから、そして現在も最も重要な進化生物学の課題の一つである。実は真社会性の進化と維持の問題は「性」の進化と維持の問題と密接な関係にある。社会性昆虫の社会は血縁者に対する利他行動で成立しており、血縁度の側面から社会進化を考えるならば、コロニー内血縁度の低下を招く有性生殖よりも、いっそ単為生殖の方が有利なはずである。つまり、真社会性の生物では、ほかの生物にも増して単為生殖によって得られる利益が大きく、それを凌ぐだけの有性生殖の利益、あるいは単為生殖のコストが説明されなければならない。現在までに報告されている産雌単為生殖を行う真社会性昆虫に関する研究をレビューし、真社会性昆虫にとっての有性生殖と単為生殖の利益とコストについて議論する。
著者
松浦 健二
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.227-241, 2005-08-31 (Released:2017-05-27)
参考文献数
83

進化生物学においてHamilton(1964)の血縁選択説の登場は、Darwinの自然選択説以降の最も重要な発展の一つである。本論文では、この40年間の真社会性膜翅目とシロアリの研究を対比しながら、昆虫における真社会性の進化と維持に関する我々の理解の進展について議論する。まず、真社会性膜翅目の性比に関する研究により血縁選択説の検証が行われていった過程について概説する。一方、シロアリにおける真社会性の進化に関して、血縁選択の観点からのアプローチを紹介し、その妥当性も含めて議論する。なぜ「性」が進化し、維持されているのか。この間題は古くから、そして現在も最も重要な進化生物学の課題の一つである。実は真社会性の進化と維持の問題は「性」の進化と維持の問題と密接な関係にある。社会性昆虫の社会は血縁者に対する利他行動で成立しており、血縁度の側面から社会進化を考えるならば、コロニー内血縁度の低下を招く有性生殖よりも、いっそ単為生殖の方が有利なはずである。つまり、真社会性の生物では、ほかの生物にも増して単為生殖によって得られる利益が大きく、それを凌ぐだけの有性生殖の利益、あるいは単為生殖のコストが説明されなければならない。現在までに報告されている産雌単為生殖を行う真社会性昆虫に関する研究をレビューし、真社会性昆虫にとっての有性生殖と単為生殖の利益とコストについて議論する。
著者
松浦 健二
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

WEB上のコミュニティ空間に、実世界での動作を伴う身体スキルの情報を蓄積し、それを活用する支援環境を設計および構築した。本研究を通じて、個人の身体スキルがコミュニティ空間を媒体として他者に伝播し、コミュニティに属する個人のスキル学習につながる様子が観測された。この中で、身体スキルを表現するには、各種のセンサを用いたメディア処理を適正に実装する必要があり、技術開発も実施した。
著者
辻 瑞樹 松浦 健二 立田 晴記 菊地 友則
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

東アジアから北米に侵入したオオハリアリに注目し生物学的侵略機構に関する既存仮説全てのテストを試みた。日本、北米とも多女王多巣性コロニーというほぼ同じ集団遺伝学的構造を持ち、北米の方が高い個体群密度を示した。安定同位体分析では自然分布域(日本)におけるシロアリ食から侵入域(米国)でのジェネラリスト捕食者化という栄養段階・食性ニッチの変化が示唆された。病原微生物が原因と考えられる蛹の死亡率が日本でより高かった。これらの結果はアルゼンチンアリなどで議論されている遺伝的ボトルネック説などよりも、外来種一般で議論されている生態的解放が侵略機構としてより重要であることを示す。
著者
矢野 謙典 松浦 健二 緒方 広明 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.682, pp.179-186, 2001-03-03
被引用文献数
2

近年, 高度遠隔講義支援に関する研究やサイバースペース上での仮想教室の実現が注目を集めている. 我々は, "いつでも", "どこでも", "だれでも"参加できる講義・教室型の非同期仮想教室(AVC: Asynchronous Virtual Classroom)の提案を行ってきた. AVCは, ビデオ映像を中心としたマルチメディア教材と非同期コミュニケーション支援環境を併せ持つ. その特徴として, 非同期的に参加する他学習者・講師等をモデル化し, 凝人化エージェントとして学習空間に配置・行動させることで擬似的な同期学習環境の実現を試みる. 本稿では特に, XMLを用いた凝人化エージェントの行動管理手法及び, その3次元仮想教室環境下での表現手法について述べる.
著者
辻 瑞樹 松浦 健二 秋野 順治 立田 晴記 土畑 重人 下地 博之 菊地 友則 ヤン チンチェン 五箇 公一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

生物学的侵略機構の研究には自然分布域と侵入域の比較が不可欠である。日本ではあまり知られていないが、近年北米で日本由来の複数の外来アリ種による環境被害が広がっている。しかし皮肉にもこれは日本の研究者にとって居ながらにして侵略アリの自然個体群情報を収集できる絶好の機会である。そこで、本研究では侵略的外来昆虫研究の日米のエキスパートが協力し、これら日本からの侵入者の生態・行動・遺伝情報を侵入先と自然分布域である日本国内で徹底比較する。さらに広大な国土を持つ米国で日本では不可能な野外実験を行う。既存の諸学説を整理しながら網羅的にテストすることで外来アリの侵略機構に関する一般論を導く。以上の目的で研究を始めたが、初年度冒頭に代表者の不測の病気が発覚し研究が遅延した。そこで、2年度目以降は遅れを取り戻すべく主として以下の研究を鋭意進めている。まず、米国側のカウンターパートと協力し、オオハリアリ、アメイロアリ、トビイロシワアリの各国個体群の基礎データを収集した。とくにトビイロロシワアリの炭化水素データを重点的に収集した。また多数外来アリが分布する沖縄では外来アリと在来アリの比較研究を室内および野外で進め、外来種を含むアリには採餌機能に関する複雑なトレードオフが存在することを立証した。また、日米比較の最大の成果として、オオハリアリが侵入前の原産地である日本国内においても侵略先の米国個体群と同様に、高度な巣内近親交配を行なっていることを明らかにし国際誌に発表した。これは近親交配耐性が侵略の前適応であることを示した世界初の成果である。また、テキサスのフィールドに研究代表者が研究室の学生らとともに訪問し実験のプロットを設置しており、2017年夏に2度襲来したハリケーンのため野外プロットが水没した遅れを取り戻すべく鋭意研究を進めている。H30年度にはプロットを再設置した。
著者
松浦 健二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.288, 2004 (Released:2004-07-30)

擬態は幅広い分類群に見られる戦術であり、「だます側」と「見破る側」の軍拡競争の好例として、進化生態学の分野では盛んに研究されてきた。高等動植物による巧みな擬態の例は無数に知られているが、菌類による擬態をご存知だろうか。ここで、世界初の「シロアリの卵に擬態するカビ」について発表する。シロアリのワーカーは、女王の産んだ卵を運んで山積みにし、世話をする習性がある。このようにしてできる卵塊の中に、シロアリの卵とは異なる褐色の球体(ターマイトボール)が見られる。この球体のリボソームRNA遺伝子を分析した結果、Athelia属の新種の糸状菌がつくる菌核であることが判明した。菌核とは菌糸が柔組織状に固く結合したもので、このかたちで休眠状態を保つことができる。卵塊中に菌核が存在する現象は、ヤマトシロアリ属のシロアリにきわめて普遍的にみられる。日本のReticulitermes speratusと同様に、米国東部に広く分布するR. flavipesおよび米国東南部に生息するR. virginicusも、卵塊中にAthelia属菌の菌核を保有することが判明した。シロアリは卵の形状とサイズ、および卵認識物質によって卵を認識する。この菌核菌はシロアリの卵の短径と同じサイズの菌核をつくり、さらに化学擬態することによって、シロアリに運搬、保護させている。シロアリは抗菌活性のある糞や唾液を巣の内壁に塗って、様々な微生物の侵入から巣を守っている。卵に擬態することによって巣内に入り込んだ菌核菌は、一部が巣内で繁殖し、新たに形成された菌核はさらに卵塊中に運ばれる。卵塊中の卵よりも菌核の数の方が多いこともしばしばある。シロアリのコロニーが他の場所に移動する際や、分裂増殖する際には、菌核菌もそれに乗じて移動分散することができる。日本および米国におけるシロアリと卵擬態菌核菌の相互作用について議論する。
著者
松浦 健二
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.73-79, 2005-02

ヤマトシロアリの配偶システムと単為生殖に関する最新の研究結果をレビューした。まず、シロアリの生活史について述べ、特に群飛から異性探索、そしてコロニー創設に至るまでの行動特性に関する新たな知見について述べた。ヤマトシロアリの雌の有翅虫は、群飛後に雄と配偶できなかった場合、単独、または二雌の共同でコロニーを創設し、単為生殖により繁殖することが明らかになった。単為生殖で産まれた子は、わずかな卵期間の延長を除けば、有性生殖の子と同様に正常発育する。染色体観察およびマイクロサテライト遺伝子解析により、ヤマトシロアリの単為生殖では末端融合型のオートミクシスにより二倍体に核相回復することが示された。さらに、単為生殖の進化に必要な条件、単為生殖の伴う遺伝的・発生的制約に加え、生態学的制約について考察した。
著者
後藤田 中 松浦 健二 鍋島 豊晶 金西 計英 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.269-277, 2010
参考文献数
22
被引用文献数
1

近年の健康志向を反映し,日常的な運動の役割が増している.本研究では,その支援の一端として,ナワトビプロジェクトと称し,ナワトビ学習を対象としたSNS(Social Networking Service)を設計,構築した.具体的には,SNSに映像日記機能を組み込んだ上で,(1)映像から得られる特性に応じた記事推薦エージェントのメッセージ,(2)映像記事間のトラックバックによるスキルの関係グラフの2つの機能を実装した.本研究は,これらのスキル開発支援に対し,個別の映像記事閲覧の機会増加,異なるスキルの関連性を全体像として俯瞰する意識の向上につながることを示す.提案に対して実験を行った結果,アクティブユーザにおける閲覧割合の向上,また異なるスキルの関連性に対する意識に一定の効果が確認された.
著者
松浦 健二 瀬藤 光利 岩淵 喜久男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

なぜ生物は老いるのか?この問いに答えることは、至近要因的にも進化的・究極要因的にも生物学の最重要課題である。近年の分子生物学的手法の発展により、老化や生理寿命の分子基盤に対する理解は急速に進んできている。しかし、主要な研究は線虫・ショウジョウバエ・マウスといった短命なモデル生物を用いて行われてきた。本研究では、70年以上の寿命をもつと推定されるヤマトシロアリの王に着目し、従来の短命なモデル生物の研究では到達しえない寿命研究の全く新しい領域を開拓するものである。最新の研究により、孵化した幼虫がワーカーとして発育するか、羽アリとして発育するかのカースト決定に、フェロモンだけでなく、ゲノムインプリンティング(精子・卵特異的なエピジェネティック修飾)が影響することが明らかになった。カースト分化に対するインプリンティングの効果を検証するため、まず若い王に対してDNAメチル基転移酵素(DNMT1、 DNMT3)をターゲットとしたRNAiを行い、精子のエピジェネティック修飾を操作し、コロニーを創設させた。現在、子のカースト分化への影響を評価している。王の代謝活性は全体として年齢とともに変化するのか、また、どの代謝経路が駆動しているのかを判別するために水同位体比アナライザー(PICARRO社 L2140-i)を用いた二重標識水法により、代謝フラックス解析を行っている。現在、標識水投与による生存への影響評価を完了し、本試験の実施中である。ヤマトシロアリのワーカーは王と女王に対して特殊な餌(以後、ロイヤルフードと呼ぶ)を給餌している。このロイヤルフードの成分を特定し、その機能を明らかにするため、ワーカーから王と女王への口移し給餌物の直接採取、および解剖によって中腸内容物を回収した。現在、MALDI-IT-TOF 型顕微質量分析装置を用いて成分を分析中である。
著者
廣瀬 奈々美 野嵜 友成 松浦 健二
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.1, pp.94-95, 2016-03

農学 昆虫世界の謎解き《目的》バッタやカなどの昆虫では、卵生産時の雌個体の脂肪体で核DNAの倍加が生じることが知られており、これは脂肪体で卵生産に必要な卵黄タンパクを大量生産する上で適応的だと考えられている。社会性昆虫の女王は卵の生産に特化したカーストであり、多くの卵を産む女王ほど脂肪体の核相倍化が進んでいるのだろうか。本研究では、ヤマトシロアリの女王の発達段階における脂肪体の核相倍加について調べた。《方法》有翅虫(羽アリ)、一次女王(創設3か月のものと野外で採集したもの)、二次女王、の頭部と脂肪体の核相の倍加レベルを、フローサイトメーターを用いて測定した。《結果》有翅虫と、若い(3か月飼育したもの)一次女王の脂肪体に倍加の程度に差はないが、卵巣が大きく発達した一次女王(野外で採集したもの)と二次女王の脂肪体では核相の倍加レベルが高かった。
著者
丸山 伸 大平 健司 佐野 雅彦 谷岡 広樹 松浦 健二 上田 哲史
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-39, no.14, pp.1-6, 2017-09-22

端末教室における環境統一にはネットブート技術が適している.このネットブート技術を利用すると端末の一斉起動や一斉操作でサーバーやネットワークに負荷集中が生じるが,端末側にディスクイメージの複製を持つことで負荷集中を回避できる.しかしながら,各端末にディスクイメージの複製を持つように設計すると,ディスクイメージを更新した際に各端末が持つ複製が同期されるまでは負荷集中が生じがちとなり端末の高速性が失われることが課題となっていた.そこで本研究では,端末の高速化に必要最小限の領域のみを複製することでディスクイメージ更新後における端末側への同期処理を最小化し,ネットブートによる環境統一と端末の高速性を常に両立する手法を提案する.また,徳島大学の端末教室において提案手法の評価をおこない,本提案が有効であることを確認した.
著者
仁木 啓司 松浦 健二 後藤田 中 金西 計英 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.583, pp.139-144, 2007-03-02
被引用文献数
2

近年,パワーポイントによるスライド教材を利用した講義が多くなってきている.しかし,スライド教材での授業を行う場合,授業中は教員から学習者への一方向的な授業になるケースも多い.また,パワーポインドを単にWebコンテンツとして学習者に対して,一方的に配布するだけでは,スライド教材の特徴を十分に生かし切れていないと思われる.そこで,本研究では授業中に用いたスライド教材を,学習者自身が自由にカスタマイズし,それを通じて学習内容だけでなく表現手法の向上も行える学習環境を提案する.
著者
松浦 健二
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では日米のヤマトシロアリ属8種およびイエシロアリから見つかったAthelia属の菌核菌に加え、西表島において高等シロアリのタカサゴシロアリの巣内から全く別系統のTrechispora属の菌核菌を発見し、菌核菌によるシロアリの卵擬態は少なくとも独立に2回進化したことを明らかにした。また、シロアリの卵保護行動に関わるフェロモンの分析から、卵の揮発物質が女王フェロモンと共通の物質であり、卵保護において重要な機能を果たすとともに、二次女王分化抑制の役割を果たしていることが明らかになった。
著者
金西計英 松浦 健二 大家 隆弘 三好 康夫 佐野 雅彦 大恵俊一郎 矢野 米雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.101, pp.1-6, 2005-10-14
参考文献数
7
被引用文献数
2

現在,高等教育機関において,学内の様々な情報を有効利用するため,分散されたデータベースを共有し,利用者の属性に適応的に振る舞う,WEBベースのシステムが導入されている.現状のさまざまな大学ポータルシステムを俯瞰しながら,大学ポータルシステムの定義をおこない,徳島大学で我々が導入した大学ポータルの概要とその運用について報告する.Presently, in order to promote on-campus computerization, the introduction of the university information portal has been advanced in higher education institutes. There are many university information portals. In this paper we propose a model for the university information portal. In this paper, the information portal of Tokushima University is taken as a case example and the problems of its development and operation are examined. The practice use is shown following the explanation of the method for sharing the contents. It is shown that our portal is within the range of practical use though the accomplishment of the usage is still small in number.
著者
嵯峨山 和美 久米 健司 金西 計英 松浦 健二 三好 康夫 松本 純子 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.53-56, 2008
参考文献数
8
被引用文献数
4

近年,SNSは大学生間の新しいコミュニケーションの形として紹介されている.我々は,大学生活を支える新たな学生支援のツールとして2007年1月23日から徳島大学工学部を中心に「キャンパスSNS」の運用を開始した.本研究では,本SNSのログデータを抽出し,参加者の属性を明確に分類したうえで,大学版SNSの特性と学生の動向とを解析した.日記関連の機能に焦点を当てたところ,学生は不特定多数のユーザの最新日記を確認するより特定のユーザの日記を読む割合が高く,仲間同士の閉じたコミュニケーションで終始しまいがちであることが示唆された.明確な目標を掲げて運営側が構造化した形を提示することの必要性が推測された.
著者
後藤田 中 松浦 健二 大塚 真二 鍋島 豊晶 金西 計英 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.1144-1153, 2010-07-01

近年,予防的な健康への取組みが重視され,人の日常的な運動の役割は増している.本研究では,そうした運動の代表といえるジョギングに注目する.個人での日常的な実世界トレーニングに対して,オンラインのコミュニティ空間での集団訓練環境を提案する.本システムは,GPSを用いて個々のトレーニング活動ログを蓄積し,同じコースを非同期に共有するジョガー間での競争的なシミュレーション機能を提供する.具体的には,複数のジョガーをアバタとして表現し,それらのペース変化を地図上の移動アニメーションを用いて視覚化する.また,移動アニメーションを見た際の気づきを地図上にアノテーションとして蓄積できる機能を提供する.これにより,ジョガーのパフォーマンス向上を促進させる目的をもつ.これらの提案機能をもつジョギング支援システムを構築し,実験を行った.実験の結果から,オンラインコミュニティ空間での競争的な訓練環境が,実世界におけるトレーニングにおけるタイム短縮につながった.特にアノテーションの登録箇所を中心に局所的なペース改善の効果も確認された.
著者
金西 計英 松浦 健二 光原 弘幸 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.146, pp.33-38, 2008-07-12
被引用文献数
1

日本の大学ではレポート形式の課題が出されることが多い.これまで我々は,「共同レポート作成課題」に注目し,支援するシステムを開発してきた.しかし,開発したシステムを実際の授業で用いたところ,グループによっては全く議論が行われない,一人でレポートを作ってしまうなどの問題点が浮き彫りになった.レポート作成能力を向上するため,学習者の相互評価が有効なことが,これまでの研究で指摘されている.そこで,本研究では,WEBベースのレポート作成システムに,学習者がレポートを相互評価する機能を実装した.そして,このシステムを試用し,相互評価が,レポート作成の学習に有効な手法であることを検証した.