著者
黒澤 俊 羽生 剛 小西 剛 野中 勝利 楠見 浩二 松田 大 北島 宣
出版者
京都大学農学部附属農場
巻号頁・発行日
no.20, pp.33-34, 2011 (Released:2013-10-08)

マルチング資材であるタイベックシートは,ミカン栽培では果実品質向上を目的として全国的に広く利用されているが,落葉果樹類での利用はあまり進んでいない。しかし,その特性からブドウ,カキ等の落葉果樹でもこの資材を利用することで光合成量の増加による糖度の上昇,反射光および樹冠下の温度環境の改善による着色促進効果が期待できると考えられる。そこで本研究では,タイベック素材の農業資材(タイベックシートおよび同素材で作られたブドウ傘)を用いたブドウの高品質果実生産技術の開発を試みた。その結果,非透水性タイベックシートとタイベック傘の併用により糖度が上昇することが明らかとなった。また,これらの併用により収穫期が促進されることも示唆された。これらの結果から,タイベック素材の農業資材を利用することで高品質果実生産が可能であり,しかも現在よりも出荷時期を早めることができる可能性が示唆された。
著者
黒澤 俊 松本 大生 小西 剛 野中 勝利 楠見 浩二 松田 大 北島 宣
出版者
京都大学農学部附属農場
雑誌
京大農場報告 = Bulletin of the Experimental Farm, Kyoto University (ISSN:09150838)
巻号頁・発行日
no.22, pp.25-26, 2013-12

西南暖地で、無核短梢剪定栽培を行った場合に着色不良が問題となる四倍体ブドウ品種'巨峰'について,プラスチック製結束バンドを利用した結果枝の結縛処理の処理部位と処理時期の違いが果粒品質の及ぼす影響を調査した。調査の結果,いずれの処理も果粒サイズに影響を与えないこと,ベレーゾーン期1ヶ月前に節間に処理した場合には有意に糖度が高くなることが明らかとなった。また,ベレーゾーン期2週間以前の処理は,有意ではないものの,糖度や果皮色を改善する傾向にあることが示唆された。
著者
田中 義行 細川 宗孝 渡辺 達夫 三輪 哲也 矢澤 進
出版者
京都大学農学部附属農場
雑誌
京大農場報告 = Bulletin of Experimental Farm Kyoto University (ISSN:09150838)
巻号頁・発行日
no.21, pp.9-14, 2012-12

トウガラシは,ナス科トウガラシ(Capsicum)属の植物である。Capsicum属は約25種の野生種と5種の栽培種から構成されている(Bosland and Votava 1999)。栽培種は,C.annuum,C.baccatum,C.chinense,C.frutescens,C.pubescensであり,このうちC.annuumが世界中で最も広く栽培されている。日本でも栽培されている品種はほぼ全てC.annuumであり,'鷹の爪'などの辛味品種やピーマンと呼ばれる非辛味品種群もこの種に属する。C.baccatumは南アメリカを中心に栽培がみられる。C.chinenseは熱帯地方で広く栽培されており,激しい辛味を呈するものや芳香性に富んだ品種がある。激辛のグループに属することが知られている'ハバネロ'もC.chinenseである。C.frutescensは,C.chinenseと非常に近縁な種であり,日本では沖縄県の一部で栽培がされている。C.pubescensは南アメリカの山間部で栽培されており,「Rocoto」とも呼ばれる。トウガラシには多様な果実の色・形・大きさなどがあるが,最も顕著な特徴は果実が有する激しい辛味である。トウガラシの辛味の原因となる主要な成分は,無色の脂溶性アルカロイドのカプサイシンである。トウガラシ果実には,カプサイシンに加えてジヒドロカプサイシン,ノルジヒドロカプサイシン,ホモカプサイシン,ホモジヒドロカプサイシンなどの同族体が存在しこれらを総称してカプサイシノイドと呼ぶ。カプサイシノイドには,体熱産生作用,脂肪代謝促進作用など様々な生理作用があることが知られており,香辛料として利用されるだけでなく健康機能性成分としても注目されている。トウガラシは辛味の有無によって辛味品種と非辛味品種に区別されている。しかし辛味品種といっても,'ハバネロ'のような激辛品種から僅かに辛味がある低辛味品種まで様々な辛味程度の品種が存在し,また環境条件によって辛味を発現する'シシトウ'のような品種も存在する。辛味発現の機構を理解することは,トウガラシ育種において重要である。しかしトウガラシ果実の辛味発現は,遺伝的要因と環境条件が影響し複雑であり,体系的な理解には至っていない。近年の分子遺伝学的研究により,辛味発現の制御機構の一端が明らかになりつつある。ここでは,我々の結果も含めて,トウガラシ果実の辛味発現を制御する遺伝子に関する最近までの知見を紹介する。
著者
内藤 実加 加賀田 恒 若原 浩義 桂 圭佑 齊藤 大樹 中崎 鉄也 北島 宣
出版者
京都大学農学部附属農場
雑誌
京大農場報告 = Bulletin of the Experimental Farm, Kyoto University (ISSN:09150838)
巻号頁・発行日
no.20, pp.43-45, 2011-12

イネにおいて,夏期の高温による玄米品質の低下が問題となっている。特に2010年の夏期は北日本から西日本にかけて記録的猛暑となった。そこで,2010年に当農場の大規模圃場において播種期を変えて作付けした複数の品種のイネについて,玄米の外観品質の変異とそれをもたらした要因を解析し,水稲栽培における温暖化対策を検討した。2010年における玄米品質は例年よりも大きく低下したものの,作期や品種によって大きな変異があり,穂揃い後20日間の登熟初期の気温の影響を強く受けていた。今後,より多くの品種,栽培条件下でデータを蓄積していく必要がある。
著者
細川 宗孝
出版者
京都大学農学部附属農場
巻号頁・発行日
no.23, pp.7-12, 2014 (Released:2015-06-24)
著者
片岡 圭子 小西 剛 西川 浩次
出版者
京都大学農学部附属農場
雑誌
京大農場報告 (ISSN:09150838)
巻号頁・発行日
no.10, pp.7-12, 2001-03
被引用文献数
2

大阪府高槻市古曽部町のシクラメンを栽培中のガラス温室(約93.8m2)に細霧冷房装置を導入し,夏季の冷房効果について検討した.温室内は二重遮光を行い,ノズル数は29個,5分間おきに1分間噴霧,3分間おき1分間噴霧および無噴霧の処理を設けた.2000年8月5日から8月17日の期間において,外気温および室内気温を30秒間隔で測定し,午前10時から午後4時までの間の平均気温を比較したところ,外気温よりも,5分間おき1分間噴霧で約2℃,3分間おき1分間噴霧で約3℃の室内気温の低下が認められた.無噴霧では外気温との差はほとんど認められなかった.7月14日から8月31日の期間について,細霧冷房を導入した2000年と細霧冷房未導入であった前年(1999年)との平均気温を比較したところ,約0.8℃の冷房効果が認められた.シクラメンの生育は前年までよりも良好で,出荷期の前進が認められた.病虫害の増加は認められなかった.