著者
黒澤 俊 羽生 剛 小西 剛 野中 勝利 楠見 浩二 松田 大 北島 宣
出版者
京都大学農学部附属農場
巻号頁・発行日
no.20, pp.33-34, 2011 (Released:2013-10-08)

マルチング資材であるタイベックシートは,ミカン栽培では果実品質向上を目的として全国的に広く利用されているが,落葉果樹類での利用はあまり進んでいない。しかし,その特性からブドウ,カキ等の落葉果樹でもこの資材を利用することで光合成量の増加による糖度の上昇,反射光および樹冠下の温度環境の改善による着色促進効果が期待できると考えられる。そこで本研究では,タイベック素材の農業資材(タイベックシートおよび同素材で作られたブドウ傘)を用いたブドウの高品質果実生産技術の開発を試みた。その結果,非透水性タイベックシートとタイベック傘の併用により糖度が上昇することが明らかとなった。また,これらの併用により収穫期が促進されることも示唆された。これらの結果から,タイベック素材の農業資材を利用することで高品質果実生産が可能であり,しかも現在よりも出荷時期を早めることができる可能性が示唆された。
著者
田尾 龍太郎 難波 梓 山根 久代 冬廣 吉朗 渡邊 毅 羽生 剛 杉浦 明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.237-240, 2003 (Released:2008-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1 5 1

ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の大多数の栽培品種は,S-RNaseが関与する配偶体型自家不和合性を示す.ウメには,自家和合性品種も存在しており,これらの自家和合性品種は自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(Sf-RNase遺伝子)を持つことが報告されている.本研究では,このSf-RNase遺伝子を特異的にPCR増幅するためのプライマーセットを開発した.‘剣先’からSf-RNase遺伝子の部分配列をPCRクローニングし,その塩基配列を決定した.Sf-RNase遺伝子のイントロン部位の塩基配列よりセンスプライマー(Ken2)およびアンチセンスプライマー(PM-R)を設計し,いくつかのウメ品種を用いてその有効性を検討したところ,Sf-RNase遺伝子をもつ品種でのみ増幅がみられた.今後このプライマーセットをウメの自家和合性品種の育種に利用することによって,育種にかかる時間と労力を大幅に軽減できると思われる.
著者
羽生 剛
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,植物ホルモンであるジベレリンによってブドウの果実が種なしになるメカニズムの解明をのため,種なし化(単為結果)に関係している遺伝子の解析を行った.その結果,ジベレリン処理による反応に関係していると考えられるジベレリンを植物体内で代謝する遺伝子,種が無くても果実が肥大するために必要であると考えられる細胞分裂関連遺伝子,果実に糖を蓄積するのに必要な遺伝子を同定することができた.
著者
北島 宣 片岡 圭子 札埜 高志 羽生 剛 山崎 安津
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

'無核紀州'由来の無核性発現には植物生長調節物質は直接的に関与していないことが明らかとなった。この無核性発現機構は、高温条件で解除され、種子が形成されることが明らかとなった。開花0~4週間後の高温が無核性発現機構の解除に関与することが示唆された。
著者
田尾 龍太郎 羽生 剛 山根 久代 杉浦 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.595-600, 2002-09-15
被引用文献数
8 12

ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の多くの栽培品種は, 他の多くのバラ科果樹類と同様にS-RNaseの関与する配偶体型の自家不和合性を示す.しかしながら, 中には自家和合性の品種も存在し, これらの品種はいくつかの点で自家不和合性品種に比べて優れている.我々は, 以前の研究で, ウメの自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(S_f-RNase遺伝子)を見い出した.今回は, 自家和合性品種である'剣先(S_fS_f)'と自家不和合性品種の'南高(S_1S_7)'のS-RNaseを比較検討することでS_f-RNaseの性質を明確にしようとして, 以下の実験を行った.'剣先(S_fS_f)'と'南高(S_1S_7)'の花柱からcDNAライブラリーを構築し, S_f-, S_1-, およびS_7-RNaseをコードするcDNAをクローニングした.これらcDNAより推定されるS_f-, S_1-, およびS_7-RNaseのアミノ酸配列にはT2/S型RNase特有の2つの活性中心とバラ科植物のS-RNaseに共通してみられる5種類の保存領域が存在した.RNAブロット分析を行ったところ, ウメのS-RNase遺伝子は, 他のPrunus属のS-RNase遺伝子と同様に葉では転写されておらず, 花柱のみで転写されていることが明らかになった.また, '剣先'のS_f-RNase遺伝子と'南高'のS-RNase遺伝子の転写産物量に差異は見いだされなかった.花柱粗抽出液の2次元電気泳動を行ったところ, S_f-RNaseは他のS-RNaseと同様の分子量や等電点, そして免疫学的特性を持つことが示された.本研究の結果は, ウメのS_fハプロタイプの個体の示す自家和合性はS_f-RNase遺伝子に強く連鎖したpollen-S遺伝子の作用によって生じている可能性を示唆するものであろう.