著者
大井 次三郎
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.673, pp.1-20, 1943
被引用文献数
1

のぼたん科<br>本邦産のぼたん科ノ植物ハ決シテ澤山ノ種類ガアル譯デハナイガ, 先年筆者ガ臺灣デ採集族行シタ際ニ, 最モ心ヲ引カレタモノノーツデ, 此科全體トシテノ美シイ花ト色々ナ形ノ葉ハ目ヲ樂マセルニ充分デアツタ。北西<b>ニユーギニヤ</b>ノのぼたん科ノ採集品ヲココロヨク貸與サレタ金平&bull;初島兩氏ニ厚ク謝意ヲ表スル。<br>本邦ト共通ノ種類ハ一ツモナク, <i>Otanthera, Melastoma, Medinilla, Astronia</i> ノ四屬ハ臺灣及ビソレ以北ニモアルガ <i>Poikilogyne, Sonerila, Phyllapophysis, Dissochaeta</i>, <i>Astronidium, Kibessia, Pternandra, Memecylon</i> ノ諸屬ハ本邦ニハ未知デアル。採集品ハ <i>Medinilla</i> ガ最モ多クテ18種ニ達シ, 從來同島ニ56種ガ知レテ居タガ, 此所デ11種ガ附加サレタ。ソレニ次イデハ <i>Astronia, Memecylon, Poikilogyne</i> ガ各3種ヅツアリ, 殘リハ各一種ヅツデアツタ。
著者
佐伯 敏郎
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.921, pp.111-119, 1965 (Released:2006-10-31)
参考文献数
50
被引用文献数
5 8
著者
川瀬 義之 柴田 萬年
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.897, pp.89-91, 1963
被引用文献数
5

われわれの知る範囲内では今日までのところ, まだチューリップの花からフラボノール配糖体を得た報文に接していないので, 二品種の花についてその存在を確かめた. 品種ゴールデンハーベスト (コッテージ系で大きな濃いレモン色の花をもつもの) の乾燥花被から1%の収量で黄色色素が結晶状に単離され, 各種のテストの結果ルチンと同定された. このフラボノール配糖体はまた品種アスリート (メンデル系で純白色の花をもつもの) の花被中にもその存在が確認されたが, 含量が少ないせいか結晶状には得られなかった. 明年以降他品種について継続研究の予定である.
著者
本多 康人
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.890, pp.309-315, 1962 (Released:2006-12-05)
参考文献数
1

1. ルコウソウの花色について, 赤色と白色との 関係は不完全優性で, F1雑種は桃色で, F2では赤 と桃色と白が1:2:1に分離した.2. ルコウソウの桃色には二種類ある. その一つ は純系のもので, 他は赤色と白色との雑種である. そしてそれらの関係は今後の研究にまたねばならな い。3. マルバルコウ×ルコウソウでの受精率は硫酸 紙をかぶせた普通の交配方法で, 野原の研究では1 ~2%であるが, 著者は, これは交配時刻の問題と 考え, 午前7~10時の間では51%であった.4. マルバウコウ×ルコウソウのF1雑種は野原 の研究と同じく不稔である.5. ルコウソウ属植物はすべて気温が14°以下で は, やくが破れず交配不能である.6. ルコウソウ属植物はすべて短日植物である.7. 野原によれば, ルコウソウの赤色はマルバル コウの黄土色に対して優性とあるが, その結論は出 されない. なぜならば, マルバルコウ×ルコウソウ 白色でもマルバルコウ×ルコウソウ桃色でもF1雑 種は緋色があらわれるからである.この花色の優劣 関係の決定にはさらに遺伝生化学的研究が必要であ る.8. モミジバルコウより葉形の突然変異体が出現 した.9. 突然変異体とモミジバルコウとの交雑では, F1雑種では中間の葉形を示し, F2世代では, 突然 変異体 : 雑種形 : モミジバルコウが1:2:1に分 離した.
著者
小室 丈夫 矢野 謙三郎 服部 静夫
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.937, pp.376-380, 1966 (Released:2006-10-31)
参考文献数
3
被引用文献数
2 2

(1)暗所においたタバコの葉のデンプンは24時間で完全になくなることはない.(2) タバコの品種によりデンプンの減少するはやさにちがいがみられる. デンプンがほとんど全部消失するまでに Bright Yellow と備中葉では少なくとも 120 時間, White Burley では約 96 時間を要する.(3) 芯どめ処理をしたものからとった葉と, 芯どめ処理をしないものからとった葉とでは, 暗処理によるデンプン含量の変化に若干の差がみとめられた.
著者
藤田 哲夫
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.898, pp.138-141, 1963 (Released:2006-12-05)
参考文献数
3

ホウズキの幼植物の葉序は, まず2枚の子葉が対生し, そのすぐ上の葉からは2列互生になり, ついで1+2の交走斜列をもったらせん配列になる. ところが生長して花をつけるようになった葉条部では, 一節から大きさのやや異なる2枚の葉がほぼ100°の開度をもって双生し, しかも2葉間のすぐ上のところに1個の花をつけた異様な葉序が見られる. この1対の葉のうち比較的大きいものを+葉, 小さいものを-葉とすれば, 各節の+, -葉はけっして十字対生をなさず, それぞれ茎の側方にジグザク状に配列している. このようにホウズキの葉序が他の植物とはかなりちがっているのは, ホウズキの茎が単軸でなくて, 仮軸になっているからである. すなわち各節ごとに+葉の腋芽が発育して主軸状になって, それまでの下方の軸と入れかわり, 下方の軸の先端は側方にそれて花になり2葉間に終わっているのである. すなわち花をつけるようになった葉条部は, いわゆるanthocladiumを形成しているわけである.各腋芽には2枚の葉しかできず, その中の最初の葉 (-葉にあたる) が, 下方の軸の2番目の葉 (+葉にあたる)とともに対をなして1節に双生しているのである. 葉の発生の初期には, 1節につく+, -葉の 始原体の着生位置は上下にわずかながらへだたっているが, その後葉は著しく大きく生長しても葉の節間 はほとんど伸びないために, 生長後は同一の節上に生じたようになるのである. ときにその節間が伸びた ために2葉が対にならず, 上下に著しく離れている場合も見られる.
著者
田中 信徳
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.650, pp.55-65, 1941
被引用文献数
15

本報ニ於テハはたがや (<i>Bulbostylis barbata</i>), かはらすがな? (<i>Cyperus sanguinolentus</i>), こしんじゅがや (<i>Scleria tesselata</i>), ひめくぐ (<i>Kyllingia brevifolia</i> var. <i>leiolepis</i>), いぬのはなひげ (<i>Rhyncospora japonica</i>)ノ5種ニツキ其染色體數ト花粉發達トヲ記シタ。染色體數ハはたがやn=5, かはらすがなn=24, こしんじゅがやn=14, ひめくぐn=60, いぬのはなひげn=31デアル。<br>いぬのはなひげヲ除イタ4種ニ於テハ本科特有ノ花粉發達ガ見ラレタ。即チ減數分裂ニヨツテ生ジタ4核ノ内, 楔形ヲナシテヰル花粉母細胞内ニテ最外側ニ位置スル1核ノミ花粉核トシテ生長シ, 他ノ3核ハ母細胞ノ内方隅ニ押込メラレテ退化スル (コレラノ内方隅ニテ退化スル3核ヲ&ldquo;<b>先端核</b>&rdquo;ト名付ケル)。花粉核ハヤガテ花粉第一分裂ヲ行ヒ内方ニ生殖核, 外方ニ榮養核ヲツクル。前者ハソノ周園ニ發達シテクル隔膜形成體ノ融含ニヨツテ生殖細胞トナル。<br>所ガいぬのはなひげニ於テハ4核ノ内3核ガ退化スルコトニハ變リガナイガ, 母細胞ノ内方隅ニ於テデハナク, ソノ反對側ノ廣イ場所即チ楔形細胞ノ底面ニ於テ退化スル(コノ場合ノ退化スル3核ヲ前記ノ先端核ト區別シテ&ldquo;<b>底位核</b>&rdquo;ト名付ケル)。コノ新事實ハ從來本科ノ花粉發達ガ被子植物群中全ク他トカケハナレテ居リ, 相互間ノ關係ガ不明デアツタノニ對シテ一ツノ手懸リヲ與ヘタモノトシテ意義ガ大キイ。即チ花粉發達過程ノ細胞學的見地ヨリ見ル時, 本科ニ最モ近似ノ花粉發達型ヲ有スルとうしんさう科(Juncaceae)ト系統的ニ近縁デアルコトガ知ラレタノデアル。とうしんさう科デハ4核ノ内3核ハ母細胞ノ外側ノ廣イ場所ニ移動シ&ldquo;底位核&rdquo;トナリ, 生殘ル1核ハ母細胞ノ中央ニ殘リ花粉核トナル(とうしんさう科デハコノ生キ殘ル花粉核ヲ漫然ト&ldquo;先端核&rdquo;ト呼ンデヰルガ,&ldquo;花粉核&rdquo;ト呼ブベキデアル)。コノ底位核ハ丁度いぬのはなひげノ退化スル3核ニ相當スル かやつりぐさ科ノ先端核或ヒバ底位核ハ殆ド分裂セズ, 稀ニ分裂シテモ再ピ一ツニ融合シテシマフガ, とうしんさう科ノ底位核ハ明ラカニ花粉第一分裂ヲ行ツテ生殖核ト榮養核トニナル然シ花粉四分子ニマデ分化スルコトナク, 結局1個ノ退化花粉四分子型ノ花粉トナル。換言スレバいぬのはなひげノ花粉發達ハとうしんさう科ノソレヨリ退化ガ更ニ一歩進ンデヰルモノト言ヘヨウ, ソシテ底位核ノ更ニ退化シ状態ガすげ屬ほたるゐ屬等ノ光端核ト考ヘラレル。<br>本科ノ花粉發達ハ現在マデ9屬ニ就イテ研究報告セラレテヰルガ, 4核ノ内3核ガ退化スルコトハ凡ベテニ共通デアルガ, ソノ退化ノ程度ニ僅カヅツノ差ガアリ, ソノ程度ハ染色體基本數ト聯關スル傾向ガアル。
著者
高沖 武
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.972, pp.244-252, 1969 (Released:2006-10-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

In a previous paper the author presented a new simple volumeter for measurement of photosynthesis and respiration rates with the use of a low power microscope. This was improved to permit the measurement without the microscope. Five to seven volumeters, one being thermobarometer, were used simultaneously. Photosynthesis rate is measurable within about 10minutes, and respiration rate within about 30minutes. This apparatus is useful in measurements not only indoors but also outdoors. Presented in this report are the data obtained from measurements made indoors and outdoors on 32 species of plants; that is 1 aquatic, 3 marine and 28 land plants. The apparent photosynthesis rates are generally larger than those previously observed under near-natural conditions. This may be due to the high concentration of CO2 (2.7%), high temperature (30°), and also the use of cut leaf strips permitting large gas exchange through the cut surface. In a leaf of Ficus elastica the photosynthesis rate was somewhat higher at the more apical and near-margin parts of the leaf than at the basal and near-midrib ones, respectively. No such difference was seen on the respiration rate.
著者
HURUSAWA Isao
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.703, pp.71-76, 1947

1) アマミヒトッバハギ 奄美大島にヒトツバハギの一變種があるので報告する. 因に, <i>Securinega</i> 屬に就て少し考へてみる. Pax-Hoffmann の system で subtrib. Glochidinae 及び subtrib. Phyllanthinae は甚だ混亂した群概念で其中に於ける屬相互の關聯づけにかなり不自然な點が見られる. <i>Securinega</i> (及び他一, 二の屬)と <i>Phyllanthus</i> (及び <i>Reverchonia</i>) とを假雄蕊の有無により區別したことは機械的である. <i>Phyllanthus</i> に近縁の <i>Glochidion</i> (兩者を別のsubtrib. とすることも穏當でないが) は現在通用せる概念では假雄蕊を有するものと全然缺くものとある. 少し距るが <i>Antidesma</i> では同種内で (同一個體に於てさへ) 屡々明瞭なもの, 不明瞭で痕跡的なもの, 缺除せるものが混在する. 花部要素の基數に就ても <i>Phyllanthus</i> の3, 6 と<i>Securinega</i>の5 とを其の發生的な考慮なしに區別點に使ふのは安易な觀方であらう. <i>Securinega</i> 屬の概念が或程度生態的な外觀に基いたことを反省して舊い觀方ではあるが, <i>Phyllanthus</i> との關聯に於て再檢討される必要がある. 序ながら臺灣のシマヒトツバハギ屬 <i>Fl&uuml;ggea</i> は <i>Securinega</i> から屬として區別すべきでない. 根據詳論は別の機會にゆづる.<br>2) コバンノキ 前項にも觸れたように <i>Phyllanthus</i> をめぐる諸屬は尚廣汎な revisio を要する群であるが, 其の一つコバンノキは最初 <i>Cicca</i> 屬として, 後 <i>Phyllanthus</i> の下に, 或はMiquel や Pax により <i>Glochidion</i> に編入され變遷を經たが, 嘗て Baillon が <i>Hemicicca</i> として獨立せしめたことがある. <i>Phyllanthus</i> に最近縁であるが Baillon の意見を最も妥當と思ふ. 臺灣の <i>Hemicicca tetrasperma</i> (Hayata) の他, 中國(大陸)に若干, 茲に屬するものがある.<br>3) オゼヌマタイゲキ 尾瀬平に産するハクサンタイゲキの少し變つた型. 子房外面の疣状突起の間に長軟毛を生ずる. 此の形質は本屬中でも稀で, 邦内では <i>Euph. togakusensis</i> Hayata, アジア大陸では印度シツキム地方の <i>Euph. sikkimensis</i> Boissier, 滿洲産 <i>Euph</i>. <i>barbellata</i> Hurusawa などに見られる. <i>E. togakusensis</i> の基準型 (type-specimen による) は莖葉廣く殆ど楕圓形で基底鈍形であるが, 本植物では莖葉狹く基脚は漸尖して短い葉柄へと流れ込む. 久内清孝氏が蛭ヶ野よりもたらされた植物は更に此の傾向著しく, 莖葉披針形で外觀が偶然東大〓葉室に一枚標本のある <i>E. sikkimensis</i> に似て來るのは面白い (但し兩者の直接關係は考へられない. 差異點は略す). <i>E. barbellata</i> は <i>Euph. pekinensis</i> Ruprecht 系統のものである. <i>E. pekinensis</i> 系のものは平地にさかえ, その諸型が高山に見られる (var. <i>Fauriei</i>, var. <i>ibukiensis</i> 等)が, <i>E. togakusensis</i> は低地に降らない. 尾瀬平は最も低い出現であらうか.<br>4) キヌゲソウ <i>Cymbaria dahurica</i> Linn. の Maximowicz 氏による解釋は廣範圍の諸型を含めてかなり大きく見てゐるようである. 滿洲産ウスギヌサウ狹義の <i>Cymb. dahurica</i> に比して, 察哈爾省産の本植物はより密なる絹毛を植物全體に布き, より大形の美花をつける. 富樫氏の採集品による.<br>5~8) 富樫氏の北支植物採集標本は豊富な <i>Pedicularis</i> 屬の種類を含むでいた. 各種諸型の系統關係に就てはいづれ他の機會に記す. 各種に就いての解説は省略. 其の中, 山西省五臺山のセイリヤウシホガマ <i>Pedicularis tristis</i> Linn. var. <i>Nakaiana</i> Hurusawa は興味ある種類であつた. 葉形や植物全姿に於て幾分北部朝鮮産のナギナタシホガマ <i>Ped. lunaris</i> Nakai を想はせるものがあるが, 花部形態で明かなごとく全く別系統に屬する. 生育形態の似た種類を印度南部やセイロン島に産する <i>Ped. zeylanica</i> Benth. 或はチベツト, ヒマラヤ, シツキム産の <i>Ped. trichoglossa</i> Hook. fil. に於て氣附くのであるが, 花部器官の分折からこれ等との近縁關係は極めて薄い. オニシホガマ節 sect. Anodon とシホガマギク節 sect. Rhyncholopha とを繋ぐ中間型的な (後者の群に屬せしめ得るが) 種類である. 變種名は恩師中井猛之進先生に捧げた. 和名は五臺山本來の名稱清涼山より採る.