著者
Smith M.D.
出版者
兵庫県森林動物研究センター
巻号頁・発行日
no.8, pp.20-29, 2016 (Released:2018-01-15)

・北米における野生化したノブタは、農作物被害のほか森林被害や生態系への被害など多くの問題を引き起こしている。・家畜として16世紀にアメリカに導入されたのち野生化し、現在では全米の45~47州に分布が拡大している。・狩猟対象としても人気があるため狩猟者によって他地域に移動され、分布拡大が加速した。・ノブタの管理には、ワナや銃を用いた捕獲と電気柵などで防除する手法が取られている。・ノブタの場合個体数の8割を捕獲しても個体数を削減できなかったため、群れ全体をすべて一掃する戦略的な捕獲計画が必要である。
著者
奥田 優
出版者
兵庫県森林動物研究センター
巻号頁・発行日
no.1, pp.46-54, 2009 (Released:2017-11-16)

・レプトスピラ症はLeptospira interrogans(病原性細菌)感染に起因する人畜共通感染症である。・レプトスピラの保菌動物はげっ歯類をはじめとした野生動物であり、近年、個体数が急激に増加し、人の生活圏に出没する機会の増えているアライグマもまた、レプトスピラの保菌動物となる可能性のある動物である。・アライグマ防除計画が実施されている兵庫県内のアライグマにおいて、顕微鏡下凝集試験(MAT)を用いてレプトスピラ抗体保有率の調査を行うとともにPCRを用いてレプトスピラ遺伝子を検出した。・主に分布中心において回収された132頭のうちMATで84頭(63.6%)が抗体陽性を示した。・PCRでは48頭中4頭(8.3%)でレプトスピラ遺伝子が検出された。これらの結果から兵庫県のアライグマには広くレプトスピラが感染していることが明らかとなった。・アライグマの生息地域の拡大により、人の生活環境への接触の機会が増すことでアライグマから人への感染のリスクが高まる可能性が考えられる。
著者
坂田 宏志 岸本 康誉 関 香奈子
出版者
兵庫県森林動物研究センター
巻号頁・発行日
no.3, pp.26-38, 2011 (Released:2017-11-16)

・兵庫県のツキノワグマの自然増加率や個体数の推定を、階層ベイズモデルを構築し、マルコフ連鎖モンテカルロ法によって推定した。・推定モデルは、出没情報件数、捕獲数、捕殺数、標識放獣数とその再捕獲数などの管理業務から体系的に得られるデータをもとに構築し、ブナ科堅果類の豊凶の影響を補正するモデルとした。・自然増加率は堅果類の豊凶によって変動するが、平均して20%前後と推定され、凶作の年でも減少していた可能性は低いと推定された。・個体数は、順調な増加傾向にあり、2010年当初の段階で、中央値で650頭程度(90%信頼限界では300~1,650頭程度)であると推定された。
著者
鮫島 弘光 坂田 宏志
出版者
兵庫県森林動物研究センター
巻号頁・発行日
no.1, pp.66-77, 2009 (Released:2017-11-16)

・アライグマの原産地はメキシコ、アメリカ合衆国、カナダである。・原産地では、アライグマは重要な狩猟獣であり、アメリカだけで毎年数百万頭が捕獲されている。・生活被害や農業被害をもたらす有害獣や人畜共通感染症のホストとしても、捕獲されている。・アライグマは、鳥類やウミガメの集団営巣地で強い食害を与えているために、捕獲されている事例もある。・外来哺乳類による農業被害、生態系被害は、全世界で発生しており、根絶や個体数密度の抑制の対策が数多く行われている。・成功した根絶プロジェクトとして、大規模なものはイギリスにおけるマスクラット、ヌートリアの根絶があるが、多くは島嶼や小面積の保護区で行われたものである。・アライグマは、ヨーロッパ、中米にも移入されている。狩猟対象となっている一方、一部は農業被害や感染症の予防のために捕獲されている。・根絶が理想的な管理方法であるが、実際は実現可能性、費用対効果の観点から個体数密度の抑制を目標としている管理プログラムもある。・日本への移入は1960年代に始まり、近年急激に分布を拡大している。・分布の拡大とともに甚大な農業被害や生活被害を及ぼしている。また捕食・競争による生態系への影響も懸念されている。・このため、各都道府県、市町村で対策が進められはじめている。
著者
高木 俊 栗山 武夫 山端 直人
出版者
兵庫県森林動物研究センター
巻号頁・発行日
no.10, pp.32-45, 2018 (Released:2018-08-02)

・鳥獣害アンケートにおけるシカ・イノシシによる農業被害の程度と、集落周辺の森林面積割合、密度指標の関係性の分析を行った。・シカ・イノシシの密度指標として、出猟カレンダーから集計した銃猟時の目撃効率、箱わなの捕獲効率を用い、農業被害との関係性を比較した。・シカ・イノシシいずれも密度指標と森林面積割合を組み合わせることで、より被害程度が説明され、シカによる被害は、周辺1000m以内での森林面積割合が高い集落で、イノシシによる被害は周辺100mの森林面積割合が高い集落で深刻化しやすい傾向がみられた。・景観構造の違いを考慮した場合、森林内の銃猟時の目撃効率よりも、集落周辺で設置されることの多い箱わなでの捕獲効率の方が、被害程度との関係性が強かった。・目撃効率と被害程度の関係性は、兵庫県全体での個体数管理の目標設定の基準として使われてきたが、集落単位で被害分析や対策の評価を行う場合には、景観構造の違いを考慮し、箱わなでの捕獲効率を指標とすることが有効である。