著者
渡部 峻 近藤 雄一郎 竹田 唯史 山本 敬三
出版者
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター
雑誌
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 (ISSN:21852049)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-6, 2018

本研究の目的は,2018年平昌パラリンピックでのバイアロン・シットスキー競技の順位成績の決定要因について検討することと,スキー滑走速度とポーリング動作との関係を明らかにすることとした。被験者は,平昌パラリンピックで女子6kmのバイアロン・シットスキー競技に参加した15名とし,公式記録とスキー滑走動作のビデオを用いて分析を行った。公式記録から順位成績と射撃のミスショット数を求め,ビデオ分析から各選手の相対的な滑走速度とポーリング頻度を求めた。統計処理では,スピアマンの順位相関分析を用いて,順位成績と滑走速度,射撃のミスショット数およびポーリング頻度との相関関係をそれぞれ分析した。滑走速度とポーリング頻度の相関関係ではピアソンの積率相関分析を用いた。また,滑走速度やポーリング頻度のラップ間の差を調べるために,一元配置分散分析と多重比較検定を用いた。すべての統計処理の有意水準は5%未満とした。結果,順位成績と平均滑走速度(rs = -0.5951, p<0.05)および射撃のミスショット数(rs = 0.5874,p<0.05)の間にそれぞれ有意な相関関係が認められた。成績上位選手は射撃のミスショット数が少なかったことから,射撃技術が高いことが,上位選手の特徴であると考えられた。次に,平坦地での滑走速度とポーリング頻度との間には有意な相関関係は認められなかった。最終ラップでは,ポーリング頻度は有意に増加したが,相対滑走速度に有意差は認められなかった。この結果から,最終ラップではポーリング頻度を増加させて,疲労によるポーリングの推進力低下を補ったことが示唆された。
著者
大宮 真一 若林 彩乃 日裏 徹也 伊丸岡 亮太
出版者
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター
雑誌
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 (ISSN:21852049)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.11-19, 2017

本研究では,100m走を専門とする女子選手1名を対象として,中学3年から大学4年までの8年間のトレーニング経過から記録,ピッチおよびストライドの変化について明らかにし,選手個人の競技力について縦断的に評価することを目的とした。 ビデオカメラにより撮影した映像から100m走のスタートからゴールまでのステップ数を計測し,平均ピッチ,平均ストライドおよびピッチ・ストライド比を算出した.中学校3年から大学4年までの練習日誌を参考に,トレーニングにおいて意識した点および重視したトレーニングなどを調査した。1)競技記録において,大学4年は中学3年および高校1年と比較して有意に高い値を示した。2)ピッチにおいては,中学3年から高校1年へ,大学2年および大学3年から大学4年にかけて有意に増加していた。また,ストライドにおいては中学3年から高校1年へ,大学3年から大学4年へは有意に低下した。ピッチとストライドは,自己記録を更新した学年ではトレードオフの関係にあった。3)ピッチ・ストライド比は,中学3年から高校1年へ,大学3年から大学4年へ有意に向上した。4)競技記録とピッチおよびストライドとの間に有意な負の相関関係が認められた。5)大学3年および4年での自己記録更新した学年では,主にミニハードルドリルおよび体幹強化のトレーニングが充実していた。 以上のことから,本研究の対象者は中学3年から大学4年生までの8年間かけて100m走の競技記録が向上したことが明らかとなり,ピッチとストライドが増減しながら競技記録に影響していたことが明らかとなった。
著者
大西 昌美 齊藤 雄大 堀江 航
出版者
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター
雑誌
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 (ISSN:21852049)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-14, 2016

近年,障がい者スポーツに注目が集まっている。そこで我々は,ベースボール型車椅子競技の開発と普及について研究を進めてきた。本研究では車椅子ソフトボールのルールブックとクラス分け制度を作成しその有効性について検証した。ルールブックについては,スローピッチソフトボールのルールを抽出し作成した。このルールブックは全日本車椅子ソフトボール選手権大会の運営で活用された。クラス分け制度については,National Wheelchair Softball Association(米車椅子ソフトボール協会)が使用している制度を和訳し,日本大会で使用できるようにした。具体的には健常者を出場できるようにした。結果,健常選手,障がい選手ともに増加した。このことから,クラス分け制度を導入することが,選手増加に好影響を及ぼしたのではないかと考えられる。実際にどのような影響を及ぼしたかどうかについては,今後選手の意見をもとに調査し検証する必要がある。 In recent years, Adapted Sports has been getting a lot of attention and gainingpopularity. Therefore, we have been conducting research on the theme of the developmentand diffusion of baseball-type wheelchair sports. The purpose of this study was to make therulebook and classifi cation system for wheelchair softball, and to verify its eff ectiveness. Therulebook was to specify the rules of Slow-pitch Softball. This rulebook worked very well in JapanNational Wheelchair Softball Tournament. The classifi cation system for the National WheelchairSoftball Association was translated into Japanese language in order to adapt to the JapanNational Wheelchair Softball Tournament. It was also included for able-bodied players. Afterthe implementation of the classifi cation system, the number of able-bodied players and disabledplayers increased. Thus, it is assumed that the classification system had a good influence oncompetitions. We would like to consider this in further research.
著者
吉田 昌弘 中島 千佳 角谷 尚哉 吉田 真 沖田 孝一
出版者
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター
雑誌
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 (ISSN:21852049)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.21-27, 2017

Endurance ability can be evaluated using the 20-m shuttle run or yo-yo intermittenttest. However, athletes engaged in fi eld-based team sports such as football and basketball arerequired to repeatedly perform explosive and intermittent sprint activities. The aim of this studywas to establish the fi eld test that can be used to assess repeated sprint ability and investigaterelated factors of the test score. Twenty female basketball players were included in the study.All subjects performed a 20-m ×5×5 test, 20-m sprint test, 20-m shuttle run test, and line drilltest. To investigate the relationship between the 20-m ×5×5 test and other tests, the Pearsoncorrelation coeffi cient was used. We found signifi cant statistical correlations of total time with thefastest time(r =0.55, p <0.01), latest time(r =0.91, p <0.01), and percent splint decrement(r =0.59,p < 0.05)in the 20-m × 5 × 5 test. In addition, the total time in the 20-m × 5 × 5 test correlatedwith the score in the 20-m shuttle run(r = -0.69, p <0.01). By contrast, no correlation was foundbetween the total time in the 20-m ×5×5 test and the time in the 20-m sprint(r =0.31, p=0.21).We suggest that the 20-m × 5 × 5 test can be used for assessing the endurance ability, whichcould not be evaluated by using only the existing endurance tests.全身持久力は,20mシャトルランやYo-Yoテスト等により評価可能である。しかし,サッカーやバスケットボール等の競技では,長時間走行する能力に加え,全力スプリントを繰り返す間欠的持久力が求められる。間欠的持久力を評価するためには,全力スプリントを運動課題とした評価が必要であるが,評価手法は確立されていない。本研究の目的は,間欠的スプリント運動を課題としたフィールドテストを考案し,テスト結果の関連因子を検討することとした。大学バスケットボール女子選手20名を対象に,20mを全力で5往復走行する課題を計5セット行う『20m×5×5テスト』を実施した。本テストでは,スタートの合図で1セット目を開始し,1セット目のスタートから2分後を2セット目のスタートと規定した。2セット目以降のスタート開始も前セットのスタートから2分後と定めた。各セットの走行終了から次セットのスタートまでを休息時間とした。測定項目はタイム(5セットの合計および最高値,最低値),5セット中のタイム低下率とした。また,スプリント能力(20m走),切り返し能力(ラインドリル),全身持久力(20mシャトルラン)を計測し,合計タイムと各因子の関係をピアソンの相関係数により算出した。20m×5×5テストの合計タイムは5セット中の最高値(r=0.91,p<0.01),最低値(r=0.55,p<0.01),タイム低下率(r=0.59,p<0.05)と有意な相関を認めた。20m×5×5テストの合計タイムは全身持久力(r=-0.69,p<0.01),切り返し能力(r=0.51,p<0.05)と有意な相関を認めた。一方,合計タイムとスプリント能力(20m走)の間には有意な相関関係は認められなかった。本研究結果より,20m×5×5テストは既存の全身持久力評価とは異なる体力要素を評価できることが示唆された。
著者
徳田 真彦 吉田 昌弘 青木 康太朗 竹田 唯史 吉田 真
出版者
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター
雑誌
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 (ISSN:21852049)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-9, 2017

Level of physical fitness and motor ability of children in Hokkaido are lowercompared to the national averages due to inactivity in winter. We developed snow games toenhance the levels of physical fi tness and motor ability of children in Hokkaido. The purpose ofthis study was to clarify the physical and psychological eff ects of the snow games and elucidatethe diff erences between a snow-covered playground and indoor playground. Twenty-eight fourthgrader (14 boys and 12 girls) participated in two snow games named "Snow Tag" and "Catchthe Tail". They performed these games on a snow-covered ground and a snow-free (indoor)playground. Heart rate (bpm), number of steps, and energy expenditure (kcal) were measuredto evaluate exercise intensity and the amounts of activities of the snow games. After playing thegames, the participants were given questionnaires that included questions on the sensation ofenjoyment, motivation to do again and sensation of fi tness improvement by these activities. Themain fi ndings were as follows:1. It appears that playing these games on a snow-covered ground is more eff ective to increaseexercise intensity and the amount of physical activities. to be more eff ective on a snow-coveredplayground for increasing exercise intensity and the amount of physical activities.2. The snow games are enjoyable, and fun to stir children's interest to play again, and adequatelyhard enough to and increase the level of physical fi tness during winter. In the future, while working on development of new activity, we would like to createan activity manual and work on spreading snow games.冬季間,屋外での活動が制限される北海道では,子どもたちの体力・運動能力が全国的に見ても総じて低い状況にある。こうした状況を踏まえ,筆者らは北海道の子どもたちの体力・運動能力を向上させることを目的に,冬の外遊びプログラム「スノーゲーム(Snow Games)」を開発した。そこで本研究では,小学生を対象に実験を行い,身体的・心理的効果を測定し,スノーゲームの運動効果について検証する事及び,スノーゲームが子どもの体力向上に向けて有効な活動であるかを検討する事を目的とした。 調査対象者は,スノーゲームの「スノータッグ」,「雪上しっぽとり」を体験した小学校4年生29名であった(男子15名,女子14名)。スノーゲームの身体的効果を検証するため,ゲーム実施中の心拍数,歩数,エネルギー消費量(kcal)について手首型心拍計(PolarA360,Polar社製)を用いて計測した。測定時間は,ゲームの説明から,1回目のゲーム,作戦会議,2回目のゲームまでとした。スノーゲームの心理的効果を検証するため,実験後に自記式のアンケート調査を実施した。調査内容は,雪上と屋内で行った各アクティビティについて「楽しさ」,「意欲(またやってみたい)」,「身体的負担度」の3項目であった。 スノーゲームの運動効果を検証した結果,ゲーム特性によって雪上での実施適正の差異はあるものの,総じて雪上では雪の重みや足元の不安定さなどから下肢に大きな負荷が掛かることで,身体活動量が豊富に得られることが分かった。また,心理的効果に関しては,活動に対して身体的負荷を強く感じつつも,ゲームの楽しさや意欲を強く感じていたことも明らかになった。 今後,新しいスノーゲームのアクティビティを開発しつつ,ゲームの活動手順や準備物,安全上の留意点等を具体的にまとめ記した活動マニュアルを作成し,スノーゲームの普及及び,北海道の子ども達の体力・運動能力の向上に寄与していきたいと考えている。