著者
滝沢 優子 Yuko Takizawa
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.83, pp.15-25, 2015-12-20

小野宮実資の日記『小右記』の内容が、これを編集した養子の資平の意図による影響を受けていることを指摘する。「記録」「資(史)料」として扱われてきた漢文日記であるが、編集者の介在により『小右記』は、家の継承の過程を語る「物語」の性格を備えることとなった。有職故実書には不要な記述が、「物語」としての『小右記』の中で果たす役割を考察する。
著者
四重田陽美 Harumi Yoeda
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.92, pp.105-118, 2020-03-20

平重衡は、平清盛と平時子の三男で、かつ、清盛の末子である。平家が後白河上皇の信頼を得て、栄華を極める過程の中で育ち、父清盛の死後4年で滅びていく栄枯盛衰を目の当たりにした彼は、歴史上では、奈良の東大寺を焼き払った大将として、仏罰を背負う。『平家物語』において、罪も無い多くの人々を焼き殺し、大仏を溶かしてしまった極悪人としてのみ描くことも可能であったのに、生け捕りにされた後の彼は女性にもてる男性として描かれている事に関し、『平家物語』諸本及び『安元御賀記』等を用いて、人物像を考察した。
著者
佐藤 未央子 Mioko Satoh
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.90, pp.71-84, 2019-03

1920年代後半における谷崎潤一郎の小説や映画批評では、ドイツの俳優エミール・ヤニングス主演映画やアメリカの児童向け映画、ミス・アメリカを題材にした娯楽映画、ドキュメンタリー映画など、言及されるジャンルが多岐にわたっていた。また小説内には、映画館やテクニカラー(フィルムの部分彩色)といった、当時の映画文化が鏤められていることを確認した。
著者
趙 智英 Ji young Cho
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 = Doshisha Kokubungaku (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.92, pp.91-104, 2020-03-20

本稿では『宇治拾遺物語』の中に描かれた女性を巡って考察を行った。まず、本説話集における女性を意味する用例調査を行い、様々な女性の描かれ方を検討した。その結果、第4話の「よしなき人」である妻や、第76話のなま女房、第30話、第48話の老女などに対し、『宇治拾遺物語』の編著者は責めたり、冷笑したり、蔑んだりせず、宗教的な信仰とは異なる、登場人物の純粋さを理解した描き方をしているという傾向を明らかにした。본 논문은 『우지슈이모노가타리』속에 그려진 여성에 대해 고찰하였다.먼저,본 설화집에 나타난 여성을 의미하는 용례 조사를 통해, 다양한 여성이 그려진 설화에 대해서 분석했다. 그 결과, 제4화의 'よしなき' 아내, 제76화의 なま女房, 제30화, 제48화의 늙은 여인에 대해, 『우지슈이모노가타리』의 편저자가 비난을 하거나 냉소적인 태도는 볼 수 없으며, 종교적 신앙과는 다른 등장 인물의 순수한 믿음을 이해하는 태도로 여성을 그려낸 것임을 알 수 있었다.廣田收教授退職記念号