著者
中広 全延
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学研究紀要 (ISSN:02853744)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-14, 2008-07

指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbertvon Karajan)において、自己愛の病理を指摘できる。オーケストラを排除した後、録音したテープを編集してミスのない完璧な演奏のレコードを作るように、カラヤンは伝記作成において、具合の悪い事実はカットし都合のよいものだけを集めてきて、自己の生涯を編集して完璧な作品にしようと試みた。批判や挫折に対して異常に傷つきやすいカラヤンは、批判や挫折に直面すると自分を攻撃し妨害する集団を想定することがあったが、それは彼の被害妄想とせざるを得ないのではないか。世界が敵意に満ち自分を攻撃してくる存在でいっぱいであると恐れていたカラヤンにとって、日本は元ナチス党員として弾劾されることもなくいつ来ても大歓迎してくれる友好国であった。日本という視点からカラヤンの病理は見えない、日本という他者との関係においてそれは現れない、ということになるかもしれない。
著者
仲野 裕美 大鹿 淳子
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学研究紀要 (ISSN:02853744)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-95, 1993-03-15

最近のわが国における食生活はライフスタイルの変化や価値観の多様化などを背景に、外食及び調理食品への依存度が大幅に増加してきている。このような時代における女子短大の調理実習のあり方の方針を得ようと、本学生の毎日の食事の手づくりの実態を調査した。その結果、(1)手づくり度90%以上の食品はゆでほうれん草、白飯、おでん、鍋物、カレーライス、サラダ類、てんぷら、ハンバーグ、焼物で、日常の主要料理であった。(2)手づくりされなくなった食品はマヨネーズソース、オレンジジュース、アイスクリーム、焼肉のたれ、水羊かん、パン、春巻やぎょうざの皮、ポン酢、塩昆布、福神漬等であった。(3)テイクアウト食品や外食を利用する理由は、現代の食生活の利便性、簡便性志向が顕著にあらわれていた。(4)日常の主要料理はよく手づくりされていたが、汁物、ソース類、お茶類等の料理のベースの手づくり度は低く、調理実習内容は従来なされてきた以上に、調理の基本技術や方法の習得、本物の味を知ることに力を注ぐ必要がある。(5)個性的なライフスタイルにあわせ、臨機応変に加工食品や調理機器をとり入れ、使いこなせる能力も養わねばならない。
著者
内田 直子
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学教育実践研究紀要 (ISSN:18835996)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.1, pp.26-30, 2009

被服造形実習における、高校までの経験の実態と、短期大学で学んだことに関する満足度や技術の理解度を調査し、短期大学での被服造形実習の基礎段階の学習のあり方と今後の方向性を検討した。調査方法は、1年次の履修者に質問紙法によるアンケート調査を学習初回の4月と1年次最終回の1月に実施した。その結果、中等教育では簡易な被服製作や手芸が多く、取り扱われた種類も多様であった。短期大学で1年間実習を学んだ学生の達成感、満足感、充実感はいずれも80~90%を示した。しかし、技術の理解については、すべて一人で完璧にわかっているとは言い難い。このことから、被服造形実習の基礎段階においては、高校までの基礎部分を導入しながら、常に理解のフィードバック、並行して課題製作過程の節目毎に達成感を味わえる仕組みが必要であると思われる。
著者
丹羽 正之
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学教育実践研究紀要 (ISSN:18835996)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.10, pp.39-45, 2017

漢字の学習では部品を意識することが重要である。そのために筆者は独自の漢字ゲームを作って、授業で実践している。その内容は昨年度の研究紀要(2015年度版)にまとめたが、その論文に目を留めたNHK Eテレの番組担当者から依頼があり、テレビ番組用に新しい漢字ゲームを作ることになった。新ゲームは、部品カードを組み合わせて漢字を作るという、,これまでとは逆方向のゲームで、放送は好評であった。そのゲームを、さらに改良して,教室での授業で使えるように、マグネット式の部品カードによる漢字ゲームも考案した。ここでは放送された新ゲームと、それを教室用に改良したゲームを紹介し、部品カードの全データも示すこととする。
著者
中広 全延
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学研究紀要 (ISSN:02853744)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.23-33, 2001-03-10

セルジュ・チェリビダッケは、1912年ルーマニアで生まれ、1996年パリの自宅で死去した。20才を過ぎてから初めてベルリンにやって来てドイツ語を習得した。音楽技術上の才能には非常に恵まれていたが、ベートーヴェンやブラームスなどドイツ音楽の伝統的演奏様式には無縁の環境で育ち、またそれを身につけていなかった。彼が好んだレパートリーは、フランス印象派やロシア音楽であり、特にラヴェルは最も得意なものであった。チェリビダッケはルーマニア人であり、ドイツでは人種と国籍において異邦人であったのと同様に、ドイツ音楽の世界では異邦人であった。そして、カラヤン=ベルリン・フィルを中心とする戦後のクラシック音楽界においても異邦人であった。チェリビダッケは、生涯にわたって青年の心性を保ち続けた孤独な理想主義者であった。彼はどんなオーケストラとも安定した関係を築かず遍歴を続け彷徨した永遠の青年であった。
著者
井阪 正夫 大鹿 淳子
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
夙川学院短期大学研究紀要 (ISSN:02853744)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.35-45, 1985

1)紅茶及びレモン添加紅茶に関し,浸出時間を変えた液について,pH,可視紫外部吸収スペクトルを測定した結果,いずれの場合においても,pHはレモンを添加すると低下する。可視部吸収スペクトルのピークは認められず450〜470nmで両者のカーブは交わり,この波長より大きい範囲でレモン添加の方が高い吸光度を示す。紫外部200〜380nmではいずれも272nmにおいてピークが認められ,浸出時間が長くなるに従ってピークも順次高くなり一定の値で横ばいを示す。また各時間共,レモン添加紅茶の方が高い値を示している。2)レモン添加量を変えた場合,いずれも272nmで吸収スペクトルのピークが認められた。ピークの高さは添加量の多少に関係なくほぼ一定で,無添加に比しいずれも若干高い値を示した。3)pHを変え浸出時間を一定にした場合,可視部吸収スペクトルでは450〜470nmにおいて紅茶浸出液の吸光度カーブと塩酸添加及びレモン添加浸出液の吸高度カーブとは交わるが炭酸ソーダ添加浸出液の吸高度カーブとは交わらない。紫外部吸収スペクトルでは272nmにおいて何れも吸光度のピークが認められ,pHが低くなるに従って吸光度は高くなり,逆にpHが高くなるに従って吸光度は低くなる。4)紫外部272nmに認められたピークはタンニン酸のピークとほぼ一致したことからタンニン系物質に由来するものと結論した。5)視覚による色調に関しては,pHが低くなると一見色が淡くなる様に見えるが,1)の吸収スペクトルから見ると,pHの低下とともに吸収は460nm以上ではやや強く,以下では弱くなる(深色効果)。しかしNa_2CO_3添加によりpHを高くすると,400〜460nm程度の領域では全体として吸収は強くなって,視覚色は非情に濃くなりアルカリ側より酸側までのpHの変化による吸収の変化は単なる解離平衡では説明出来ない。レモン添加による視覚色は吸収の減少により淡くなると同時に赤→黄の方向の変化がみられるはずで,実際よく眺めてみると確かに黄色がかっていることが観察される。つまりpHの低下により色はやや淡くなると同時に黄色がかってくるのである。