- 著者
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井阪 正夫
大鹿 淳子
- 出版者
- 夙川学院短期大学
- 雑誌
- 夙川学院短期大学研究紀要 (ISSN:02853744)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.35-45, 1985
1)紅茶及びレモン添加紅茶に関し,浸出時間を変えた液について,pH,可視紫外部吸収スペクトルを測定した結果,いずれの場合においても,pHはレモンを添加すると低下する。可視部吸収スペクトルのピークは認められず450〜470nmで両者のカーブは交わり,この波長より大きい範囲でレモン添加の方が高い吸光度を示す。紫外部200〜380nmではいずれも272nmにおいてピークが認められ,浸出時間が長くなるに従ってピークも順次高くなり一定の値で横ばいを示す。また各時間共,レモン添加紅茶の方が高い値を示している。2)レモン添加量を変えた場合,いずれも272nmで吸収スペクトルのピークが認められた。ピークの高さは添加量の多少に関係なくほぼ一定で,無添加に比しいずれも若干高い値を示した。3)pHを変え浸出時間を一定にした場合,可視部吸収スペクトルでは450〜470nmにおいて紅茶浸出液の吸光度カーブと塩酸添加及びレモン添加浸出液の吸高度カーブとは交わるが炭酸ソーダ添加浸出液の吸高度カーブとは交わらない。紫外部吸収スペクトルでは272nmにおいて何れも吸光度のピークが認められ,pHが低くなるに従って吸光度は高くなり,逆にpHが高くなるに従って吸光度は低くなる。4)紫外部272nmに認められたピークはタンニン酸のピークとほぼ一致したことからタンニン系物質に由来するものと結論した。5)視覚による色調に関しては,pHが低くなると一見色が淡くなる様に見えるが,1)の吸収スペクトルから見ると,pHの低下とともに吸収は460nm以上ではやや強く,以下では弱くなる(深色効果)。しかしNa_2CO_3添加によりpHを高くすると,400〜460nm程度の領域では全体として吸収は強くなって,視覚色は非情に濃くなりアルカリ側より酸側までのpHの変化による吸収の変化は単なる解離平衡では説明出来ない。レモン添加による視覚色は吸収の減少により淡くなると同時に赤→黄の方向の変化がみられるはずで,実際よく眺めてみると確かに黄色がかっていることが観察される。つまりpHの低下により色はやや淡くなると同時に黄色がかってくるのである。