著者
富永 真琴
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

マウス腹腔の肥満細胞の温度感受性TRPM2チャネルが消化管の機能を調節していることが分かった。また、過酸化水素によってTRPM2の熱活性化温度閾値が低下(感作)して機能増強につながることが明らかになり、酸化されるTRPM2のメチオニン残基を同定した。この増強機構はマウス腹腔マクロファージのサイトカインの産生や微少な温度上昇による貪食能の増強に関与することが分かった。さらに、このTRPM2の感作機構がマウス膵臓β細胞からのグルコース依存性のインスリン分泌にも関わることが判明した。
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ミジンコ類(枝角目甲殻類)は世界中の淡水に生息し、扱い易いことから生態学の研究に用いられてきた。我々は化学物質などの環境要因に応答する遺伝子を網羅的に解析するエコ(トキシコ)ゲノミクスを開始しているが、今後詳細に遺伝子機能解析を進めるには、導入遺伝子の発現を自在に制御することが必要不可欠である。本研究では遺伝的な交配実験系の開発について解析を行い、ミジンコは、複数の外部環境シグナルを統合して、単為生殖と有性生殖を切り替えることが分かった。また遺伝子導入法に改良を加えてその効率化を行った。これらの知見は、今後トランスジェニックミジンコ作出するための基礎的な知見として応用可能である。
著者
西田 基宏
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は硫化水素(H2S/HS-)が心筋梗塞後に生成される親電子物質を求核置換反応により直接消去し,慢性心不全を抑制する可能性を明らかにした.しかし,H2S/HS-が求核シグナルとして働く分子実体かどうかについては不明であった.本研究では、内因性活性硫黄の分子実体を明らかにし,硫黄蓄積を主眼とした慢性心不全治療法の有効性を確立させることを目的とした.その結果,タンパク質などに含まれるシステインのポリ硫黄鎖が活性硫黄の分子実体として働くことが明らかとなった.さらに,ポリ硫黄を多く含む食品をマウスに摂取させることで,H2S/HS-よりもはるかに強い心筋保護効果が得られることを確認した.
著者
奥村 久士
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

タンパク質のシミュレーションが難しい理由は,自由エネルギー曲面に多くの極小状態があるからである.この問題を解決するために提案されてきた手法の1つがレプリカ交換法である.本研究では狙った構造に近づくように力をかける「へリックス・ストランドレプリカ交換法」を提案し,ペプチドに応用した.その結果,この方法では通常のレプリカ交換法よりも天然構造により近づけ,折りたたみにより成功した.さらに「レプリカ置換法」を提案した.この手法では2つのレプリカ間だけで温度を交換するのではなく,3つ以上のレプリカ間で温度を置換する.この方法を用いることでレプリカ交換法よりも効率的なサンプリングを実現できることを示した.
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

周生期のマウスへのエストロゲン投与に、生殖器官に不可逆的な影響が現れる。この誘導には主としてエストロゲン受容体αが関与していることが明らかとなった。さらに、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣で不可逆的に高発現している遺伝子を同定した。これらの遺伝子のメチル化状態を調べたところ、細胞増殖に関連する遺伝子のメチル化状態には差が認められなかったが、エストロゲン受容体αの活性を制御すると思われる遺伝子のメチル化状態が高く、この遺伝子の発現は低下していたことから、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣ではエストロゲン受容体の働きを抑制する遺伝子にメチル化が入り、この遺伝子の発現が低下することにより、恒久的なエストロゲン受容体αの活性化、リン酸化が起こり、細胞増殖関連の遺伝子が恒久的に発現し、卵巣非依存の細胞増殖が起こっていると考えられる。