著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ミジンコ類(枝角目甲殻類)は世界中の淡水に生息し、扱い易いことから生態学の研究に用いられてきた。我々は化学物質などの環境要因に応答する遺伝子を網羅的に解析するエコ(トキシコ)ゲノミクスを開始しているが、今後詳細に遺伝子機能解析を進めるには、導入遺伝子の発現を自在に制御することが必要不可欠である。本研究では遺伝的な交配実験系の開発について解析を行い、ミジンコは、複数の外部環境シグナルを統合して、単為生殖と有性生殖を切り替えることが分かった。また遺伝子導入法に改良を加えてその効率化を行った。これらの知見は、今後トランスジェニックミジンコ作出するための基礎的な知見として応用可能である。
著者
堀口 敏宏 太田 康彦 森下 文浩 井口 泰泉
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イボニシから脊椎動物のRARとアミノ酸配列の相同性が比較的高いRAR様配列(イボニシRAR)が単離された。All-trans レチノイン酸(ATRA)添加時のウエスタンブロットにより、イボニシRARタンパクは発現したが、転写活性は誘導されなかった。イボニシRARとヒトRARαのリガンド結合部位を融合させATRA, 9-cis レチノイン酸, 13-cis レチノイン酸, All-trans レチノール添加時でもイボニシRARの転写活性は誘導されず、イボニシRARのDNA結合部位をヒトRARαリガンド結合部位と融合させると転写活性が誘導された。イボニシRARとRXRは相互作用すると考えられた。
著者
堀口 敏宏 太田 康彦 井口 泰泉 森下 文浩
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

イボニシ(Thais clavigera)を中心に、RXRに関する生物学的特徴と、ペニス及び輸精管の分化・成長・形態形成との関係を解析した。イボニシRXRには2つのアイソフォームが存在し、両者で転写活性能が異なること、並びに9-cisレチノイン酸(9cRA)、トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT)により転写活性の誘導がみられることなどを明らかにした。イボニシとバイ(Babylonia japonica)における生殖腺の分化及び生殖輸管の発達を組織学的に調べ、明らかにした。イボニシの神経ペプチドに関する基礎知見を得た。イボニシとバイにおける脊椎動物様ステロイドの検出を試みるとともに、ステロイド受容体が見出されないこと、アロマターゼ阻害剤とテストステロンでインポセックスの発症・増進が見られないことを明らかにした。
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

周生期のマウスへのエストロゲン投与に、生殖器官に不可逆的な影響が現れる。この誘導には主としてエストロゲン受容体αが関与していることが明らかとなった。さらに、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣で不可逆的に高発現している遺伝子を同定した。これらの遺伝子のメチル化状態を調べたところ、細胞増殖に関連する遺伝子のメチル化状態には差が認められなかったが、エストロゲン受容体αの活性を制御すると思われる遺伝子のメチル化状態が高く、この遺伝子の発現は低下していたことから、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣ではエストロゲン受容体の働きを抑制する遺伝子にメチル化が入り、この遺伝子の発現が低下することにより、恒久的なエストロゲン受容体αの活性化、リン酸化が起こり、細胞増殖関連の遺伝子が恒久的に発現し、卵巣非依存の細胞増殖が起こっていると考えられる。