- 著者
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松下 暢子
- 出版者
- 川崎医科大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
1.ニワトリB細胞株DT40からジーンターゲティングによってFANCG、FANCD2、FANCCの欠損細胞を作製した。これらの欠損細胞はいずれも、クロスリンク薬剤感受性などヒトのFA患者細胞と類似した表現型を示し、FAのモデルと考えて適切と思われた。2.以下のアッセイを用いて相同組み換え(HR)におけるFA遺伝子の役割を検討した。(1)ジーンターゲティング効率をいくつかの遺伝子座へのターゲティングベクターを用いて解析すると、FANCGでは数10%程度の軽度の低下、FANCD2では90%以上のはっきりした低下が見られた。(2)染色体にノックインした人工組み換え基質SCneoに制限酵素I-SceI発現によって二重鎖切断を誘導できる。その修復がHRによってただしくおこなわれれば、活性のあるneo耐性遺伝子が再構成され、G418存在下に培養しコロニー形成数をカウントする事によりHRによる修復を測定可能である。Neo耐性コロニー数はFANCG欠損で9分の1、FANCD2欠損で約20分の1に低下していた。このdefectはニワトリFANCG、FANCD2の発現によって正常化可能であった。(3)放射線照射0〜3時間後にM期に入って来る細胞はS期の末期からG2期にかけて照射されたものと考えられる。この時期に行われるDNA二重鎖切断修復は主にHRによるものであることがわかっている。このとき見られる染色体断列をカウントするとFA遺伝子欠損細胞では野生型に比べ明らかに増加が見られた。このデータはFA遺伝子のHRにおける役割と矛盾しないと言える。以上のデータは、FA遺伝子のHR修復における役割を明確に示したはじめてのものである。