著者
山内 明 栗林 太 山内 三爵子 金ヶ嵜 史朗 土屋 朋子 小日置 佳代子 板谷 益美
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

炎症性疾患の発症機構を解明するために、炎症反応で重要な好中球の走化性惹起因子に対する遊走パターンを解析した。好中球のfMLPおよびIL-8への遊走の軌跡は直線状であること、LTB4およびPAFへの遊走の軌跡は蛇行することを確認した。fMLPおよびIL-8への直線状の遊走では単極性で安定的な形態が、LTB4, およびPAFへの蛇行する遊走では多極性で不安定な形態が関連していた。また、これら4種のリガンドの強さはfMLP > IL-8 >> LTB4 = PAFであることが明らかとなった。これらの知見は今後の炎症コントロールおよび抗炎症剤の開発などに役に立つものと思われる。
著者
樋田 一徳
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、報告者のこれ迄の解析結果を基盤として、形態的特徴のみならず、化学的、電気生理学的側面からの機能を同定した嗅球ニューロンのシナプス結合を解析したものである。具体的には、米メリーランド大学・Michael T.Shipley教授の研究グループと共同実験により、tyrosine hydroxylase (TH)、glutamic acide decarboxylase (GAD)といった、嗅球ニューロンの代表的な化学マーカーをGFP標識したトランスジェニックマウスを用い、パッチクランプ法により各ニューロンの刺激反応性を比較検討した。その結果、入力の嗅神経を刺激した結果、スライス嗅球における介在ニューロン、投射ニューロンの電気生理学的・薬理学的特性が多様であり、また同じ化学的性質を有するニューロン群の中でも、嗅神経刺激に対する反応性に少なくとも2つのタイプがある事などがわかった。更に記録後にbiocytinを注入してニューロンの全体像を明らかにし、更にTH、GAD65ニューロンについて、抗GFP抗体を用いて免疫電顕によりシナプス結合を解析し、シナプス入力の頻度が異なることがわかった。遺伝学的に同定された化学的性質、形態的特徴、シナプスなどを対応し、異種のニューロン問での違いを明らかにする事により、ニューロンの多様性に基づく嗅覚神経回路の精巧さが示された。
著者
松下 暢子
出版者
川崎医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.ニワトリB細胞株DT40からジーンターゲティングによってFANCG、FANCD2、FANCCの欠損細胞を作製した。これらの欠損細胞はいずれも、クロスリンク薬剤感受性などヒトのFA患者細胞と類似した表現型を示し、FAのモデルと考えて適切と思われた。2.以下のアッセイを用いて相同組み換え(HR)におけるFA遺伝子の役割を検討した。(1)ジーンターゲティング効率をいくつかの遺伝子座へのターゲティングベクターを用いて解析すると、FANCGでは数10%程度の軽度の低下、FANCD2では90%以上のはっきりした低下が見られた。(2)染色体にノックインした人工組み換え基質SCneoに制限酵素I-SceI発現によって二重鎖切断を誘導できる。その修復がHRによってただしくおこなわれれば、活性のあるneo耐性遺伝子が再構成され、G418存在下に培養しコロニー形成数をカウントする事によりHRによる修復を測定可能である。Neo耐性コロニー数はFANCG欠損で9分の1、FANCD2欠損で約20分の1に低下していた。このdefectはニワトリFANCG、FANCD2の発現によって正常化可能であった。(3)放射線照射0〜3時間後にM期に入って来る細胞はS期の末期からG2期にかけて照射されたものと考えられる。この時期に行われるDNA二重鎖切断修復は主にHRによるものであることがわかっている。このとき見られる染色体断列をカウントするとFA遺伝子欠損細胞では野生型に比べ明らかに増加が見られた。このデータはFA遺伝子のHRにおける役割と矛盾しないと言える。以上のデータは、FA遺伝子のHR修復における役割を明確に示したはじめてのものである。