著者
村上 陽子
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年博士課程)
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.117-126, 2020-03-31

米飴は,もち米と麦芽で作られる,我が国の伝統的な麦芽糖化飴(麦芽水飴)である。米飴は水飴の一つであり,和菓子等の材料として用いられる。伝統的製法においては,米飴は,材料の少なさ(もち米と麦芽),豊かな風味,琥珀色などを特徴とする。一方,現在では,水飴は,デンプンに精製酵素を加えて工業的に作られ(酵素糖化飴),無色透明で大半が水分と糖質である。そのため,米飴の伝統的製法の衰退は,食文化の危機と考えられる。そこで本研究では,我が国の伝統的な食文化の一つである米飴に着目し,その製法と食嗜好性について検討した。米飴調製用の米は,こがねもちとヒメノモチを用い,麦芽添加量は米100gに対して15~35%まで変化させ,各種成分を測定した。麦芽添加量の増加に伴い,糖度,マルトース,いずれも経時的に増加し,4~10時間で平衡に達した。食嗜好性は,米の品種と麦芽添加量により異なっており,ヒメノモチ15%が最も嗜好性が高かった。
著者
山田 丈美
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年博士課程)
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.77-88, 2018-03-31

本研究では、人間理解に関わるコンピテンシー育成をめざし、教科横断的指導を手だてとする授業とカリキュラムについて検討した。具体的には、合科的指導として行った国語科と図画工作科の実践2例について、教科横断的指導としての効果検証を試みた。1例目の実践では、言語と絵画を学習教材として、二次元(面)の静的な動作から四次元(空間・時間を含む)の動的な動作化へと児童らが自発的に学習活動を発展させた。1例目をふまえ、四次元での動作化に重点を置いて授業構成した2 例目の実践では、人物の動作に関わる言語及び絵画を対応させる事前テストと事後テストの結果において有意差が見られ、授業効果が確認できた。以上の実践2 例から、国語科と図画工作科の教科横断的指導が人間理解に関わるコンピテンシー育成に効果を及ぼすことが明らかになった。その結果を基に、本稿最後に、人間理解へのアプローチをテーマとする教科横断的なカリキュラムモデルを提示した。
著者
大西 俊弘
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年博士課程)
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.117-125, 2018-03-31

三角形の3つの頂点のうち、2つの頂点を固定し、もう1つの頂点をある曲線上で動かしたとき、三角形の5心がどのような軌跡を描くかについては、古くから考察されてきた。しかし、内心や傍心については、特別な場合を除いては、軌跡が2次曲線などになることがないため、代数的な方法で軌跡を求めることは困難である。近年、動的幾何ソフトが発達し、軌跡を描くだけでなくその方程式も求められるようになってきたが、内心と傍心の軌跡の方程式を求めることはできない。本研究では、曲線上を動く点から内心や傍心への座標変換式を求め、その逆変換式を利用することで、軌跡の方程式を求めることに成功した。その座標変換式は複雑な形となるが、頂点が楕円や双曲線上を動く場合について考察することにより、内心と3つの傍心の間には美しい関係が存在することを明らかにした。その結果は、頂点が動く曲線の種類を問わず、普遍的なものである。本研究は、SSH校等で実施予定の「理数探究」向けの教材開発を目指すものである。
著者
伊藤 佐奈美
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年博士課程)
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.13-22, 2017-03-31

本研究では, 特別支援学校における軽度知的障害生徒の学校適応及び職業教育の充実に資するため, 特別支援学校に在籍する軽度知的障害生徒を対象に, 進路先決定の状況や, 特別支援学校入学後の目標設定及び学校生活の満足度等について質問紙調査を実施した。調査から, 軽度知的障害生徒の多くが, 特別支援学校で学ぶことは将来の生活や進路に役立つであろうという理由から, 特別支援学校高等部への就学を選択し入学してきており, 学校生活上の目標設定においても就職することなど社会自立することを挙げることが多いことが分かった。また, 特別支援学級に在籍していた生徒が多い学年の満足度が高いことが分かった。さらに, 1年生では漠然と就職することや, 社会自立するという目標をもつことが多いが, 学年が進むにつれて, 生徒は自分自身の課題について認識するようになり, より具体的な目標設定を行うようになることが認められた。今回の調査で得られた知見をもとに, 今後さらに, 生徒の自己理解を深め, 学校生活さらには将来の社会生活への適応を高められるような指導を追求していくことが重要だと考えている。
著者
中川 右也
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年博士課程)
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.59-75, 2018-03-31

本研究は、近年の教育現場におけるアクティブラーニング型授業に応じた、帰納的句動詞学習法を提案するものである。句動詞習得は、動詞と不変化詞の部分の総和から、句動詞全体の意味が予想できないというゲシュタルト性により困難を伴うこともあるが、理論言語学の1 つ、認知言語学の知見を応用し、概念メタファという意味の有縁性に着目することによって、納得しながら定着が図れる学習法を試みる。語彙習得においては、教師主導型の演繹的学習が多い中、帰納的句動詞学習へと転換できるよう、ジグソー法を援用した学習法を設計し、その有用性について先行研究と調査結果の考察を交えながら示す。本研究は、認知言語学と第二言語習得の観点からの外国語教授法とを統合した教科学と、学習科学や心理学などを融合し、新たな視点を持った教科開発学という研究分野の構築を目指すものである。