- 著者
-
西田 泰民
- 出版者
- 一般社団法人 日本考古学協会
- 雑誌
- 日本考古学 (ISSN:13408488)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.14, pp.89-104, 2002-11-01 (Released:2009-02-16)
- 参考文献数
- 27
考古学の初歩として,土器の用途は器形から説明されることが多く,また器形の分類方法についての基準案も提案されてきた。果たして,器の名称によってイメージされる形態にどの程度のバリエーションがあるのかを知るために,こころみに少しずつ器形を変化させたカードを作成し,かめ・つぼ・さら・わんを判別させるアソケートを行ってみた。その結果考古学を学んだ者とそうでない者,また性別や年代別で差が見られた。数は多くないが,民族誌調査による器形と用途についての考察を参照すると,器形と器形の名称およびその用途は一致しないことが少なくない。また土器をどのように認識・分類するかは,日頃どの程度土器に接するか,さらに社会的ステータスによっても異なることが知られる。器形のみからの用途の類推やその妥当性は分析者の文化的・社会的背景に多く依存することはいうまでもない。したがって,器形の分類はシステマティックであることは,考古学分析の上で要求されるが,あくまでそれは考古学的分類であって,使用者の分類とは異なる。それを根拠に用途論に展開させるのは適当でないということであり,方法上の限界を認識していなければならない。