- 著者
-
塩入 俊樹
- 出版者
- 日本不安症学会
- 雑誌
- 不安症研究 (ISSN:21887578)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.1, pp.10-19, 2018-10-31 (Released:2018-12-28)
- 参考文献数
- 22
本稿では,「DSM診断基準における不安症の変遷」と題して,米国精神医学会の公式診断基準であるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の最初の版であるDSM-Iが世に出た1952年から,現在使われている最新のDSM-5が出版された2013年まで,約60年にわたる不安症(AD)の概念・分類の変遷について,述べる。ADはDSM-I(1952)やDSM-II(1968)までは,それぞれ「精神神経症反応」,「神経症」として分類されていた疾患群の一部で,DSM-III(1980)に初めて用いられた疾患名である。当時は,強迫症(OCD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)なども不安症に含まれていたが,様々な紆余曲折を経て,両者はDSM-5(2013)において,ADとは別の独立した疾患群となり,現在のADの形に落ち着いたと言ってよい。その変遷には,各疾患の病態メカニズムの相違等も関連しているため,最後に,AD, OCD, PTSDについての生物学的病態についても筆者の考えを述べてみたい。