著者
森本,研吾
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究ノート
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, 1993-02-28

潮間帯の物質収支研究を,さまざまな形態の海岸線で比較する形でまとめた.礫浜,砂浜,干潟,塩性沼沢の四者を比較した.干潟や砂浜は全窒素で数10gNm^<-2>yr<-1>とほぼ同レベルの除去源になっている.有機炭素や全リンは場所により変動が大きいが,いずれも除去源となっている.ただし,一般の有機物に比べN:P比が小さい傾向にある.一方,塩性沼沢は有機炭素については生産傾向を示すが,栄養塩については中立的で周囲への影響が小さい.また,礫浜は砂浜とは大きく傾向が異なり,Pはむしろ発生源になっている.このように,同じ海岸線でも,形態や構成素材などの条件の差により,物質収支が大きく異なってくることより,今後海岸線の保全を考えていく上で,物質収支にも注目していく必要があると思われる.それに対して,現在では物質収支の測定例そのものが少なく,今後より詳しく調査していく必要があると思われるが,その際留意するべき点について考えてみた.
著者
堀口 敏宏 趙 顯書 白石 寛明 柴田 康行 森田 昌敏 清水 誠 陸 明 山崎 素直
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.7-13, 2000-02
被引用文献数
6

船底塗料などとして使用されてきた有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT))によって,ごく低濃度で特異的に誘導される腹足類のインポセックスのわが国における経年変化と現状の概略を種々の野外調査結果などに基づいて記述した.1990~1991年の汚染レベルに比べると近年の海水中の有機スズ濃度は低減したと見られるものの,イボニシの体内有機スズ濃度の低減率は海水中のそれよりも緩やかであり,またその低減率が海域により異なっていた.また環境中の有機スズ濃度の相対的な減少が観察されるものの,イボニシのインポセックス発症閾値をなお上回る水準であるため,インポセックス症状については全国的に見ても,また定点(神奈川県・油壺)観察による経年変化として見ても,十分な改善が認められなかった.この背景には,国際的には大型船舶を中心になお有機スズ含有塗料の使用が継続していることとともに,底泥からの再溶出の可能性及びイボニシの有機スズに対する感受性の高さなどが関連していると推察された.
著者
柳 哲雄
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究ノート
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.191-196, 1988
著者
青木 優和 田中 克彦 熊谷 直喜 伊藤 敦 サバン ベギネール 小松 輝久
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.137-140, 2009

東シナ海から黒潮流域圏を漂流する流れ藻の葉上動物について2002年から2007年の春期に白鳳丸および淡青丸での航海調査を行った.沖合域で採集された流れ藻では,採集場所に拘らず葉上動物群集の組成が類似する傾向があり,群集多様度はガラモ場葉上動物相と比して一般的に低く,沖合のものほど低い傾向が認められた.優占動物上位は主に等脚類と端脚類で,最も卓越し海域と流れ藻の種類によらず出現した種がナガレモヘラムシだが,海域によってその個体群組成は異なった.端脚類のうちヨコエビ類で優占したのは基質藻体を食するヒゲナガヨコエビ科およびモクズヨコエビ科の1-2種だった.ワレカラ類でも沖合では特定の1-2種が優占し,とくに東シナ海で卓越したCaprella andreaeでは,その個体群組成から過大な魚類捕食圧が示唆された.流れ藻葉上動物群集の組成や個体群構造の特徴は,流れ藻の漂流期間や周辺環境を知るための手がかりとなる可能性がある.
著者
清野,聡子
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, 2002-02-22

現在,「環境修復」や「環境復元」が注目され,沿岸域についても人工干潟や藻場の造成なども行われている.本研究では,大分県の守江湾を対象として絶滅危惧生物カブトガニ(Tachypleus tridentatus)の生息と守江湾の環境変遷の関係について考察し,生息場の修復のためのミティゲーションについて述べた.干潟の環境調査では,一般に干潟が空間的に広くしかも干潮時にのみ出現するために網羅的調査には限界がある.このことから,空中写真を利用した効果的な環境調査法を開発した.空中写真により干潟の微地形分類を精度よく行うことができた.また洪水が干潟に及ぼすインパクトを調べるために,洪水前後に詳細測量を行って干潟の地形変化量を把握し,それと生物の生息条件の関係について調べた.守江湾への流入河川である八坂川では,2000年に河口から2〜4km区間に残されていた感潮域蛇行部の捷水路事業が行われたが,河川改修による下流への影響として洪水時の流速の増大が見込まれ,それに起因して河口部のカブトガニ産卵地砂州の流出可能性が指摘された.そこで産卵地の代替適地を選定し養浜を行った.環境対策のために,他の流域や沿岸からの土砂の使用を極力避けるという思想のもと,養浜材料には近傍の河道掘削土砂を活用した.
著者
柳,哲雄
出版者
日本海洋学会沿岸海洋研究部会
雑誌
沿岸海洋研究ノート
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, 1988-02-29