著者
Ng Peter K.L. 諸喜田 茂充
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
Crustacean research (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-7, 1995-12-15
被引用文献数
2

腹部や付属肢の特徴から,石垣島・西表島産の陸生サワガニの新属(Ryukyum)がヤエヤマヤマガニNanhaipotamon yaeyamense Minei,1973に対し新設された.新属は腹板の構造,第3顎脚,雄の腹部,雄の第1腹肢・第2腹肢等にNanhaipotamonとの相違が見られる.ヤエヤマヤマガニは山間部の陸域に生息し,放卵期に湿地や水辺に集まる傾向がある.大卵を数少なく産む.
著者
Tavares Marcos de Mendonga Jr. Joel Braga
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
Crustacean research (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.25, pp.151-157, 1996-12-20

西大西洋におけるCharybdis helleriiは,カリブ海(1987,1988) ,北東ヴュネズェラ(1987),およびフロリダ東部(1995)において外来種として発見されている.新たに本種はブラジルの南東部沿岸(リオデジャネイロ)で記録された.また,ブラジルにおける本種の出現ならびに他の海産十脚類の7外来種について論議した.
著者
武田 正倫
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.7, pp.69-99c, 1976-02

オウギガニ科の種の同定は難かしいことに定評があるが,これは種類が多く,形態的にも変化に富んでいるため,近縁種を見い出すことに相当の経験を必要とするからでろあう。種類が多いことは当然古来からの文献が多いことも意味し,各種の異名の整理や文献の入手もなかなか思うにまかせない。これらの前提条件がある程度かなえられれば,種の同定自体は決して難かしくはないが,属以上の系統分類には多くの種を調べる必要があり,困難な問題が多い。オウギガニ科の属に関しては,最近の傾向として,パリ自然史博物館のD.GUINOT女史やすでに引退したR.SERENE博士が主として追及しているように,雄の第1腹肢による細分が著しい。さらに上位の体系として口腔部に位置する出水溝の形成の有無によって,無溝類と有溝類に分けられることが多い。しかし,これは亜科よりももっと広い意味をもっていることは明らかで,他の科と比較すれば,それぞれXanthidaeとPilumnidaeとして科に昇格させることも可能ではないかとさえ考えられる。オウギガニ科に関してもっとも重要な貢献をしているALCOCK(1898)は無溝類を3亜科に,有溝類を4亜科に細分しているが,有溝類はその後BALSS(1932)によって3亜科にまとめられている。本報告ではパラオ諸島産のカニ類にもとづいて,1試論として14亜科に細分したが,とくに無溝類の亜科に異論があるものと思われる。Actaeinae, Carpiliinae, Chlorodiinae, Cymoinae, Etisinae, Euxanthinae, Galeninae,XanthinaeおよびZosiminaeの9亜科は無溝類の特徴を,Eriphiinae, Pilumninae, Polydectinae, PseudoziinaeおよびTrapeziinaeの5亜科は有溝類の特徴をもつ。これらを一応系統順に解説するが,ここでは紙面の都合によりCarpilinaeとXanthiinaeのみを扱っている
著者
渡邊 精一
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
Cancer : 会員連絡誌 (ISSN:09181989)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.37-40, 1997-05
参考文献数
10
被引用文献数
6
著者
大森 寛史 和田 哲 五嶋 聖治 中尾 繁
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
Crustacean research (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.24, pp.85-92, 1995-12-15
被引用文献数
7

函館湾葛登支岬の潮間帯転石城において,ホンヤドカリの貝殻利用状況と貝殻資源量について調査を行った.コドラート採集の結果,巻貝の出現頻度に比べクロスジムシロガイとタマキビガイを利用している個体の割合が有意に高いことがわかった.ヤドカリの貝殻の種類に対する選好性実験では,クロスジムシロガイを最も好んでいることから,貝殻の種類に対する選好性が貝殻利用状況に影響を与える1つの要因となっていることが示唆された.採集された個体の貝殻サイズの適合度(SAI)はヤドカリのサイズの増加に伴って減少する傾向が認められた.貝殻の種類別にSAIと貝殻資源量との関係についてみると,貝殻資源量が最も多いと思われるサイズの個体は比較的適した大きさの貝殻(SAI=1)を持っており,それより大きい個体ではSAIは1より小さく,それよりも小さい個体ではSAIは1より大きい値となることが明らかになった.すべての個体についてみると,いずれの種類の貝殻を利用している個体も比較的通した貝殻を利用していた.ヤドカリサイズの増加に伴って利用している貝殻の種類が変化していたことから,貝殻の種類を変えることによって,全体としては比較的高いSAIを維持していることが示唆された.