著者
有賀 秀子 高橋 セツ子 倉持 泰子 浦島 匡 筒井 静子
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.253-260, 1988-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

古代の乳製品といわれる生酥,熟酥,醍醐につき,「本草網目」(李時珍著)の記述を根拠としてその再現を試みた.製造は,(加熱濃縮)-(静置•凝固層分離)-(攪拌再加熱)-(静置固化)-(オイル溶離)の様式に従い行なった.凝固層分離により生酥を得,再加熱濃縮により熟酥を得た.熟酥を冷却固化し孔をうがって室温に放置し,自然に溶離したオイル状物質を醍醐と判断した.製造過程で得られた知見は以下に示す.生酥は,生乳を静かに攪拌しながら83~85°Cで120分程度加熱し,一夜静置後凝固層を集めることによって得た.その成分組成は固形分が約60%で,タンパク質含量対脂肪含量比は約1:4,芳香性のクリームよう食品であった.熟酥は,生酥を湯煎により20分程度加熱することにより得られ,鮮やかな黄色の半流動体で,ゼリー強度,粘性率ともにマヨネーズに比べはるかに大きいが,赤色辛みそより小さく,光沢のある脂肪性の食品であった.固形分含量は約80%を占め,タンパク質含量対脂肪含量比は1:5.5前後であった.熟酥は一夜静置し冷却固化した後,孔をうがっておくと,試料温度25°C以上で透明な明るい鮮やかな黄色のオイル状物質が孔の周縁に溶離してきた.このオイル状物質を「本草網目」の記述にもとづく醍醐であると判断した.本試験により得られた醍醐は,バターオイルよう食品で,製造様式からみて,モンゴルの乳製品シャルトスに類似した食品と考えられる.一方,酥については,生酥および熟酥はそれぞれ醍醐製造の第2段階および第3段階で得られる中間産物で,現代の乳製品中では,他にその類似品は見当らない.
著者
有賀 秀子 高橋 セツ子 倉持 泰子 浦島 匡 筒井 静子
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.253-260, 1988
被引用文献数
1 1

古代の乳製品といわれる生酥,熟酥,醍醐につき,「本草網目」(李時珍著)の記述を根拠としてその再現を試みた.製造は,(加熱濃縮)-(静置•凝固層分離)-(攪拌再加熱)-(静置固化)-(オイル溶離)の様式に従い行なった.凝固層分離により生酥を得,再加熱濃縮により熟酥を得た.熟酥を冷却固化し孔をうがって室温に放置し,自然に溶離したオイル状物質を醍醐と判断した.製造過程で得られた知見は以下に示す.生酥は,生乳を静かに攪拌しながら83~85°Cで120分程度加熱し,一夜静置後凝固層を集めることによって得た.その成分組成は固形分が約60%で,タンパク質含量対脂肪含量比は約1:4,芳香性のクリームよう食品であった.熟酥は,生酥を湯煎により20分程度加熱することにより得られ,鮮やかな黄色の半流動体で,ゼリー強度,粘性率ともにマヨネーズに比べはるかに大きいが,赤色辛みそより小さく,光沢のある脂肪性の食品であった.固形分含量は約80%を占め,タンパク質含量対脂肪含量比は1:5.5前後であった.熟酥は一夜静置し冷却固化した後,孔をうがっておくと,試料温度25°C以上で透明な明るい鮮やかな黄色のオイル状物質が孔の周縁に溶離してきた.このオイル状物質を「本草網目」の記述にもとづく醍醐であると判断した.本試験により得られた醍醐は,バターオイルよう食品で,製造様式からみて,モンゴルの乳製品シャルトスに類似した食品と考えられる.一方,酥については,生酥および熟酥はそれぞれ醍醐製造の第2段階および第3段階で得られる中間産物で,現代の乳製品中では,他にその類似品は見当らない.
著者
菊地 和美 菅原 久美子 木下 教子 酒向 史代 坂本 恵 高橋 セツ子 土屋 律子 芳賀 みづえ 藤本 真奈美 村上 知子 村田 まり子 山口 敦子 山塙 圭子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】年中行事や通過儀礼を行うハレの日には、食事も日常とは区別され、各家庭や地域で独自の習慣がみられている。食生活が多様化する中、地域における年中行事や伝統食を大切にし、次の世代への継承にむけた取り組みが推進されるようになってきた。そこで、本研究は北海道の行事食と儀礼食について、親子間(学生とその親)からみた認知状況や摂食状況などの実態把握を行い、地域性を明らかにすることを目的として検討した。【方法】調査は日本調理科学会特別研究(平成21~23年度)に基づき、北海道に居住する親181名と子181名(計362名)を対象として、調査時期は平成21年12月~22年8月に実施した。データは単純集計および親子間によってクロス集計を行い、χ2検定により分析した。【結果】親子間で認知・経験が一致する回答は、行事食が74.0%、儀礼食は49.8%であった。行事食と儀礼食を認知している割合は親が子よりも多く、親子間で有意差がみられたのは盂蘭盆、お七夜、百日祝い、初誕生、厄払いであった(p<0.01)。行事食と儀礼食の経験がある割合も親が子よりも多く、有意差がみられたのは春分の日、端午の節句、盂蘭盆、土用の丑、お月見、秋分の日、出産祝い、お七夜、百日祝い、初誕生、成人式、結納、婚礼、厄払い、長寿であった(p<0.01)。北海道の正月料理のうち、親子間で「現在、家庭で作る」という回答が一致していたのは、たこ刺身が7組(親子間一致なし12組)、くじら汁が2組(親子間一致なし3組)、いずしが2組(親子間一致なし2組)であった。今後はさらに、北海道における特徴的な行事食・儀礼食の親子間による伝承を検討する必要性が示唆された。