著者
平本 毅
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.101-119, 2011

会話の中で一定のまとまりをもった話題上の話が展開し、その話題についての話が終了しうると参与者が指向している場所(話題の境界)には、「話題アイテム(名詞や名詞句で表象される話題)」が単体で、あるいは助詞を伴って置かれることがある。このような振る舞いを、本稿では「話題アイテムの掴み出し」と呼ぶ。本稿の目的は、「掴み出し」がはたす話題の管理上の仕事を会話分析により記述することである。「掴み出し」は、「呟かれた」ものとして聞くことが可能なように発される。そしてこの「呟き」が話題の境界において行われるために、「掴み出し」はそれ自体では次の発話スロットにたいして順番取得組織上の制約も、行為連鎖組織上の制約も課さない。その代わりに、実際には話題が途切れうるような箇所で、「掴み出し」に続けて①[無標な発話]を置くことにより、スムーズに話題が「継続」したかのような装いが、②[掴み出された話題アイテムの繰り返し+無標な発話]を置くことにより、スムーズに話題が「共一選択」されたかのような装いが、③[掴み出された話題アイテムの繰り返し+有標な発話]を置くことにより、先行発話に含まれていたアイテムを「接線的共一選択」したような装いが与えられる。言いかえれば「掴み出し」は、「潜在的に言及しうる話題」(Schegloff& Sacks 1973: 300)を会話にフィットさせるための足がかりを築く役割を果たしている。
著者
平本 毅
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
no.5, pp.101-119, 2011