著者
永井 真由美
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.34-40, 2005-11-01

本研究では,認知症高齢者の家族介護力評価指標の作成とそれに関連する要因を明らかにすることを目的とした.家族の介護力について構成概念を規定し,42項目の質問肢を作成した.認知症高齢者の介護者123名に自記式質問紙調査を行い(4件法,0〜3得点化),回答に偏りの大きい項目,類似項目,項目-全体相関係数の低い項目,因子負荷量の少ない項目を削除し最終的に20項目を選定した.介護力合計得点と各項目の相関係数は0.483から0.813,Cronbachのα係数は0.921であった.因子分析では固有値1以上である認知症ケア能力,介護生活を安定させる能力,関係調整能九自己管理能九QOL向上能力の5因子を抽出し,累積因子寄与率は56.8%であった.これらの因子はあらかじめ規定した構成概念とほぼ一致していた.介護力得点の関連要因を分析した結果,介護者の健康状況,認知症高齢者の自立度,デイケア/デイサービスの利用,認知症の相談希望,認知障害の対処に関する相談,認知症介護に関する学習の機会の有無が認知症高齢者の家族介護力に関連することが推察された.
著者
大塚 邦子 正野 逸子 日浦 瑞枝 白井 由里子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.98-104, 1999-11-01
被引用文献数
2

高齢者の看護は,看護する者の老人観に左右されると言われている.老人看護の授業開始に当たり,看護学生が持っている老人のイメージをSD法によるイメージ評価と描画の2方向から調査し,分析を試みた.イメージでは全体的に肯定的イメージを持っており,老人のイメージと学生の体験とで関連があったものは会話頻度であった.描画では,身体的特徴として「白髪・しわのある老人」を7割以上,「はげや腰が曲がっている老人」を3割以上の学生が描画していた.6割の学生が,散歩・ゲートボール・買い物・盆栽・畑仕事等の屋外で活動する老人を描いており,老人を屋内に閉じこもった存在としては意識していないことがわかった.イメージ評価と描画の関連では,「さっそうとしている」の項目で平均点以上であった学生は,描画において活動的な老人を描いているものが有意に多かった.今回の結果から,老人のイメージには学生が老人とどのようなかかわり方をしてきたかが影響する,また,描画を用いることにより学生が老人をどのように理解しているかを具体的に把握することができる,ことがわかった.
著者
伊藤 麻美子 泉 キヨ子 天津 栄子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.100-108, 2005-03-15

本研究の目的は,施設入所初期において認知症高齢者が他の認知症高齢者とどのような交流を図っているのかを明らかにすることである.介護老人保健施設の認知症専門棟に入所した中等度・重度の認知症高齢者9名を対象とし,入所から1週間,9時から17時における認知症高齢者相互の交流を参加観察法で観察した.交流106場面のデータを質的に分析した結果,施設入所初期における認知症高齢者相互の交流の様態として,「接点をもつ」,「分かち合う」,「求める」,「気遣う」,「向き合えない」,「摩擦をおこす」の6つのカテゴリーを見出した.これより,認知症が進行しても他者に関心をもち,関わる力をもつ一方で,認知障害や視聴覚障害,不安定な精神状態,環境の不備により,両者が向き合えなかったり,トラブルが生じる実態が明らかとなった.