- 著者
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森 こず恵
Mori Kozue
- 出版者
- 松本歯科大学
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-14
【目的】本研究では,インプラント体表面への歯周組織との接着性を高めることによりインプラント維持機能を永続させるインプラント体を開発することを目的として,G4チタンで作製したインプラント体表面にレーザーによるマイクロ形状加工を行い,in vitroにおける細胞の変化およびin vivoにおける骨形成の状態について組織学的観察を行った.【方法と結果】 機械研磨(MS),ブラスト加工(BL),ディンプル状レーザー加工(WL)されたG4チタンプレートにヒト未分化間葉系幹細胞(hMSC)をhMSC分化培地で1-14日間培養した.培養終了後,MTT assayにて細胞増殖能,Ⅰ型コラーゲンおよびアクチン染色にて細胞の付着状態と形態について観察をした.また,一部よりmRNAを抽出しRT-PCRにてⅠ型コラーゲン,VEGF,インテグリンα5,オステリックスの遺伝子発現を解析した.その結果,hMSCは,MS,BLおよびWLの何れのチタン表面形状においても,3,7,14日後においてミトコンドリア代謝活性に有意な変化を示さなかった.また,hMSCの形態は,MSでは研磨溝に沿って扁平に細長く伸展し,BLでは方向性なく不定形に伸展し,一方,WLでは細胞がディンプルの形状に一致して入り込むように存在し円形を呈していた.また,インテグリンα5,VEGF,I型コラーゲンおよびオステリックスのいずれの遺伝子においてもWLはMSおよびBLに比べて有意な発現の上昇を示した.動物実験ではφ3.0㎜×長さ5.0㎜のインプラント体に,MSおよび WLを施し,日本家兎(17-19週の3.0㎏,雌)の大腿骨骨幹部へ埋入した.埋入後,3および7週でインプラント体を周囲組織とともに摘出し,光重合レジンに包埋後非脱灰研磨切片を作製し組織学的に観察した.その結果,WLではMSに比べて埋入後3週より内骨膜側からインプラント体周囲に新生骨形成の有意な増加を認めた.【結論】 以上より,WLはこれまでに例にない特異な加工表面形状であり,種々の細胞培養の基盤として,また生体材料として組織への適合や接着および機能発現に効果を発揮する可能性が期待される.