著者
阿久津 聡 勝村 史昭 山本 翔平
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
Works Discussion Paper (ISSN:24350753)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-21, 2021 (Released:2023-12-13)

本研究では、競争的な仕事環境と主観的不健康感との間の直接的および(ワーカホリズムを介した)間接的な関係を検討した。また、競争的な仕事環境と主観的不健康感の関係、および競争的な仕事環境とワーカホリズムの関係における認知の歪みの調整効果を検証した。データは、様々な業種、職種、さらには職位の就業者 9,716 名から収集した。その結果、競争的な仕事環境は、直接的にも、またワーカホリズムを介しても、主観的不健康感と正の関係性が示された。さらに、認知の歪みが、競争的な仕事環境とワーカホリズムとの間の正の効果を調整し、認知の歪みが高い場合の方が、(低い場合に比べて)その正の関係性が強まることが明らかになった。この研究は、従業員の健康に対する意識が高まっている日本企業にとって、重要で実践的な意味を持つものである。
著者
笠井 恵美
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.1-14, 2007 (Released:2019-12-17)
被引用文献数
2

対人サービス職の熟達は,遂行の数だけ正解が存在する適応的熟達である。対人サービス職に共通の熟達過程を描くことは可能だろうか。小学校教諭・看護師・客室乗務員・保険営業の4職業を選び,半構造化面接で発達段階ごとに熟達に役に立った経験を尋ねた。その結果,4職業に共通する13の経験が得られ,新しい知識と重要な関係者との相互作用,発達段階ごとの熟達経験の順番や対人サービス固有の「つなぐ」経験が示唆された。
著者
丸山 一芳
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.3, no.11, pp.1-14, 2008 (Released:2019-12-16)

ミドル・マネジャーが組織的知識創造においてミドル・アップダウン・マネジメントの中心的役割を果たすことは,マクロの視点においてこれまでに報告がなされてきた。本稿では,知識経営論と伝統的な認識論における目的のちがいをメタファーとして議論することで企業組織におけるミドル・マネジャー自身の認識とはいかなるものかについて仮説を提示し,ふたつの事例研究によりミクロの視点から考察する。
著者
萩原 牧子
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-12, 2009 (Released:2019-12-13)

本稿の目的は,複数の調査手法で実施した回答の比較より,各調査の偏りについて検証することである。特に,インターネットモニター調査と従来型調査の回答属性と,公による代表性が高い調査データとの詳細の比較を行った。その結果,調査回答者の偏りはインターネットモニターだけの問題ではなく,もはや,従来型調査手法でも発生していることが明らかになった。また,設問のタイプによっては,調査間で差がないことも検証した。
著者
豊田 義博
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.2-15, 2018 (Released:2019-10-08)

人が育つゼミでは,大学教員は何をしているのか。授業内容ではなく,教員の教育行動に着眼し,23 のゼミの実態を探索した。ゼミの構造は同質的だが,教員個々が掲げる学修ゴール,それに対応した教育行動には特徴があり,それぞれが有機的に連関してゼミの人材育成の品質を高めていた。学修ゴールを4類型に,教育行動を10のカテゴリーにまとめ,その関連性を体系化した。
著者
坂本 貴志
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.13, no.8, pp.2-11, 2018 (Released:2019-10-08)

本研究の目的は,自己啓発の実施の有無が2 年後の正規雇用者の賃金の増減に対して影響を与えているのかを検証することである。本研究において,個人の能力をコントロールすると賃金上昇の効果は消失すること,専門的な技術を有する者がその周縁知識となる知識を身に付けることで業務能力や賃金の上昇につなげていること,資格取得を通じた学びが実際の業務能力向上や賃金の上昇につながっている可能性があることが示された。
著者
豊田 義博
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-14, 2013 (Released:2019-12-09)

アジア主要国およびアメリカの大卒者を対象とした調査セットを用いて,各国のキャリア選択行動の特徴を分析したところ,日本の大卒就職市場の抱える構造的課題の根源は,「大学前期までに進路決定する比率が他国に比べて著しく低いが,大学卒業までに進路決定している比率はいずれの国よりも極めて高いこと」「幹部候補対象の大卒採用市場とエントリーレベル採用市場が一体になってしまっていること」であることが見えてきた。
著者
辰巳 哲子
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-10, 2015 (Released:2019-12-05)

大学退学は退学後の個人のキャリアに負の影響を及ぼしているのか。本研究では,これまでに実態が把握されてこなかった大学退学後の学生の行動を明らかにすることによって,大学中退後に転学し,その後卒業をしても,ストレートに大学を卒業した者に比べて正規雇用率は低いこと,しかし,大学中退後のまま就職した者に比べて正規雇用率は高いこと,大学中退後の「やり直し」行動には大学入学前の経験が影響していることが確認された。
著者
辰巳 哲子
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.1, no.10, pp.1-10, 2006 (Released:2019-12-18)

本稿の目的は,どのような業種・職種であっても働く上で共通して必要となる能力について論ずることにある。これまでの間,学校と社会との間で「働く上で必要となる能力」に関する共通言語は存在しておらず,学校で学んだことや身につけた力が社会でどのように活用できるかわかりにくい状態が続いている。一方,働く上で必要となる能力には,子どもの頃から少しずつ開発すべき能力も多く含まれている。本稿では業種や職種を超えて,すべての職場で必要とされる力(=基礎力)を提唱する。
著者
高田 朝子
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.3, no.9, pp.1-14, 2008 (Released:2019-12-16)

有能なミドルにとって有効な人脈を構築することは不可欠な要素であった。本研究では人脈構築のプロセスに焦点を当て,ミドル30名のインタビュー調査を行なった。その結果,「自分は相手のことを助けることが出来る」という仕事に対する自己効力感と「相手が自分の事を助けてくれる」という他人の行動への自信感の二つが人脈構築の根底にあることを指摘することができた。
著者
豊田 義博
出版者
株式会社 リクルート リクルートワークス研究所
雑誌
研究紀要 Works Review (ISSN:24350699)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.1-14, 2010 (Released:2019-12-12)

就職活動を満足する結果で終えた大卒者が,入社後に挫折・迷走するケースが増えている。その要因として,大学生時代に形成される「自分探し志向」に着目し,若手社会人へのリサーチを行った。その結果,「フィット志向」「ゴール志向」が高いほど,現在の仕事満足度・自我アイデンティティ確立が低くなる傾向が観測された。また,この傾向は,「自己信頼」「不信」の双方が高い群に,顕著であった。