著者
田島 千裕 Cookson Simon Simon Cookson 桜美林大学基盤教育院 桜美林大学ビジネスマネジメント学群
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.79-97, 2011-01-01

Second language (L2) learners try to make language gain through authentic interactions in study abroad (SA) contexts. However, entering into the home of strangers and building a relationship in L2 is a challenging task. As a consequence, there is a possibility that language anxiety, one of the affective factors, may interfere more with the amount of interactions L2 learners have while abroad.This paper fi rst examines the experiences of 26 Japanese university students during a 15-week SA in Canada, comparing pre-departure anxiety and while-abroad anxiety to see the changes in learners' language anxiety level, and then focuses on the interview responses of learners with high anxiety. By analyzing the interview responses, some experiences related to language anxiety were highlighted. This study indicates that anxiety generally decreased after four weeks of SA in most cases. However, some exceptions were observed. First, learners who identifi ed themselves as shy with high pre-departure anxiety continued to have hgh anxiety.Second, learners with limited English profi ciency with high pre-departure anxiety continued to have high anxiety.
著者
原 千亜
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
no.7, pp.133-146, 2011
被引用文献数
1

日本語教育において「多言語多民族共生」という言葉を目にする機会が多くなったとはいえ、ミャンマー人は在日外国人の中のマイノリティであり、まだスポットライトを当てられる機会が少ない。そのような背景の下、日本語教室に在籍するミャンマー人学習者五人に日本での生活について半構造化インタビューを行い、在日ミャンマー人の社会文化的インターアクションを言語の社会化という視点から記述、分析を行った。協力者のアイデンティティは、「在日ミャンマー人」という一括りの枠ではなく、一人一人異なっており、ディアスポラ的な移動に伴って変化するハイブリッドで暫定的なものであった。そして、どのようなアイデンティティを持っているかが、インターアクションの個別性の一要因であった。協力者たちは様々な領域でネットワークを構築し、そのネットワークとのインターアクションを通して「言語の社会化」を図っていた。それは、日本社会という異文化社会をどう捉え、その中でどう生きるかということに通じていた。本稿は、修士論文である原(2008)の一部をまとめ、加筆したものである。
著者
原田 三千代
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-16, 2011

グローバル化に伴う国際競争力推進の下で、大学の教育カリキュラムは専門化、即戦力に主眼が置かれている。しかし、大学や大学院での研究では、アカデミック・スキルの習得と同時に、自分自身や研究について思考する内容重視の言語教育が必要であり、それが研究者としての持続可能な生き方にも通じるのではないかと考えられる。本研究では、大学院進学予備教育のプログラムにおいて、ツールと同時に内容に重点を置く持続可能性日本語教育を試行した。現職の日本語教師を対象に、研究に対する態度構造の変化を探ることを目的とし、教室活動参加当初、活動終了直後、活動終了半年後にPAC分析を実施した。その結果、活動参加当初は研究に対するイメージが漠然としており、「知る」ことに重点が置かれていたが、活動終了時点は「知る」より「絞る」「深める」を重視し、データの量よりも研究に合ったデータをとることが強調された。活動終了半年後の研究に対するイメージは「研究と実践のリンクする持続可能性」「協働的なスタンス」として収束されていた。研究と実践が相互補完的に関係づけられ、協働的スタンスがそれを下支えするといった構図が示唆される。
著者
李 麗麗
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
no.7, pp.17-31, 2011

本稿では、日本語教育専攻の中国人大学院留学生(以下中国人院生)を対象とした半構造化インタビューを通して、中国人院生がアカデミック・インターアクション(AI)に関わる実践共同体へ十全参加を進めていく過程を明らかにすることを試みた。正統的周辺参加理論に沿って分析・考察した結果、以下の3 点の変容が明らかになった。1. 中国人院生のAI 能力の向上の程度には個人差と多様性がある。2. 参加するAI 活動が豊富になり、他者との協働関係と親密関係が構築された。3. 中国人院生のアイデンティティは「日本語学習者」から「日本語先生の卵」、「研究者」などの熟練したアイデンティティに変容した。周辺的参加から十全的参加へと移行する大きな突破口は他者肯定と個人の意欲による情意面の要因に密接にかかわっているが、その根本には研究効力感が重要な役割を担っていることがわかった。