著者
Suzuki Keisuke
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.33-62, 1983-02

一国内の各都市の人口をP,最大の都市人口から数えたその都市人口の順位をRとするとき,それらの間には,log P = -a log R+b (1)という関係が成立する(aおよびbは,パラメーターである)。これが,今日,一般に,「ジップの順位規模法則」とよばれている法則である。この法則の成立機構,性質,適用の可能性等については,すでに,これまで多くの研究がなされている。しかし,一国内でこのジップの順位規模法則が成立しているとき,その一国内の部分的地域内にある都市人口に対して,やはり,ジップの順位規模法則が成立し得るかどうかという問題についての研究は,まだなされていない(ただし,一国の部分的地域の都市人口へのこの法則の単なるあてはめは試みられている)。ここでは,この問題に対する検討をおこなった。検討の結果,『ある一地域(第k地域)内の都市人口P_kのもつその地域内の都市人口における順位R_k』と『その都市人口のもつ全地域(一国)内の都市人口における順位R』との間に,ほぼ R≒κR_k (2)という関係(ただし,κはある定数)があるとき,もしも,全地域内の都市人口が順位規模法則に従っていれば,第k地域内の都市人口もまた,近似的に順位規模法則に従うことが理論的に見いだされた。すなわち,一国全体の都市人口が,ジップの順位規模法則に従っているとき,同時に,その国の部分的地域の都市人口もまたジップの順位規模法則に従うことが可能であることを理論的に示すことができた。また,この事実をシミュレーションによっても示すことができた。ジップの順位規模法則のもつ上記のような性質-全地域内の都市人口と部分的地域内の都市人口が同時に順位法則に従うことができるという性質-を,筆者は,『ジップの順位規模法則の可分解性(decomposability)』と名づけた。さらに,検討の結果,いくつかの地域内の都市人口が,同様のジップの順位規模法則に従うとき,いいかえれば,第k地域における都市人口をP_k,その地域内の都市人口におけるO_kの順位をR_kとすれば,R_kとP_kとの間に,P_k=-a log P_k+b(k=1,2,…)(3)という関係が成立する(a,およびbは各地域共通のパラメーターである)とき,これらの地域全体の都市人口にジップの順位規模法則を適用し得ることが理論的に判明した。順位規模法則のもつこのような性質を,ここでは,「ジップの順位法則の可結合性(composability)」と名づけた。最近のわが国においては,わが国全体の都市人口に対しても,また,各種地域内の都市人口に対しても,ジップの順位規模法則が適用され得るが,このようなことが可能となった理由は,ジップの順位規模法則の可分解性,または,可結合性にあることが認められた。この研究の一部は,日本大学の1981年度における総合研究:『21世紀目本の針路』に与えられた研究資金によっておこなわれた。その研究結果は,鈴木啓祐:「地域的人口分布の動向」,黒田俊夫編:『21世紀日本の針路』東京,古今書院,1981年,159-193頁および,鈴木啓祐,黒田俊夫:"On the structure of the spatial distribution of recent urban population in Japan," NUPRI Research Paper Series, No.4,東京,日本大学人口研究所,1981,という形で公表されている。この研究をおこなう際,この研究に対して関心を示し,大きな刺戟を与えられた日本大学の黒田俊夫教授に謝意を表する。また,この研究の一部は,1981年に東北学院大学(仙台)で開催された日本入口学会の第33回研究発表会,ならびに,1981年に明治学院大学(東京)で開催された目本地域学会の第18回研究発表会において発表した。これらの発表の内容は,鈴木啓祐:"On the homogeneous structure found in the system of the population of cities in Japan,"『人口学研究』第5号,1982年,49-56頁,ならびに,鈴木啓祐:「ジップの順位規模法則の可分解性について」,『地域学研究』第12巻,1982年,35-52頁,という形で公表されている。これらの研究発表の際,有益なコメントを与えられた,宇都宮大学の大友篤教授,慶応義塾大学の高橋潤二郎教授,および摂南大学の岡崎不二男教授に対して感謝の意を表する。なお,この研究に必要となった重要な文献を閲覧する機会を与えられた成蹊大学の志村利雄教授および石井三郎教授に感謝を表する。さらに,また,この研究に必要な計算作業に協力された芙蓉情報センターの土屋政晴氏,蒲耕二氏,および藤原史之氏に対しても感謝の意を表する。
著者
本村 猛能 内桶 誠二
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.1-14, 2004-01

最近,大学への専門高校からの進学率が高まっており,従来の普通高校を前提とした情報教育の内容ばかりでなく,様々な形態の高校教育を考慮したカリキュラムを考えることが必要になってきた。また,同時に教科「情報」の免許取得にあたり,その対象学部・学科でも,平成14年度以降専門高校生の割合が高まっている。そこで本研究では,現在大学で実践されている一般(共通教育)課程での情報教育と,高等学校・専門高校の情報に関する学習内容を比較することで,今後の大学情報教育の在り方について検討することを目的とした。検討の結果,大学情報教育では,各種ソフト活用による日常利用するプレゼンテーション技能の向上に力点が置かれ,その面で専門高校,中でも商業系,工業系出身の生徒にとっては動機付けは高い。ただし,普通科出身の生徒の技能が初期レベルのため,現状では教育内容およびカリキュラムの不十分さが認められた。つまり,情報に関する能力として,大学では,情報社会や倫理といった「教養」教育は努力されているものの,アルゴリズムなどの「知識」は不足がちであり,高校では,情報に関する技能として,ソフト操作やパソコン操作といった「利用技術」教育は努力されているものの,問題解決能力などの「構成力」は不足がちである。具体的には,今後の情報教育の内容は,指導する学生数や個人差に応じた教育,技能とコンピュータ等メディア活用技術を十分検討する必要性があることがわかった。今後,これらの必要性の意味と,専門高校の実践で認められた情報教育の「基礎・基本の徹底,理論と実践の関連,創造性重視」の関連性,および高等学校と大学との系統的なカリキュラムについて検証していかなければならない。