著者
貞野 宏之
出版者
福岡女学院大学
雑誌
福岡女学院大学紀要 人間関係学部編 (ISSN:13473743)
巻号頁・発行日
no.8, pp.35-43, 2007-03

1999年放映後ビデオとして販売されている「NHKスペシャル人体III遺伝子第1集」の内容を分析し、現在の教育現場で本作品を教材として使用する際に留意すべき問題点を探った。まず、本作品では人の遺伝子の種類は10万種類としているが、2004年のヒトゲノム計画の報告では2万4千個程度と修正された。この部分は本作品を教材として使用する場合には注意を要すると考えられた。一方で、2003年以後に本作品のCG(コンピューターグラフィック)映像が部分的に移植されたNHKの教育番組では、遺伝子の数の解説が修正されていることが判明した。次に、遺伝子の突然変異が受け継がれたイタリアの例の紹介で、特殊な遺伝子を運ぶヒトという意味の語句としてイタリア語で「ポルタトーリ」という語句が紹介されている。今回の調査では、科学専門雑誌の文献にも当該語句の使用例は見られなかった。このことから、教育現場での「ポルタトーリ」の語句の使用は一般性という面からは避けるべきと考えられた。本作品は秀逸なCG映像以外にも、生化学のみならず、現代の生命を幅広くとらえるための重要なメッセージが含まれており、科学ジャーナリズムの真摯な取り組みを教育界が重く受け止めるべき内容を含んでいる。生化学分野の進展により教材としての使用には留意すべき点は見られるが、そういった部分をおさえた上でも、本作品は十分に通用すると考えられた。
著者
浅田 浩文
出版者
福岡女学院大学
雑誌
福岡女学院大学短期大学部紀要. 一般教育・英語英文学 (ISSN:09123377)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-17, 2004-03-01

本研究は、言語接触の観点から、本国でのフォーマルな日本語学習から日本というインフォーマルな日本語環境に接触した中国人留学生4名を対象に、語彙の音便化や縮約について、縦断的に調査したものである。その結果、明らかになったことは、以下の通りである。1.音便化に関して、日本人大学生と同様に、中国人留学生の発話の中で相対的に使用頻度が高いものとして「あんまり」「やっぱり」があるが、日本人大学生とは対照的に、中国人留学生に使用されていないものとして「わかんない(かった)」「ばっかり」がある。2.縮約形について、日本人大学生の発話の中では、語末<-Ro>が頻繁に省略されているのに対して、中国人留学生の発話には、その傾向がまったく見られない。3.その他、アスペクトに関して、日本人大学生の発話の中では、「テイル」より「テ(イ)ル」が多用されているが、中国人留学生の発話では、最初に「テイル」が使用され、滞日期間が長くなるにしたがって「テ(イ)ル」が混用されている。
著者
原口 芳博
出版者
福岡女学院大学
雑誌
福岡女学院大学紀要. 人間関係学部編 (ISSN:13473743)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-57, 2005-03-31

スウェーデンで創始されたボディナミクスについて紹介した。これは心理療法の中でも、身体心理療法 (Body Psychotherapy) に分類されるアプローチである。それは心と身体は同調し、連結していると考える立場であり、心と身体に主体的に関わり両者をつなぎ、全体のバランスを図り、自他に対する肯定感を志向するものである。その発達理論である「性格構造 (Character Structures)」の概要を述べた。その内容は胎児期から12歳までを、「存在、ニード、自律、意志、愛と性、意見、連帯と行動」という7つの発達段階に設定し、各段階を前期と後期に分類し、それらの各時期に顕著な身体面と心理面の特徴を明確にしたものである。臨床面で関わる場合には、クライアントがこの性格構造のどの特徴を持っているかを理解した上で、その特徴に応じた援助を行うことについても若干触れた。