- 著者
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高橋 雅延
- 出版者
- 聖心女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1998
1.実験1強烈な感情が対人記憶に及ぼす制御効果について検討するために、ある人物の一日の行動を写した写真18枚を材料とし、情動的な刺激(死体)を提示した場合(情動群16名)の前後の記憶について、情動的な刺激を提示しない場合(中立群16名)の再認記憶と比較検討した。その結果、ネガティブな感情が対人記憶に対して順向抑制効果を与えることが明らかとなった。これは、そのような状況において、精緻な処理が行えず、記憶が悪くなったのではないかと考えられた。2.実験2ある男子大学生の一日について述べられた文章を材料とした。そして、この男子学生に抱く対人感情(ポジティブ感情、ネガティブ感情)を操作するために、その人物の友好的描写を読ませるネガティブ感情群27名を設け、1時間後に、文章の偶発自由再生を求めた。その結果、対人記憶課題では、ポジティブ感情をもった群の方が、行動の種類によっては、そのような感情の源となった行動とは一致しない敵意性行動の再生成績が高い傾向が見受けらた。このように、行動によって結果のパタンが異なることから、矛盾情報というように一つのカテゴリで行動をまとめてしまうのではなく、矛盾情報の中でも、細かく行動別に調べていくことが必要であると思われる。