- 著者
-
高橋 恵子
- 出版者
- 聖心女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
目的:親しい人間関係の発達を理解する代表的な理論である「愛着理論」と「ソーシャル・ネットワーク理論」を理論的・実証的に吟味した上で,両者を統合する理論として筆者が構築してきた「愛情の関係モデル」を提案し,妥当性を実証的に検討することをねらいとしたものである。研究の内容:ステップ1は2理論の基本的な相違を明らかにした上で,先行研究を概観し,人間関係は愛着をその一部として含むソーシャル・ネットワークとして捉えることが有効であるという立場から,筆者の「愛情の関係モデル」を提案した。「愛情の関係モデル」は,個人が持つ複数の重要な他者からなる親しい関係の性質を正確に記述し,さらに,個々人の複雑な関係のネットワークを類型化して個別の特徴をとらえて見ようというものである。ステップ2では「愛着理論」の測定具(Strange Situation Procedure,Doll Play,Attachment Interview,Attachment style)をわが国で使用する場合の問題を検討し,「愛情の関係モデル」の測定具(愛情の関係スケール,ARSと絵画愛情の関係検査,PART)を提案した。ステップ3では幼児から高齢者までの研究協力者から得た実証的な資料について4つの研究をした。最後に,愛着の機能を認めたうえで,それをソーシャル・ネットワークの中に位置づけることの大切さ,しかも,ソーシャル・ネットワークの個人差を記述することを可能にした「愛情の関係モデル」の重要さ,について論じた。