著者
三角 好輝 佐藤 重明
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.136-141, 2003-09-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

燃料電池は熱電併給が可能であるため原燃料の利用効率が高く, 地球温暖化防止の切り札として期待されており, 中でも固体高分子形は反応温度が比較的低いため自動車や, 「電気の取れる給湯器」として開発が進められている。この発電セルにはフッ素系の陽イオン交換膜が用いられており, また天然ガスなどから水素を取り出す際に必要な純水の製造には, イオン交換樹脂などが用いられている。当社は, イオン交換樹脂に比べ頻繁な交換が不要である電気脱イオン法を燃料電池の水処理に開発適用してきた。当方式はメンテナンス頻度を少なくしたいとのユーザーの目標に合致した, 優れたシステムであり, 実用化を目指し開発を続けている。
著者
三村 均 佐藤 修彰 桐島 陽
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.96-108, 2011
被引用文献数
5 15

東日本大震災で発生した大津波は,福島第一原子力発電所を襲い,原子力発電の安全神話を覆すレベル 7 の原子力事故を引き起こした。国内最悪の事故はいまだ収束に至らず,発電所周辺住民は,震災と原子力事故という二重の苦しみの生活を強いられている。事故対策を進める上で,各タービン建屋地下の溜まり水など放射性物質を多く含んだ 20 万トン規模の高レベル汚染水が大きな障害となっている。海水が混入した高汚染水の浄化,特に Cs の選択的分離・除去に対しては,高選択性を有する無機イオン交換体の使用が効果的である。一方,発電所より大気中へ放出された Cs や I は福島県を中心に広範囲に拡散し,汚染された雨水の処理や土壌の除染が緊急の課題となっている。事故後数か月を経過した現在,セシウム(<sup>137</sup>Cs, <sup>134</sup>Cs)による放射能が主であり,放射性 Cs の選択的分離・除去用の吸着剤が重要な役割を担っている。最近,発電所サイトでは外国製技術を導入した除染プラントが稼動し始めたが,運転システムや廃棄物処理など課題がある。そこで,わが国独自の高汚染水処理システムの構築が急がれており,ここではイオン交換分離技術に大きな期待が寄せられている。特に汚染水処理現場では,わが国に豊富に産出する天然産ゼオライトの高い Cs 吸着能に期待が高まっている。ここでは,ゼオライトによる放射性核種の分離・除去,特に放射性 Cs の選択的分離・固化に関して解説する。<br>
著者
Fumiya Matsuzawa Yoshimasa Amano Motoi Machida
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-10, 2023 (Released:2023-01-21)
参考文献数
11

Activated carbon fiber (ACF) with enhanced phosphates ion adsorption performance was prepared by cellulose-based activated carbon fiber (KF1500LDA) modified with amines. The raw material KF1500LDA was oxidized with hydrogen peroxide solution for 2 h and then reacted with diethylenetriamine (N1-(2-aminoethyl)-1,2-ethenediamine) at 10°C for 6 hours to maximize the phosphates ion adsorption amount. The maximum adsorption amount achieved 0.13 mmol/g when the equilibrium pH (pHe) was 3.0. The specific surface area of the diethylenetriamine-modified sample was 1603 m2/g. Elemental analysis showed that the nitrogen content increased to 2.8 wt%, about 1.8 times greater than that of the raw material.
著者
Yu TACHIBANA Tomasz KALAK Tatsuo ABE Masanobu NOGAMI
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.86-94, 2022-11-04 (Released:2022-11-04)
参考文献数
13

In order to extract reasonably rare-earth elements (REEs) as deep-sea resources, the effect of ozone (O3) on REEs on hydroxyapatite (Abbreviated as Ca3(PO4)2) selected as a simulated REEs mud was comprehensively examined in aqueous solutions including alkali metal salts (MCl or CH3COOM, M = Li, Na, and K) and alkaline earth metal salts (MCl2 or (CH3COO)2M, M = Mg, Ca, Sr, and Ba) ranging in temperature from 278 to 333 K. As a result, it was found that Ca3(PO4)2 exists as a solid state and REEs except Ce maintain their dissolved morphologies during O3 treatment. Moreover, it was confirmed that the leaching ratios of REEs from Ca3(PO4)2 increase with an increase in the concentrations of alkali metal salts and alkaline earth metal salts in aqueous solutions. This phenomenon implies that their adsorption-desorption mechanisms are chemically controlled through cation exchange reactions between REEs on Ca3(PO4)2 and other metal cations. In addition, the most effective cation to extract REEs from Ca3(PO4)2 into an aqueous solution was found to be Ca ion among these additives. It was considered that the constant increase of the ΔH and ΔS values from La to Lu in the adsorption equilibrium reactions results from the increase in the hydration number of REEs due to the lanthanide contraction. On the basis of these results, the leaching experiments of REEs on Ca3(PO4)2 were carried out to check whether the leaching promoting effect was accomplished by the combined use of O3 and Ca ion or not. Only when used in conjunction with O3 and Ca ion, it was found that the synergetic effect results in an almost fourfold increase in their leaching ratios. This promising result shows that it is possible to develop an innovative, modern, and eco-friendly extraction technology to separate REEs from Ca3(PO4)2.
著者
花田 文夫 鍵山 安弘 大村 信彦
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.153-156, 2005-09-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
8

一価陽イオン選択透過性膜 (CIMS) の選択特性を測定した。結果, (2) 相対輸率の塩濃度依存性が小さい。 (2) 透析電流密度が大きくなるにしたがって, また, 海水温度が低下するにしたがって, 純塩率が上昇した。 (3) 純塩率の低下は3年で1%であった。 (4) CIMSは一価イオン間の分離もできることが判明した。
著者
善国 信隆 岩坪 健治 松井 幸雄 石谷 宏和 小熊 幸一
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.44-48, 1999-08-31 (Released:2010-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

淡水中のホウ素をフッ化水素酸系陰イオン交換法により濃縮し, ICP発光分析法で測定する方法を開発した。試料水にフッ化水素酸を添加し, 陰イオン交換樹脂カラムに通してホウ素をカラムに捕集する。次いでホウ素を硝酸でカラムから溶離し, ICP発光分析法 (182.6nm) で測定する。本法を市販飲料水に適用したところ, ホウ素の定量値は産地により異なり, 10~70ngBcm-3が得られた。また, 約50ngBcm-3の定量における相対標準偏差 (n=4または5) は7~12%であった。
著者
藤井 靖彦
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.68-79, 2004-05-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
15

イオン交換は言うまでもなく, 優れた化学分離法であり, 同位体の分離までにも応用されうる。本論文は化学平衡において発生する同位体効果の原理から説き始め, イオン交換樹脂を用いた同位体分離への応用まで記述している。本研究では種々の条件下で実験をおこない同位体分離係数と理論段高さを実験から求めており, 特に15N濃縮系のHETPについて流速, 吸着帯移動速度依存性を詳しく調べた。分離係数を求める研究はより重い元素, 遷移金属元素, 希土類元素, アクチノイド元素等の同位体効果へ拡大してきた。錯形成の同位体効果よりも, 酸化還元をともなう系がより大きな同位体効果を示すことから, 今後とも化学交換反応は有効な同位体分離技術として発展する可能性がある。
著者
三村 均
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.45-51, 2014
被引用文献数
2

東日本大震災で発生した大津波は,福島第一原子力発電所を襲い,原子力発電の安全神話を覆すレベル 7 の原子力事故を引き起こした。国内最悪の事故はいまだ収束に至らず,発電所周辺住民は,震災と原子力事故という二重の苦しみの生活を強いられている。事故対策を進める上で,50 万トン規模の高汚染水が大きな障害となっている。海水が混入した高汚染水の浄化,特に Cs の選択的除染に対しては,無機イオン交換体充填吸着塔による循環注水冷却システムが稼動しており,冷温停止が達成されているが,運転システムの高度化や二次固体廃棄物の安全管理および処分が課題となっている。ここでは,ゼオライトを主体とした Cs および Sr 選択性吸着剤の吸着特性および固化特性を比較評価するとともに,吸着剤の高機能化の試みを紹介する。わが国に豊富に産出する天然産ゼオライトは,Cs に高い選択性を有すると共に,高温での Cs ガスのトラッピング機能および安定固化を実現できる自己焼結機能など優れた特性を有しており,高汚染水の処理および処分において今後重要な役割を果たすものと期待できる。<br>