著者
吉塚 和治
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.59-65, 2012 (Released:2012-09-26)
参考文献数
7
被引用文献数
6 9

海水中には,様々な鉱物資源が溶存しており,その絶対量の大きさから,資源枯渇化問題の解決法の一つとして注目されている。これらの鉱物資源量は大部分において,海水中の方が陸上の推定埋蔵量より大きいが,海水中に存在する元素の濃度は希薄であり,経済的にかつ高純度に回収することは極めて困難である。 我々は,海水からのリチウム回収に着目し,リチウムを高選択的に分離回収できるスピネル型酸化マンガン系吸着剤と吸着剤の造粒法の開発,リチウム吸着性能の評価,ならびにパイロットプラントによる海水からのリチウム回収の実証研究までを一貫して行ってきた。本稿では,リチウム資源回収視点から,リチウム資源の現状と将来の需要予測とともに,我々が開発した海水からのリチウム回収技術とパイロットプラントを用いたリチウム回収の実証試験の成果を解説する。
著者
三村 均
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.45-51, 2014 (Released:2014-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

東日本大震災で発生した大津波は,福島第一原子力発電所を襲い,原子力発電の安全神話を覆すレベル 7 の原子力事故を引き起こした。国内最悪の事故はいまだ収束に至らず,発電所周辺住民は,震災と原子力事故という二重の苦しみの生活を強いられている。事故対策を進める上で,50 万トン規模の高汚染水が大きな障害となっている。海水が混入した高汚染水の浄化,特に Cs の選択的除染に対しては,無機イオン交換体充填吸着塔による循環注水冷却システムが稼動しており,冷温停止が達成されているが,運転システムの高度化や二次固体廃棄物の安全管理および処分が課題となっている。ここでは,ゼオライトを主体とした Cs および Sr 選択性吸着剤の吸着特性および固化特性を比較評価するとともに,吸着剤の高機能化の試みを紹介する。わが国に豊富に産出する天然産ゼオライトは,Cs に高い選択性を有すると共に,高温での Cs ガスのトラッピング機能および安定固化を実現できる自己焼結機能など優れた特性を有しており,高汚染水の処理および処分において今後重要な役割を果たすものと期待できる。
著者
三角 好輝 佐藤 重明
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.136-141, 2003-09-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

燃料電池は熱電併給が可能であるため原燃料の利用効率が高く, 地球温暖化防止の切り札として期待されており, 中でも固体高分子形は反応温度が比較的低いため自動車や, 「電気の取れる給湯器」として開発が進められている。この発電セルにはフッ素系の陽イオン交換膜が用いられており, また天然ガスなどから水素を取り出す際に必要な純水の製造には, イオン交換樹脂などが用いられている。当社は, イオン交換樹脂に比べ頻繁な交換が不要である電気脱イオン法を燃料電池の水処理に開発適用してきた。当方式はメンテナンス頻度を少なくしたいとのユーザーの目標に合致した, 優れたシステムであり, 実用化を目指し開発を続けている。
著者
三村 均 佐藤 修彰 桐島 陽
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.96-108, 2011
被引用文献数
5 14

東日本大震災で発生した大津波は,福島第一原子力発電所を襲い,原子力発電の安全神話を覆すレベル 7 の原子力事故を引き起こした。国内最悪の事故はいまだ収束に至らず,発電所周辺住民は,震災と原子力事故という二重の苦しみの生活を強いられている。事故対策を進める上で,各タービン建屋地下の溜まり水など放射性物質を多く含んだ 20 万トン規模の高レベル汚染水が大きな障害となっている。海水が混入した高汚染水の浄化,特に Cs の選択的分離・除去に対しては,高選択性を有する無機イオン交換体の使用が効果的である。一方,発電所より大気中へ放出された Cs や I は福島県を中心に広範囲に拡散し,汚染された雨水の処理や土壌の除染が緊急の課題となっている。事故後数か月を経過した現在,セシウム(<sup>137</sup>Cs, <sup>134</sup>Cs)による放射能が主であり,放射性 Cs の選択的分離・除去用の吸着剤が重要な役割を担っている。最近,発電所サイトでは外国製技術を導入した除染プラントが稼動し始めたが,運転システムや廃棄物処理など課題がある。そこで,わが国独自の高汚染水処理システムの構築が急がれており,ここではイオン交換分離技術に大きな期待が寄せられている。特に汚染水処理現場では,わが国に豊富に産出する天然産ゼオライトの高い Cs 吸着能に期待が高まっている。ここでは,ゼオライトによる放射性核種の分離・除去,特に放射性 Cs の選択的分離・固化に関して解説する。<br>
著者
鈴木 憲子 天野 裕理 越智 耕太郎 知久馬 俊幸
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.29-33, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
9

建物の除染などによって産出された放射性セシウムを含んだ汚染水の処理に用いることを念頭に,バーミキュライトのセシウム吸着挙動について検討をした。バーミキュライトは熱処理によって膨張し表面積を広げることができるが,層間水の消失および層構造の破壊で吸着能が低下もしくは喪失してしまうことが分かった。そこで熱処理をしないバーミキュライトについて粒子の大きさに注目をして吸着実験を行い,ある大きさまでは粒子径に吸着能が依存しないことを見いだした。加えてカラム法で十分な吸着率を得るためには,流速を下げることが要求されるが,使用するバーミキュライトの量を変えずに分割してカラムに充填し,カラムを連結することで流速の問題を解決することができた。
著者
三村 均 山岸 功
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.6-20, 2012 (Released:2012-02-02)
参考文献数
40
被引用文献数
16 15

東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所事故においては,海水等冷却材の原子炉注入により,原子炉およびタービン建屋内の地下の溜まり水や,敷地内のトレンチなどに放射性物質を多く含んだ数万トン規模の高レベル汚染水が発生し,作業障害や環境汚染を起こしており,今後 20 万トン以上になると予想されている。2011 年 12 月の時点で,循環注水冷却システムにより冷温停止が達成されているが,固体廃棄物(ゼオライト,不溶性フェロシアン化物スラッジ,結晶性シリコチタネート (CST)) の処理および処分は未定である。特に,汚染水中のセシウムの高除染用吸着剤として使用されている不溶性フェロシアン化物および結晶性シリコチタネート (CST) の処理・処分に関しては,過去にもほとんど実績がないことから,今後の重要な課題となっている。本稿では,循環注水冷却システムの構成と進捗状況,およびセシウムの高除染用吸着剤としての不溶性フェロシアン化物および CST の物性および Cs に対する選択的な吸着特性について紹介し,これら固体廃棄物の処理・処分および今後の課題について述べる。
著者
Fumiya Matsuzawa Yoshimasa Amano Motoi Machida
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-10, 2023 (Released:2023-01-21)
参考文献数
11

Activated carbon fiber (ACF) with enhanced phosphates ion adsorption performance was prepared by cellulose-based activated carbon fiber (KF1500LDA) modified with amines. The raw material KF1500LDA was oxidized with hydrogen peroxide solution for 2 h and then reacted with diethylenetriamine (N1-(2-aminoethyl)-1,2-ethenediamine) at 10°C for 6 hours to maximize the phosphates ion adsorption amount. The maximum adsorption amount achieved 0.13 mmol/g when the equilibrium pH (pHe) was 3.0. The specific surface area of the diethylenetriamine-modified sample was 1603 m2/g. Elemental analysis showed that the nitrogen content increased to 2.8 wt%, about 1.8 times greater than that of the raw material.
著者
Yu TACHIBANA Tomasz KALAK Tatsuo ABE Masanobu NOGAMI
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.86-94, 2022-11-04 (Released:2022-11-04)
参考文献数
13

In order to extract reasonably rare-earth elements (REEs) as deep-sea resources, the effect of ozone (O3) on REEs on hydroxyapatite (Abbreviated as Ca3(PO4)2) selected as a simulated REEs mud was comprehensively examined in aqueous solutions including alkali metal salts (MCl or CH3COOM, M = Li, Na, and K) and alkaline earth metal salts (MCl2 or (CH3COO)2M, M = Mg, Ca, Sr, and Ba) ranging in temperature from 278 to 333 K. As a result, it was found that Ca3(PO4)2 exists as a solid state and REEs except Ce maintain their dissolved morphologies during O3 treatment. Moreover, it was confirmed that the leaching ratios of REEs from Ca3(PO4)2 increase with an increase in the concentrations of alkali metal salts and alkaline earth metal salts in aqueous solutions. This phenomenon implies that their adsorption-desorption mechanisms are chemically controlled through cation exchange reactions between REEs on Ca3(PO4)2 and other metal cations. In addition, the most effective cation to extract REEs from Ca3(PO4)2 into an aqueous solution was found to be Ca ion among these additives. It was considered that the constant increase of the ΔH and ΔS values from La to Lu in the adsorption equilibrium reactions results from the increase in the hydration number of REEs due to the lanthanide contraction. On the basis of these results, the leaching experiments of REEs on Ca3(PO4)2 were carried out to check whether the leaching promoting effect was accomplished by the combined use of O3 and Ca ion or not. Only when used in conjunction with O3 and Ca ion, it was found that the synergetic effect results in an almost fourfold increase in their leaching ratios. This promising result shows that it is possible to develop an innovative, modern, and eco-friendly extraction technology to separate REEs from Ca3(PO4)2.
著者
萩原 英貴 柴田 智史 赤阪 有一 古川 淳
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.47-52, 2016

<p>古河電池は鉛蓄電池の負極板に非対称キャパシタを組み合わせた"UltraBattery"を開発した。UltraBatteryは優れた充電受入性とPSOC条件下での高い耐久性を兼ね備えており, アイドリングストップ車に適した電池と言える。2013年4月に日本のアフターマーケット向けに液式UltraBatteryの販売を開始した。2013年11月からホンダ オデッセイ アブソルート, 2015年4月からホンダ ステップワゴンに採用されている。本報ではUltraBatteryの特徴を紹介する。 </p>
著者
渡辺 雄二郎 鈴木 憲子 山田 裕久 藤永 薫 小松 優
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.75-81, 2013 (Released:2013-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

福島第一原子力発電所の事故により,環境中に放出された放射性セシウムは多くの生態系に深刻な影響をもたらしている。この放射性セシウムの回収及び固定化材としてゼオライトが注目されている。我々はイオン交換法によって様々なカチオン種を含む各種ゼオライトを作製した。本研究では,これらのゼオライトのセシウムイオン吸着挙動及び,800℃~1200℃ で焼成後のゼオライトからの溶出挙動を純水と 0.6 M 塩化ナトリウム水溶液中で検討した。
著者
井上 勝利 大渡 啓介 馬場 由成
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.36-48, 1998
被引用文献数
5

希土類元素, 白金族金属, 銅 (II) , ニッケル, コバルト (II) , 亜鉛 (II) , 鉛 (II) , バナジウム (IV) , モリブデン (VI) およびアルミニウム (III) 等の卑金属に対する数種のコンプレキサン型化学修飾キトサンの吸着についての著者等の研究を概観した。グリシン, IDA, EDTAおよびDTPAのコンプレキサンの官能基の導入により吸着能は原料キトサンと比べて高められ, 吸着の起こるpHは低pH側にシフトした。特にEDTA型, およびDTPA型キトサンでは銅 (II) に対する吸着は10, 000倍高められた。<BR>EDTA型およびDTPA型キトサンは通常のキレート樹脂とは大いに異なり, 最も分離が困難な金属群である3価の希土類金属を認識, 相互分離することが可能であった。これはEDTAやDTPAの優れたキレート形成能力がこれらをキトサンのポリマー骨格に固定化した後も保持されるためである。<BR>一方グリシンやIDAの官能基を導入したものでは白金 (IV) やパラジウム (II) を吸着した場合, 塩酸による溶離特性が大幅に向上した。<BR>卑金属の吸着特性はEDTAやDTPAの官能基の導入により劇的に変化した。両者の金属の吸着の選択性の序列は以下の通りであった。銅 (II) =モリブデン (VI) >ニッケル>バナジウム (IV) ≫亜鉛=コバルト (II) ≫アルミニウム。このような選択性は広範な実用的利用の点で興味深い。実際, DTPA型キトサンを充填したカラムを用いてニッケルとコバルトの分離を行ったところ両金属の分離は満足すべきものであった。<BR>これらの化学修飾キトサンを用いて塩酸中からの卑金属の吸着も調べられた。その結果, 鉛 (II) が亜鉛などの他の金属から選択的に吸着された。吸着カラムを用いて大量の亜鉛からの微量の鉛の分離が行われ, 満足すべき結果が得られた。
著者
高橋 一重 伊藤 美和
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.26-30, 2014 (Released:2014-05-20)

超純水製造で培ったイオン交換樹脂のクリーン化技術や分析技術の応用展開として,電子材料精製向けイオン交換樹脂の開発に取り組んできた。これまでに開発したイオン交換樹脂として,非水系対応品である乾燥樹脂「アンバーリストTM DRY」シリーズ,また超低溶出品であるクリーン樹脂「オルライトTM DS」シリーズについてその特徴を紹介し,またいくつかの利用例について報告する。
著者
花田 文夫 鍵山 安弘 大村 信彦
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.153-156, 2005-09-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
8

一価陽イオン選択透過性膜 (CIMS) の選択特性を測定した。結果, (2) 相対輸率の塩濃度依存性が小さい。 (2) 透析電流密度が大きくなるにしたがって, また, 海水温度が低下するにしたがって, 純塩率が上昇した。 (3) 純塩率の低下は3年で1%であった。 (4) CIMSは一価イオン間の分離もできることが判明した。
著者
高橋 一重 伊藤 美和
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.26-30, 2014

&emsp;超純水製造で培ったイオン交換樹脂のクリーン化技術や分析技術の応用展開として,電子材料精製向けイオン交換樹脂の開発に取り組んできた。これまでに開発したイオン交換樹脂として,非水系対応品である乾燥樹脂「アンバーリスト<sup>TM</sup> DRY」シリーズ,また超低溶出品であるクリーン樹脂「オルライト<sup>TM</sup> DS」シリーズについてその特徴を紹介し,またいくつかの利用例について報告する。<br>
著者
福井 賢一
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.397-403, 2010 (Released:2012-04-18)
参考文献数
22

電極表面での電子移動反応を考えると,電極電位で決まる平均的な電気二重層構造以上に局所的なイオンの分布が重要である。我々は電気化学計測と並行して電極電位を制御しながら微弱な力で界面の局所構造を画像化可能な電気化学周波数検出型原子間力顕微鏡(EC-FM-AFM)を開発してきた。電極界面に固定された酸化還元活性分子の可逆的価数変化に伴う局所構造変化を例として,本手法でいかに電極表面や電気二重層の局所構造に迫れるのかを紹介したい。
著者
善国 信隆 岩坪 健治 松井 幸雄 石谷 宏和 小熊 幸一
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.44-48, 1999-08-31 (Released:2010-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

淡水中のホウ素をフッ化水素酸系陰イオン交換法により濃縮し, ICP発光分析法で測定する方法を開発した。試料水にフッ化水素酸を添加し, 陰イオン交換樹脂カラムに通してホウ素をカラムに捕集する。次いでホウ素を硝酸でカラムから溶離し, ICP発光分析法 (182.6nm) で測定する。本法を市販飲料水に適用したところ, ホウ素の定量値は産地により異なり, 10~70ngBcm-3が得られた。また, 約50ngBcm-3の定量における相対標準偏差 (n=4または5) は7~12%であった。
著者
藤井 靖彦
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.68-79, 2004-05-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
15

イオン交換は言うまでもなく, 優れた化学分離法であり, 同位体の分離までにも応用されうる。本論文は化学平衡において発生する同位体効果の原理から説き始め, イオン交換樹脂を用いた同位体分離への応用まで記述している。本研究では種々の条件下で実験をおこない同位体分離係数と理論段高さを実験から求めており, 特に15N濃縮系のHETPについて流速, 吸着帯移動速度依存性を詳しく調べた。分離係数を求める研究はより重い元素, 遷移金属元素, 希土類元素, アクチノイド元素等の同位体効果へ拡大してきた。錯形成の同位体効果よりも, 酸化還元をともなう系がより大きな同位体効果を示すことから, 今後とも化学交換反応は有効な同位体分離技術として発展する可能性がある。
著者
浅輪 智丈 杉山 幸宏 小林 幸基
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.42-46, 2016-09-25 (Released:2016-09-21)
参考文献数
6
被引用文献数
2

当社は水道水向け殺菌剤, 高純度次亜塩素酸ソーダ水溶液「ニッケイジアソー®S」の上市を皮切りに, その応用展開として化学反応向け次亜塩素酸ソーダ5水塩「ニッケイジアソー®5水塩」を開発し, 多くの研究者の方々に使用していただくための, 基礎的な酸化反応例や物性情報の収集を進めてきた。ここではニッケイジアソー®5水塩を紹介し, その特徴と幾つかの応用事例についても報告する。
著者
三村 均
出版者
Japan Society of Ion Exchange
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.45-51, 2014
被引用文献数
2

東日本大震災で発生した大津波は,福島第一原子力発電所を襲い,原子力発電の安全神話を覆すレベル 7 の原子力事故を引き起こした。国内最悪の事故はいまだ収束に至らず,発電所周辺住民は,震災と原子力事故という二重の苦しみの生活を強いられている。事故対策を進める上で,50 万トン規模の高汚染水が大きな障害となっている。海水が混入した高汚染水の浄化,特に Cs の選択的除染に対しては,無機イオン交換体充填吸着塔による循環注水冷却システムが稼動しており,冷温停止が達成されているが,運転システムの高度化や二次固体廃棄物の安全管理および処分が課題となっている。ここでは,ゼオライトを主体とした Cs および Sr 選択性吸着剤の吸着特性および固化特性を比較評価するとともに,吸着剤の高機能化の試みを紹介する。わが国に豊富に産出する天然産ゼオライトは,Cs に高い選択性を有すると共に,高温での Cs ガスのトラッピング機能および安定固化を実現できる自己焼結機能など優れた特性を有しており,高汚染水の処理および処分において今後重要な役割を果たすものと期待できる。<br>
著者
竹下 健二 尾形 剛志
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-5, 2012 (Released:2012-02-02)
参考文献数
6
被引用文献数
7 4

原子炉施設内には放射性物質を含む汚染水や汚染海水が大量に蓄積され,その中の Cs 回収にはフェロシアン化鉄(吸着剤)と無機凝集剤を用いた凝集沈殿法とフェロシアン化鉄のシリカ造粒体を用いた吸着法が適用できる。凝集沈殿法では真水・海水のいずれの条件であっても汚染水中の Cs をほぼ完全に(DF~104)回収できた。吸着法では,ゼオライトでは適用が難しい,極微量 Cs(10 ppb 以下)を含む海水から効率的に Cs を回収できた。更に,環境汚染物質の除染技術への応用として下水汚泥からの Cs 回収について検討した。福島市の実下水汚泥(105 Bq/kg)に対して亜臨界水による水熱分解と凝集沈殿を組み合わせた複合プロセスを適用することで,下水汚泥から 96% の Cs を沈殿回収することに成功した。