- 著者
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二宮 嘉行
- 出版者
- Japanese Society of Applied Statistics
- 雑誌
- 応用統計学 (ISSN:02850370)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.3, pp.117-130, 2000-03-30 (Released:2009-06-12)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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本論文では確率場の変化点検知に関する検定を扱う.特に例として,正規分布に従う二元配置のデータにおける交互作用の変化点をとりあげる.このような検定では,帰無仮説のもとで尤度比統計量が,同一の正規分布に従いかつ正の相関をもつ複数個の確率変数の最大値となることが多々あり,棄却域を構成するためにはその統計量の裾確率の評価が必要となる.この裾確率の導出は多重積分の数値評価を必要とし,場が大きくなると計算が困難になる傾向をもつ.そこで正確な裾確率を得ることはあきらめ,かわりに裾確率の上限を容易な計算で与えることを考える.これは保守的な検定を構成することを意味する.まず,本来は異なるタイプの裾確率を評価するチューブ法に工夫を加え,今の問題に適応させることによって上限を得る.次に,これと過去の結果である一次Bonferroni不等式,改良Bonferroni不等式とを組み合わせ,正確な裾確率により近い上限を得る.この手法をチューブ適用法と名付け,Bonferroni不等式による方法と比較するため,ある正の相関をもつ正規定常確率場の最大値の裾確率と,上で述べた検定統計量の裾確率とを各手法で評価する.そして,特に確率変数間の相関が高い時にチューブ適用法が有効であることを確認する.