著者
二宮 嘉行
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.275-294, 2022-03-03 (Released:2022-03-10)
参考文献数
31

赤池情報量規準AICを元来の定義に基づいて導出したときに,罰則項がパラメータ数の2倍から大きくずれるような設定として,因果推論の基本である傾向スコア解析がある.周辺構造モデルにおける周辺構造の選択問題に対し,傾向スコアに基づくセミパラメトリックアプローチをとっているにもかかわらず,AICを形式的に用いると大きく過適合することになる.そのセミパラメトリックアプローチにおいて近年広く用いられているものに,二重頑健推定と呼ばれる,モデル誤特定に対して強い推定がある.本稿では,共変量バランシングのアイディアを採用した二重頑健推定に関して,損失関数を通常の対数尤度から変更することで外れ値に対しても強い推定を考える.そして,その頑健性を保持させたまま罰則項を導出し,妥当性を有する情報量規準として三重頑健情報量規準を提案する.数値実験では,まずモデル誤特定も外れ値もないケースで,罰則項をパラメータ数の2倍とした形式的な情報量規準と比べ,三重頑健情報量規準が明らかに予測性能の意味で優越することを示す.そして,モデルを誤特定させたり,外れ値を混入させたりしたケースを扱い,三重頑健情報量規準が影響を受けにくいことを確認する.
著者
二宮 嘉行
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.29-47, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
29

説明変数の候補がたくさんあるときの回帰分析手法として,今やスパース推定は標準手法となっている.一方,スパース推定における正則化パラメータの選択については,たとえスパース推定のためのAICがシンプルな形で得られていて,かつ目的が良い予測をしようというものであっても,必ずしもそのAICは用いられておらず,つまり標準手法は定まっていないように見受けられる.本稿では,そういった標準手法が定まっていないケース,正確には正規線形回帰分析でLASSOを用いるケースで,LASSOとAICを組み合わせて推定したモデルの性能評価を数値実験でおこなう.具体的には,LASSOとAICを組み合わせたとき,リッジ正則化法とAICを組み合わせたとき,最尤法と通常のAICを組み合わせてベストサブセット回帰を用いたとき,およびLASSOと交差検証法を組み合わせたときを,予測二乗誤差の評価を通じて比較する.また,その交差検証法で,データの分割の仕方で推定結果がどのくらい違ってくるのかを,予測二乗誤差や選ばれたモデルの自由度のばらつきを数値評価することで確認する.このLASSOのためのAICはSURE理論により導かれるが,それほど知られていないように見受けられるため,最後に僅かに一般化した設定で導出をおこなう.
著者
西井 龍映 小西 貞則 坂田 年男 秦 攀 二宮 嘉行 増田 弘毅 田中 章司郎 二宮 嘉行 増田 弘毅 田中 章司郎 清水 邦夫 江口 真透 内田 雅之
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

超高次元データにも適応可能な分類手法が近年求められている.そこで柔軟な判別境界を表現できて過学習となりにくいbagging型AdaBoostを提案した.また地球環境空間データの解析のため,空間依存性をマルコフ確率場でモデル化し,森林被覆率の判別問題や回帰問題,土地被覆割合の推定手法を考察した.なお統計モデル選択のための情報量基準についての専門書を出版した.
著者
柳川 堯 小西 貞則 百武 弘登 内田 雅之 二宮 嘉行 川口 淳 長山 淳哉 野中 美祐
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

高次因果モデリングの有力な手法として、グラフィカルモデリングが提案されているが、連続変量の場合多次元正規分布が仮定されており、制約的でしかも線形関係だけが対象とされている。これを、高次非線形因果モデリングに拡張することを狙って順位相関係数を利用する理論を発展させ手法を開発した。また、分担者の協力を得てその計算アルゴリズムを開発しシミュレーションを行いその有効性を評価した。さらに、共同研究者から提供されたデータに適用し乳幼児の甲状腺機能、免疫機能に与える環境汚染物質のインパクトを明らかにした。その他、潜在構造モデルを用いる離散型変数、連続型変数混在の場合のグラフィカルモデリング、時系列データに関するグラフィカルモデリング、ノンパラメトリック共分散分析のグラフィカルモデリングに関して分担者と共同研究を行い、いくつかの価値ある結果を得た。これに関する基礎研究においても、以下のような成果をえた。・超高次元データから有益な情報やパターンを抽出するための手法開発に取り組み,基底展開法を用いた次元圧縮と圧縮したデータ集合に基づく識別・判別問題を定式化し,新しい解析手法を提唱した.開発した解析手法をシステム工学,生命科学の分野の問題に応用し,その有効性を立証した.・繰り返し測定値に対する非線形モデルのパラメータの関数について、コントロールとの多重比較のための同時信頼区間の近似を与え、その精度をシミュレーションにより検証した。・小さな拡散をもつ拡散過程に従う離散観測データから,未知のドリフトパラメータを推定する研究を行った.具体的には,条件付き期待値をIto-Taylor展開を用いて近似することにより近似マルチンゲール推定関数を構成した.それから得られる推定量が非常に弱い条件の下で漸近有効性をもつことを証明した.
著者
二宮 嘉行 栁原 宏和 吉本 敦
出版者
FORMATH研究学会
雑誌
FORMATH (ISSN:21885729)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.43-56, 2007 (Released:2020-06-05)
参考文献数
15

林分内の間伐効果・競合効果・成長パターンの異質性などを検知する問題では, 非正則モデルに基づく分析が必要となるが, それらの分析手法には通常の統計理論を適用することはできない. 状況や検証したい仮説により使用する非正則モデルは異なり, 今までの非正則モデルに基づく分析では, それらのモデルごとに性質が議論されてきた. しかしながら, 近年それらを統一的に扱う理論が発展されつつある. 本論文では, 非正則モデルの主である局所錘モデルにおける検定問題に注目し,通常の検定とどう異なるかを説明し, 林分成長分析におけるその必要性について検討する.
著者
二宮 嘉行
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.117-130, 2000-03-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本論文では確率場の変化点検知に関する検定を扱う.特に例として,正規分布に従う二元配置のデータにおける交互作用の変化点をとりあげる.このような検定では,帰無仮説のもとで尤度比統計量が,同一の正規分布に従いかつ正の相関をもつ複数個の確率変数の最大値となることが多々あり,棄却域を構成するためにはその統計量の裾確率の評価が必要となる.この裾確率の導出は多重積分の数値評価を必要とし,場が大きくなると計算が困難になる傾向をもつ.そこで正確な裾確率を得ることはあきらめ,かわりに裾確率の上限を容易な計算で与えることを考える.これは保守的な検定を構成することを意味する.まず,本来は異なるタイプの裾確率を評価するチューブ法に工夫を加え,今の問題に適応させることによって上限を得る.次に,これと過去の結果である一次Bonferroni不等式,改良Bonferroni不等式とを組み合わせ,正確な裾確率により近い上限を得る.この手法をチューブ適用法と名付け,Bonferroni不等式による方法と比較するため,ある正の相関をもつ正規定常確率場の最大値の裾確率と,上で述べた検定統計量の裾確率とを各手法で評価する.そして,特に確率変数間の相関が高い時にチューブ適用法が有効であることを確認する.
著者
吉本 敦 庄司 功 尾張 敏章 加茂 憲一 二宮 嘉行 木島 真志 庄司 功 加茂 憲一 尾張 敏章 柳原 宏和 二宮 嘉行 佐々木 ノピア 木島 真志
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1992年の生物多様性条約採択以降、生態系保全政策のグローバルな影響への関心が高まっている。このような保全政策はある地域の政策が他の地域の生産活動に及ぼす影響を考慮しながら、地域レベルの生態系サービス(多次元的な財)の生産調整を行う必要がある。その結果、地域的あるいは国際的に効果的・効率的かつ実行可能な保全政策を展開することが可能となる。本研究では、トルコ、韓国、日本を中心に、森林資源から供与される多次元的な財の中で、特に生息地供与機能、侵略的外来種防止機能、美的景観供与機能を特定するモデルを開発し、森林資源・生態系管理に対する時空間最適化モデルの構築により、それら機能を定量的に明らかにした。