著者
梅本 奈美子 布施 晶子 杉浦 正美 鈴木 正子 岡見 雪子 辻 とみ子
出版者
The Japan Dietetic Association
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.356-365, 2014

児童養護施設に入所している子どもたち(施設入所児童)が、自立して食生活を営む力を習得するために、実用的で効果的な食育システムの開発と食育プログラムの作成に必要な基礎調査を行った。名古屋市内児童養護施設14施設の施設入所児童(3歳~18歳)を調査対象者とし、食育指導状況調査、身体状況調査、調理実習による技術調査、アンケートによる食意識調査を実施した。食意識調査は、名古屋市内S小学校在籍児童を比較対象者(家庭生活児童)とした。幼児では、食事の姿勢についてのクイズ正解率が95.8%と正しい知識が身に付いていた。小学生低学年では、施設入所児童は家庭生活児童と比較し、野菜の判別クイズ正解率が有意(<i>p</i><0.05)に低く、野菜の名前を知らないことが分かった。また、施設入所児童は「食事の前に手洗いを行う」項目では、83.1%と家庭生活児童の52.7%と比べ有意(<i>p</i><0.05)に高く、施設における指導の効果が表れていた。「ごはんの時間が楽しみ」と答える割合が、幼児96.4%、小学生低学年81.7%、小学生高学年64.7%、中高生50.0%と年齢が上がるにつれて有意(<i>p</i><0.001)に低くなり、食に対する肯定感が低くなることが分かった。しかし、調理の経験が多い子どもは、食に対する肯定感が高くなり、自立後の自炊に対する不安感が少なかった。本研究の結果から、児童養護施設の食育指導においては、幼児から小学生低学年までに食育体験を多くさせることが有効な指導であり、子どもたちが豊かな食経験を会得できる大切な期間と考えられた。また、小学生高学年からは、技術的体験が多い計画を立案することが有効であると考えられた。
著者
仲本 桂子 渡邉 早苗 工藤 秀機 ノパラタナウォン サム 蒲原 聖可 ラダック ティム 土田 満 宮﨑 恭一 サーシャン ディリープ 田中 明
出版者
The Japan Dietetic Association
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.267-278, 2013

ベジタリアンの研究によると、ベジタリアンは、ビタミン B <SUB>12</SUB>、 ビタミンD の摂取量が非ベジタリアンより有意に低く、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB <SUB>2</SUB> 、n-3 系多価不飽和脂肪酸(以下、n-3 系脂肪酸)の低摂取が懸念される。そこで、日本人用ベジタリアンフードガイド(JVFG)を用いて、日本人ベジタリアン男性(n=24)と女性(n=60)を対象に、栄養教育を行い、栄養状態の改善を試みた。 JVFG の栄養教育の介入前と後に、食事記録法による食事調査を行った。うち、16 名に対し、身体計測および血糖、尿酸、アルブミン/グロブリン比(A/G)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、無機リン、鉄、総コレステロール、高比重リポたんぱくコレステロール、中性脂肪、ヘモグロビン(Hb)、プレアルブミンの血液生化学検査も行った。 結果、ベジタリアンで低摂取が懸念された栄養素のうち、女性において、ビタミンB <SUB>2</SUB>(p<0 . 05)、亜鉛(p<0 . 01) の摂取が有意に増加した。しかし、ビタミンA、ビタミンD、ビタミン B <SUB>12</SUB>、カルシウム、n-3 系脂肪酸の摂取量に有意な増加は見られなかった。身体・血液生化学成績では、女性においてA/G(p<0 . 01)、カルシウム、Hb(p<0.05)が有意に増加し、血糖(p<0.01)、尿酸、上腕三頭筋皮下脂肪厚(p<0.05)は有意に低下した。 以上より、日本人ベジタリアン、特に、女性において、JVFG の栄養教育介入により、栄養状態が変化することが示唆された。
著者
関田 頼子 時田 佳代子 時田 純 西山 八重子 生田目 圭子 内田 加代子 久代 明 饗場 直美
出版者
The Japan Dietetic Association
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.440-445, 2015

特別養護老人ホーム潤生園では、2009年9月より入居者のQOLの向上を目的に、発酵乳製品を毎日1個摂取している(乳酸菌飲料週4回、ヨーグルト週3回)。当園では摂取開始以前より入居者の健康状態や排便状況をデータベース化しており、摂取前後のデータを比較することで、発酵乳製品の継続摂取が入居者の排便状況や健康状態に、どのような影響を及ぼすかを検証した。月平均の排便回数は摂取後、有意に増加していた(月平均27.1回から32.8回に増加、<i>p</i><0.001)。また、坐薬使用回数も、摂取後1人当たり年間22.6回から14.5回へ有意に減少し(<i>p</i><0.001)、浣腸使用回数においても、摂取後1人当たり年間7.0回から4.7回へ有意に減少していた(<i>p</i>=0.03)。発熱日数や回数についても、摂取後減少していたが、有意な差は認められなかった。以上の結果から、発酵乳製品の継続摂取により、排便回数の増加、坐薬使用回数の減少、浣腸使用回数の減少が認められ、入居者の排便状況の改善に寄与していることが示された。