- 著者
-
蒲原 聖可
- 出版者
- ファンクショナルフード学会
- 雑誌
- Functional Food Research (ISSN:24323357)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, 2020
<p><b>背景</b>:地方自治体とヘルスケア企業との公民連携による健康寿命延伸産業創生および課題解決型保健事業の取り組みが散見されるようになった.</p><p><b>目的</b>:公民連携による健康づくり事業としての非対面型減量プログラム「さかいまちメタボ脱出プロジェクト」(茨城県境町)の有用性を検証する.</p><p><b>方法</b>:茨城県猿島郡境町在住の成人肥満者を対象に,ICT(Information and Communication Technology;情報通信技術)対応・非対面型減量プログラムを構築し,2017 年11 月から2018 年2 月の間に,機能性食品素材を含むフォーミュラ食(置き換え食)の利用を通じた,肥満改善施策を「さかいまちメタボ脱出プロジェクト」として実施した.本プロジェクトでは,(1)管理栄養士を中心とした医療有資格者による非対面型支援,(2)1 日1 食を目安にフォーミュラ食を利用,(3)減量に関する啓発情報の定期配信,(4)運動の啓発動画を提供,(5)低エネルギー食品や機能性食品成分の利用に関する案内を行った.なお,フォーミュラ食として用いた「DHC プロティンダイエット」の標準的な製品は,1 袋50 g 当たりのエネルギー量が167 kcal であり,タンパク質20.1 g,推奨量の約3 分の1 のビタミン類およびミネラル類,その他の機能性食品素材を含有する.また,希望者に対して,プログラム実施前後において,腹部CT撮影による内臓脂肪面積を測定した.さらに,プロジェクト終了時に,住民参加型イベント「さかいまちダイエットアワード」を開催した<sub>.</sub></p><p><b>結果</b>:87 名(男性42 名,女性45 名,平均年齢47.2 歳)がプロジェクトを完了した.12 週間のプログラム前後の変化(mean ± SE)は,BMI(kg/m <sup>2 </sup>)が29.0 ± 0.3 から27.1 ± 0.4 へ,体重(kg)が77.0 ± 1.3 から71.4 ± 1.3 へ,腹囲(cm)が96.1 ± 0.9 から89.1 ± 0.9 へ,それぞれ有意に減少した(<i>p</i><0.01).なお,参加者全員の減量の総計は,12 週間で337.8kg に達した.さらに,52 名が腹部CT撮影による内臓脂肪面積の評価を受け,介入前の145.62 ± 7.62 cm<sup> 2 </sup>から,介入後に119.65 ± 8.04 cm<sup> 2 </sup>へ有意な減少を認めた(<i>p</i><0.01).</p><p><b>考察</b>:肥満の改善という行政課題に対する取り組みとして,公民連携による健康づくりとして,非対面型減量プログラムを実施し,一定の有効性が認められた.今後,ファンクショナルフード素材を扱うヘルスケア企業の可能性として,公民連携に基づく健康寿命延伸産業創生および課題解決型保健事業の取り組みを継続する.</p>