著者
牧野 博 久保田 博之 石川 英司 酒井 隆史 松田 一乗 秋山 拓哉 大石 憲司 久代 明
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.15-25, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
55

胎児の腸内は基本的に無菌状態であり,出生時に母親由来および環境由来の細菌に暴露されることで新生児の腸内細菌叢の形成が始まる.本稿では,まず母親の腸内および腟内細菌叢の重要性について述べ,新生児の腸内細菌叢の形成にビフィズス菌の母子伝播,出産形態,授乳形態などの因子がどのように関わっているかを概説する.また,無症状ながら乳児期特有に認められる病原性細菌の感染と定着事例を報告し,最後に新生児・乳児を対象としたプロバイオティクス生菌菌末の介入試験について紹介する.
著者
河合 光久 瀬戸山 裕美 高田 敏彦 清水 健介 佐藤 美紀子 眞鍋 勝行 牧野 孝 渡邉 治 吉岡 真樹 野中 千秋 久代 明 池邨 治夫
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.181-187, 2011 (Released:2011-09-06)
参考文献数
16
被引用文献数
2

便秘傾向で60歳以上の健常成人男女58名(平均年齢68.8±5.3歳)に,Bifidobacterium breveヤクルト株が製品1個あたり1.0×1010 cfu含まれるはっ酵乳(商品名 ミルミル)を連続4週間摂取するオープン試験を実施した.被験者は排便日数が週に3から5日で,便の硬めな(便の水分含量が70%未満)人を選択した.はっ酵乳(試験食品)の4週間摂取は,排便量の増加を伴った排便回数および排便日数の有意な増加を示した(各々p<0.0001).さらに3日間以上連続で排便のなかった被験者の割合も試験食品摂取により低下した(p=0.013).しかし,便の硬さを表す便性状スコア(Bristol stool scale)の評価では,試験食品の摂取によって平均スコアに変化は認められなかった.症状の程度を5段階で評価した排便時の症状および腹部症状スコアに対し,試験食品はいきみおよび残便感の平均スコアを低下し(各々p=0.022および0.0002),症状の軽減が示唆されたが,腹痛および腹部膨満感のスコアには顕著な変化はみられなかった.色素を経口摂取してから便中に色素が検出されるまでの時間(腸管通過時間)を観察したところ,色素の滞留時間は摂取前後で変化はみられなかった.以上の結果より,連続4週間のB.breveヤクルト株を含むビフィズス菌はっ酵乳の摂取は,便秘傾向な60歳以上の健常な男女において排便量の増加を促し,排便頻度の増加および排便リズムを安定化させる便秘改善効果が示唆された.また,排便時のいきみや残便感の症状を改善する可能性も示唆された.
著者
庄司 吏香 山中 克己 早瀬 須美子 河合 光久 瀬戸山 裕美 高田 敏彦 久代 明 藤木 理代
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.141-145, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
25

This study aimed to clarify the influence of dietary habits and daily intake of fermented milk containing Lactobacillus casei strain Shirota, 1.5×1010 cfu/65 mL/day, on bowel habits in elderly nursing home residents. A total of 20 elderly nursing home residents (2 men, 18 women, age 88.1±6.7 years) participated in this study. We recorded the amount of food intake and bowel habits (defecation frequency and laxative administration) of residents during a designated non-intake period (6 months) and an intake period (6 months). During the intake period, defecation frequency increased from 36.5±13.7 to 41.0±14.4% (p<0.05). Frequency of laxative administration decreased slightly from 26.6±13.0 to 24.9±14.2% (there is no significant difference). Among participants who had improved defecation frequency, the amount of food intake (individual eating rate) was slightly larger than that in those that did not improve defecation frequency (94.0±5.1% vs. 89.1±13.6%). These findings suggest that daily intake of fermented milk containing Lactobacillus casei strain Shirota might provide benefits including improved bowel habits in elderly nursing home residents.
著者
関田 頼子 時田 佳代子 時田 純 西山 八重子 生田目 圭子 内田 加代子 久代 明 饗場 直美
出版者
The Japan Dietetic Association
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.440-445, 2015

特別養護老人ホーム潤生園では、2009年9月より入居者のQOLの向上を目的に、発酵乳製品を毎日1個摂取している(乳酸菌飲料週4回、ヨーグルト週3回)。当園では摂取開始以前より入居者の健康状態や排便状況をデータベース化しており、摂取前後のデータを比較することで、発酵乳製品の継続摂取が入居者の排便状況や健康状態に、どのような影響を及ぼすかを検証した。月平均の排便回数は摂取後、有意に増加していた(月平均27.1回から32.8回に増加、<i>p</i><0.001)。また、坐薬使用回数も、摂取後1人当たり年間22.6回から14.5回へ有意に減少し(<i>p</i><0.001)、浣腸使用回数においても、摂取後1人当たり年間7.0回から4.7回へ有意に減少していた(<i>p</i>=0.03)。発熱日数や回数についても、摂取後減少していたが、有意な差は認められなかった。以上の結果から、発酵乳製品の継続摂取により、排便回数の増加、坐薬使用回数の減少、浣腸使用回数の減少が認められ、入居者の排便状況の改善に寄与していることが示された。