著者
中出 麻紀子 村上 晴香 宮地 元彦 饗場 直美 森田 明美 霜田 哲夫 渡邊 昌
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.44-53, 2017-03-31 (Released:2019-06-14)
参考文献数
27

我々は,肥満者に対する行動科学的手法を用いた減量プログラム(佐久肥満克服プログラム)を開発し,無作為化比較対照試験および1年間の追跡により,その有効性を明らかにしてきた。本資料論文では,日本運動疫学会プロジェクト研究「介入研究によるエビデンスの『つくる・伝える・使う』の促進に向けた基盤整備」の一環として,減量プログラムのエビデンスを提供し,プログラムの一般化可能性についてRE-AIMの観点から検討を行った。本減量プログラムは,食事や身体活動の改善に関する目標を対象者自身が考え,日常生活において実践できるよう,医師,管理栄養士,健康運動指導士が連携し支援を行うものであった。対象は,人間ドック受診者における肥満者であり,プログラムの到達度は24.1%であった。介入群の対象者では,プログラムにより,体重等の減少やその維持が認められた。 本プログラムは特別な施設等を必要とせず比較的容易に実施することが可能であるが,今回総勢19名もの管理栄養士・健康運動指導士が指導に携わり,その多くが研究所のスタッフであったこと,介入に多くの時間を要したことを考えると,通常の保健指導の現場へそのまま適用するのは困難であると考えられる。したがって,今後,今回得られた成果から介入手法の中で効果的であったものを明確にし,それを現場の予算に応じて活用していくことが重要だと考えられる。
著者
饗場 直美 金田 雅代 中馬 和代 遠山 致得子 廣田 美佐子 村井 栄子 赤松 美雪 川本 輝子 西尾 佳代 亀ヶ谷 照子
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

栄養教諭制度の導入以降10年間の学校給食の変化と給食の食育展開や、学校での食育の連携について実態調査を実施した。 全国7県の研究チームで、平成17年、21年、26年の3年間の給食献立内容について解析した結果、主食+主菜+副菜が明確な献立の増加、野菜の提供の増加、和洋中の献立の区別の明確化、献立中の食塩量の減少などが明らかになった。一方、設備などの環境要因も献立作成に影響を与えていた。給食を活用した食指導状況をみると、食育の6つの観点の中で、「食事の重要性」の観点をもたせた献立が増加していた。 以上のことから、栄養教諭はより意図の明確な献立を作成し給食指導を行って来たことが明らかになった。
著者
織本 智香 山田 五月 饗場 直美
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.322-327, 2020 (Released:2020-06-01)
参考文献数
7

本調査の目的は、療養高齢者の栄養・食生活支援上の課題を明確化し、課題解決に向けた必要な取り組みおよび体制構築に対する方向性を明らかにすることである。対象者は、東京都の西多摩圏域に所在する介護および看護関連事業所および各専門職(介護支援専門員、看護師、訪問介護員)である。調査方法は、自記式調査用紙を用いたアンケート調査および聞き取り調査である。 栄養・食生活支援上の課題があると90%以上が回答し、その中で、最も優先度が高い課題は、介護支援専門員が「適切な水分摂取量への対応」、看護師が「摂食・嚥下機能の評価」、訪問介護員が「栄養バランスのとれた食事への対応」と職種別に異なっていた。在宅高齢者の栄養管理の必要性について「必要がある」と回答した職種が多く、栄養・食生活支援の実施について困ったことがあるとの回答があった。しかし、相談先がないと回答する職種が各職種とも20%以上存在した。本調査は、今後、地域で多職種連携を行う際の参考となるデータであり、ひいては地域包括ケアシステム推進に向けた一助となる。
著者
関田 頼子 時田 佳代子 時田 純 西山 八重子 生田目 圭子 内田 加代子 久代 明 饗場 直美
出版者
The Japan Dietetic Association
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.440-445, 2015

特別養護老人ホーム潤生園では、2009年9月より入居者のQOLの向上を目的に、発酵乳製品を毎日1個摂取している(乳酸菌飲料週4回、ヨーグルト週3回)。当園では摂取開始以前より入居者の健康状態や排便状況をデータベース化しており、摂取前後のデータを比較することで、発酵乳製品の継続摂取が入居者の排便状況や健康状態に、どのような影響を及ぼすかを検証した。月平均の排便回数は摂取後、有意に増加していた(月平均27.1回から32.8回に増加、<i>p</i><0.001)。また、坐薬使用回数も、摂取後1人当たり年間22.6回から14.5回へ有意に減少し(<i>p</i><0.001)、浣腸使用回数においても、摂取後1人当たり年間7.0回から4.7回へ有意に減少していた(<i>p</i>=0.03)。発熱日数や回数についても、摂取後減少していたが、有意な差は認められなかった。以上の結果から、発酵乳製品の継続摂取により、排便回数の増加、坐薬使用回数の減少、浣腸使用回数の減少が認められ、入居者の排便状況の改善に寄与していることが示された。
著者
中出 麻紀子 饗場 直美
出版者
東海学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

朝食欠食は栄養バランスの偏り、学業成績の低下、肥満及び生活習慣病との関連が指摘されている。大学生を含む若年成人の朝食欠食者は全年代層の中で最も多いにも関わらず、朝食欠食者低減のための具体的アプローチ法については未だ確立されていない。本研究では、朝食の重要性に関する知識普及等の従来のアプローチ法に対し、よりテーラーメイド化したアプローチ法を提唱するため、朝食欠食者の持つ「朝食摂取に対するモチベーションに着目し、各モチベーションごとの対象者の特徴を明らかにすることで、より具体的なアプローチ法の確立を目指すことを目的としている。本年度は、昨年度までに収集した2~4年生の大学生男女2816名のデータ解析を行った。朝食を週4日以上食べる人を朝食摂取者とし、朝食欠食者は以下の4群に分類した:朝食を食べる気があり自信がある、朝食を食べる気があるが自信が無い、朝食を食べる気がないが食べる自信がある、朝食を食べる気も自信も無い。朝食摂取者及び上記欠食者の5群間で生活習慣、食事および体重に関する意識、環境の項目についてχ2検定を行い、その後多項ロジスティック回帰分析(上記有意差が認められた項目を独立変数、朝食摂取者及び欠食者4群を従属変数)を行った。その結果、朝食摂取者と比較し、朝食欠食者では共通して喫煙や夜食をする人が多かった。その他、朝食を一人で食べる、健康を維持するために必要だと思う朝食回数が少ない、食事バランスに関する知識が無い、経済的に厳しい等、朝食欠食者がもつモチベーション別に、朝食摂取の妨げとなる要因が明らかとなった。解析結果については学会発表を行い、現在、学術雑誌への論文投稿に向けて、原稿を執筆中である。