- 著者
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石坂 愛
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- E-journal GEO (ISSN:18808107)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.299-315, 2016-09-30 (Released:2016-10-11)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
-
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本研究では,都市化と宗教弾圧の歴史の中で発展した新宗教の聖地における教団と地域住民間の土地をめぐる葛藤の実態とその要因を明らかにすることを目的とする.研究方法として,奈良県天理市において進められる天理教教会本部の宗教都市構想の基盤となる八町四方構想に着目し,その計画地をめぐる地域住民と教団の交渉過程と,構想に対する地域住民の意識を追った.その結果,調査対象者の地域住民のうち約90%が天理教信者であるにも関わらず,約45%がこの構想に葛藤を抱いていることがわかった.その要因として,①教団の持つ宗教的イデオロギーと自身の考える教理の不一致があることがわかった.その他の要因として,②地域住民内部での八町四方構想に関する知識共有の薄弱化③教団と土地所有者のみで取り行われる土地・建物の譲渡交渉が考えられる.