著者
清水 克志
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.1-24, 2008-01-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
54
被引用文献数
2 2

本稿はキャベツ (甘藍) を事例に, 日本における外来野菜の生産地域が明治後期から昭和戦前期にかけて成立する過程を, 食習慣の定着と関わらせて考察することを目的とした. 明治前期に導入されたキャベツは, すぐには普及しなかった. 明治中・後期に, 都市の知識人がキャベツの新たな調理法を考案し, 大正期以降, その調理法が婦人雑誌や新聞で紹介された. また軍隊や学校給食などでキャベツがいち早く利用され, 都市住民の間でキャベツ食習慣の定着がみられた. 一方, 岩手県盛岡市などの各地の民間育種家は, 個々の地域の自然条件に適した作型であることに加え, 都市住民の嗜好に合致する国産品種を育成し, 生産地域の成立を促した. その結果, 長距離輸送が可能なキャベツは, 収穫期の異なる複数の生産地域から, 都市へ周年的に供給されるようになった. このことは, 外来野菜の生産地域の成立が, 食習慣の定着と密接に結びついて展開したことを示している.

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「岩手県や北海道などの寒冷地で導入当初からキャベツ生産が開始された理由は、明治前期に導入されたキャベツの品種が寒冷地に適する品種であったことに加え、結球野菜であるキャベツが、野菜類が欠乏する冬季において貯蔵が可能であったことによるものと考えられる」https://t.co/KU2HG9DhgQ https://t.co/ctDi6uiJ3O
「地理学評論」先月の月間アクセス数上位論文をご紹介します。 日本におけるキャベツ生産地域の成立とその背景としてのキャベツ食習慣の定着 清水 克志 https://t.co/1V4DNH3NTf
RT>南部甘藍の歴史、個人的に結構面白くて好き。明治以後移入された作物がこうやって地域に根づいていくのか、というね。 日本におけるキャベツ生産地域の成立とその背景としてのキャベツ食習慣の定着-明治後期から昭和戦前期を中心として- https://t.co/b36oVERvJP
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【地理学評論掲載論文】清水克志 2008.日本におけるキャベツ生産地域の成立とその背景としてのキャベツ食習慣の定着-明治後期から昭和戦前期を中心として-,地理学評論81,1-24.http://t.co/9xXSQyQCJ9

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