著者
鈴木 啓太 村本 由紀子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2017, (Released:2022-11-25)
参考文献数
21

指導者の暗黙理論(能力の可変性に関する信念)が課題に失敗した学習者への助言に与える影響を検討した。参加者に先生の立場から成績不振な生徒に対し助言させるというシナリオ実験を,サンプルを変えて二度実施した。(能力の固定性を信じる)実体理論的信念を強く持つ参加者ほど,努力量の多い生徒に対しては失敗の原因を能力不足に帰属して科目の変更を促す一方で,努力量の少ない生徒に対しては努力の継続を促すことが明らかになった。この結果から,実体理論的傾向の強い指導者は,学習者の努力とその結果を観察し,適性評価に基づいて助言を変えるというように,努力の持つ適性評価のための情報的側面を重視する可能性が示唆された。他方,(能力を可変的に捉える)増加理論的信念を強く持つ参加者ほど,生徒の努力量の多寡によらず科目の変更を促す程度が低く,努力の持つ成長の資源としての側面を重視することを示唆する結果が得られた。しかし間接効果は弱いものの,実体理論的信念が強い参加者と同様,能力に対する推論の媒介効果も見られ,増加理論的傾向の強い指導者が,適性評価のための努力の情報的側面についても考慮している可能性が示唆された。

言及状況

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教師として成績不振の生徒に助言するシナリオ実験にて、能力の実体理論を信じる人は生徒が努力している場合は科目変更を薦め、していない場合は努力の継続を薦めるが、増大理論を信じる人は努力量に拘らず科目変更を薦めにくい。 【論文】Suzuki & Muramoto (2022) 実社心研 https://t.co/skiUHtqFo2
J-STAGE Articles - 「一生懸命にやってみるまでわからない」:実体理論者が努力を情報として捉える時 https://t.co/7zjbFwveOX
J-STAGE Articles - 「一生懸命にやってみるまでわからない」:実体理論者が努力を情報として捉える時 https://t.co/8coUpFj7Yv
能力が固定的であると考える人は、努力量の多い人に対しては能力不足が失敗の原因だと考え、努力量の少ない人に対しては努力の継続を促す。一方で能力が可変的であると考える人は、努力量に関する情報に影響されず評価する。 https://t.co/L0Kunri7j5
実験社会心理学研究に掲載が決定した、村本由紀子先生との共著論文が早期公開されました。 関心ある方いらっしゃいましたらご覧いただけますと嬉しいです。 https://t.co/bRojAPiWU2

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