- 著者
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[ケイ]斎 筆
- 出版者
- 竹川藤兵衛 [ほか]
- 巻号頁・発行日
- 1813
鍬形蕙斎(北尾政美)の草花絵本。通行書名は「草花略画式」。大本1冊。淡色摺り。文化10年(1813)10月、江戸・須原屋市兵衛、同善五郎、鶴屋金助、英平吉、竹川藤兵衛。文化10年12月の平(岸本)由豆流の序には、「このふみのこと、風をもゑかゝすして風のけはひいちしるく、つゆをもあらはには見せて、枝のおもけなるさま、花のさきこほれたるいろとり、くちきかきのすみをにほはせたるなと、ことそきたるものから、すへてたゝそのものと見ゆる」と本絵本を称している。序中の「くちきかき」は朽木書きで、焼き筆による下絵のこと。その朽木書きのような省筆でありながら、風、露などの風情を描かずして表現し得ているという。墨線は用いず、淡色の上に、萌葱色を基本に3色ほどと色数も少ないが、独自の淡麗な画趣を湛えている。取り上げられた草木も、なたねの花、夕かほ、けゝ花、露艸、その他、賞翫用のそればかりでなく、ふだん山野や路辺で目にする草花について注意の目を向けている。蕙斎の一連の略画式の中では、最も遅れて成った。(鈴木淳)(2017.2)