- 著者
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植阪 友理
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.1, pp.80-94, 2010
- 被引用文献数
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自己学習力の育成には, 学習方略の指導が有効である。中でも, 複数の教科で利用できる教科横断的な方略は, 指導した教科以外でも活用できるため有用である。指導された学習方略を他の教科や内容の学習に生かすことは「方略の転移」と呼べる。しかし, 方略の転移については, 従来, ほとんど検討されてきていない。そこで本研究では, 方略の転移が生じた認知カウンセリングの事例を分析し, 方略の転移が生じるプロセスを考察する。クライエントは中学2年生の女子である。非認知主義的学習観が不適切な学習方法を引き起こし, 学習成果が長期間にわたって得られないことから, 学習意欲が低くなっていた。このクライエントに対して教訓帰納と呼ばれる学習方略を, 数学を題材として指導し, さらに, 本人の学習観を意識化させる働きかけを行った。学習方法の改善によって学習成果が実感できるようになると, 非認知主義的学習観から認知主義的学習観へと変容が見られ, その後, 数学の異なる単元や理科へ方略が転移したことが確認された。学習方略を規定する学習観が変容したことによって, 教科間で方略が転移したと考えられた。また, 学習者同士の教え合いが多いというクライエントの学習環境の特徴も影響したと考えられた。