著者
植阪 友理
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.80-94, 2010-03-30
被引用文献数
7

自己学習力の育成には,学習方略の指導が有効である。中でも,複数の教科で利用できる教科横断的な方略は,指導した教科以外でも活用できるため有用である。指導された学習方略を他の教科や内容の学習に生かすことは「方略の転移」と呼べる。しかし,方略の転移については,従来,ほとんど検討されてきていない。そこで本研究では,方略の転移が生じた認知カウンセリングの事例を分析し,方略の転移が生じるプロセスを考察する。クライエントは中学2年生の女子である。非認知主義的学習観が不適切な学習方法を引き起こし,学習成果が長期間にわたって得られないことから,学習意欲が低くなっていた。このクライエントに対して教訓帰納と呼ばれる学習方略を,数学を題材として指導し,さらに,本人の学習観を意識化させる働きかけを行った。学習方法の改善によって学習成果が実感できるようになると,非認知主義的学習観から認知主義的学習観へと変容が見られ,その後,数学の異なる単元や理科へ方略が転移したことが確認された。学習方略を規定する学習観が変容したことによって,教科間で方略が転移したと考えられた。また,学習者同士の教え合いが多いというクライエントの学習環境の特徴も影響したと考えられた。
著者
植阪 友理 鈴木 雅之 市川 伸一 Manalo Emmanuel 和嶋 雄一郎 小山 義徳 瀬尾 美紀子 植阪 友理 Manalo Emmanuel
出版者
東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化センター
雑誌
Working Papers
巻号頁・発行日
vol.1, 2012-08-31

科学研究費補助金基盤研究B「学習方略の自発的利用促進メカニズムの解明と学校教育への展開」(代表 Emmanuel Manalo)
著者
市川 伸一 南風原 朝和 杉澤 武俊 瀬尾 美紀子 清河 幸子 犬塚 美輪 村山 航 植阪 友理 小林 寛子 篠ヶ谷 圭太
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.333-347, 2009 (Released:2010-09-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

COMPASS is an assessment test based on the cognitive model of mathematical problem solving. This test diagnoses components of mathematical ability which are required in the process of understanding and solving mathematical problems. The tasks were selected through the case studies of cognitive counseling, in which researchers individually interview and teach learners who feel difficulty in particular learning behavior. The purpose of COMPASS is to provide diagnostic information for improving learning process and methods of class lessons. Features of COMPASS include: The time limitations are set for each task to measure the target component accurately; questionnaires are incorporated to diagnose orientation toward learning behavior. The present paper aims to introduce the concept and the tasks of COMPASS to show how cognitive science contributes to school education through the development of assessment tests.
著者
MANALO Emmanuel 鈴木 雅之 田中 瑛津子 横山 悟 篠ヶ谷 圭太 溝川 藍 SHEPPARD Chris 植阪 友理 子安 増生 市川 伸一 楠見 孝 深谷 達史 瀬尾 美紀子 小山 義徳
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

1年目の今年は、3つのユニットに分かれ、21世紀型スキルのメカニズムの解明を中心に取り組んだ。1年ではあったが、複数の学術論文の学会発表を行った。グローバル・コミュニケーションユニットでは、第一に、大学における英語学習において、学力別にグルーピングすることの効果を明らかにした。第二に、日本の大学生を対象とした研究において、単純な反復課題では、学生の英語力の向上に結びつかないことを明らかにした。さらに、英語学習におけるe-learningの効果についても現在、検討中である。ディープ・ラーニングユニットでは、第一に、賛成反対の両方の立場を十分に理解した上で、統合的な議論を行う力を促す実験授業を行った。第二に、道徳授業において生徒の問いを重視するような授業の効果を明らかにした。第三に、大学生の宿題において、図表を活用しながら学習内容を説明することを促す実践を行った(この実践はグローバル・コミュニケーションの促進も狙っている)。また、3月にシンポジウムを実施し、全国から70名ほどの参加者を集めて議論を行った。クリティカル・シンキングユニットでは、第一に,探究学習活動を通して,学習スキルや批判的思考態度が育成されることを解明するために,高校の探究学習における学習スキルや批判的思考態度を測定する尺度,および「問い」を作る力を測定するパフォーマンス課題を作成した。そして,探究学習活動に取り組んでいる高校1年生を対象に質問紙調査を実施して,学習スキルと批判的思考態度の関係を明らかにした.第二に,青年期以降の道徳性と共感性を批判的思考に基づいて検討するために,社会的状況における道徳判断について測定する課題を作成した。そして、この課題とこれまでに開発してきた他の尺度を用い、10代~60代の参加者を対象にWeb調査を実施した。
著者
植阪 友理 光嶋 昭善
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.398-411, 2013 (Released:2014-05-21)
参考文献数
12
被引用文献数
3 1

説明文に比べると研究は少ないものの, 文学作品の指導が子どもの表象や認識に及ぼす影響を検討することは, 生涯にわたって文学を楽しむ大人を育成するためにも重要である。文学は読み手が体験を踏まえて再構成する自由度が大きく, 説明文よりも多様な状況モデルを許容する。中でも俳句は最も文字数が少なく, この特徴を強く有している。一方, 現在の俳句指導は解釈が定まっている名句の鑑賞が中心であり, 作句活動や相互の鑑賞活動はあまり行われていない。このため俳句本来の面白さに気づくことが難しい状態である。そこで名句の鑑賞のみならず, 作句活動や相互の鑑賞活動を取り入れた新たな単元構成を提案し, 子どもの認知に及ぼす効果を検討した。また, 鑑賞会では, (1)創作者を匿名とし, 創作者も鑑賞者と一体化して鑑賞させる, (2)鑑賞や創作の技法を明示的に教えるなどの工夫を加えた。ある児童の句に着目してやり取りを分析した結果, 異なる状況モデルを共有することで, 個々の児童の想定を超えたより豊かで新しい状況モデルが生み出されうること, 文学に対する興味が喚起されていることなどが示された。最後に, この指導から得られる新たな心理学研究の可能性を論じた。