著者
内田 良
出版者
東洋館出版社
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.201-221[含 英語文要旨], 2010

本稿の目的は,「リスク」の理論と分析手法を用いて,学校管理下における各種事故の「実在」,とくに事故の発生確率を比較することから,学校安全に関する今日的な「認知」のあり方を批判的に検討し,エビデンスにもとづいた学校安全施策を提唱することである。今日,学校安全の名のもと不審者対策に多くの資源が投入されている。いっぽう,学校における多種多様な事故を広く見渡して,事故の発生件数や確率を調べようとする試みは少ない。そこで本稿では多義的なリスク概念を手がかりに,次のように分析を進めた。まず社会学のリスク論から,リスクは社会的に構築されるという視点を得た。事故は「認知」に左右される。次に自然科学の方法から,事故の「実在」に注目して各種死亡事故の発生確率を算出した。その結果不審者犯罪よりも発生確率が高い事故が多くあることが明らかとなった。学校事故の特殊性は,管理するという「決定」に,多くの主体(国,自治体学校,保護者,地域住民)が容易に関与できる点である。このとき,「決定」はリスクをめぐるコミュニケーションを活性化させ,リスクに対する人びとの認知を敏感にさせていく。本稿が提唱したいのは,危機感が増幅し始めた早い段階においてエビデンスが参照されることである。事故を管理しようとする意志が多くの主体に増幅していく前に,「決定」の大きな権力を有する教育行政が,エビデンスにもとづいた「決定」をなすべきである。

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上野加代子先生による書評に対するリプライの中で宣伝されていた論文。児童虐待の社会構築主義→学校事故の社会構築主義+実証主義→柔道事故→『教育という病』という流れ。 内田良「学校事故の「リスク」分析 : 実在と認知の乖離に注目して」 http://t.co/kdVT3eR9Ed
★★スローガンだけでは子どもの命は救えない★★ 教育学や教育界は何十年も「学校安全」とか「子どもの安全」ということを謳ってきたけれども,そこにはいつも数字=エビデンスが不在でした。 拙稿 “学校事故の「リスク」分析” http://t.co/7CkVbFrkhG
★★スローガンだけでは子どもの命は救えない★★ 教育学や教育界は何十年も「学校安全」とか「子どもの安全」ということを謳ってきたけれども,そこにはいつも数字=エビデンスが不在でした。 拙稿 “学校事故の「リスク」分析” http://t.co/7CkVbFrkhG
@petitquimperois もともと内田良さんは学校事故に興味があったそうですが、調べてみると柔道による死亡事故が多くて驚いたそうです。磯さんの「フランス柔道論」(?)楽しみにしています!(以下、内田さんの論文です) http://t.co/qCs8xrd8lr
@petitquimperois もともと内田良さんは学校事故に興味があったそうですが、調べてみると柔道による死亡事故が多くて驚いたそうです。磯さんの「フランス柔道論」(?)楽しみにしています!(以下、内田さんの論文です) http://t.co/qCs8xrd8lr
ちなみに『教育社会学研究』のバックナンバーはこちらです。 http://t.co/0JZYcFVu

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