著者
谷 修祐 小嶋 光明 小野 孝二 伴 信彦 甲斐 倫明
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第54回大会
巻号頁・発行日
pp.249, 2011 (Released:2011-12-20)

放射線によって引き起こされるC3H/HeNマウスの急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia: AML)は、低線量でのヒトの白血病リスクを考える上で重要な実験モデルである。AMLを起こしたマウスの造血幹細胞では2番染色体の欠損およびその染色体に存在するSfpi1遺伝子の突然変異が確認されており、これらは骨髄の分化に重要な役割を持つPU.1の転写を抑制してAMLの発症に至ることが考えられている。しかし、AMLにおけるSfpi1遺伝子の突然変異について、ほとんどは点突然変異に起因し、その主な変異であるC:GからT:Aへのトランジションは自然突然変異によって生じるため、放射線によって発症する白血病のリスクを考えるためには2番染色体の欠損以外に放射線が自然突然変異率への影響を考慮する必要がある。自然突然変異は細胞が分裂する際に低確率で生じるものであるため、造血幹細胞を頂点とした各造血細胞の動態、および放射線の影響によってその動態がどのように変化するかを考慮することが重要である。本研究ではC3H/HeNマウスを用いた放射線照射実験より得られた造血幹細胞そして前駆細胞の分化、分裂のパラメータを元に、造血組織の各種動態を数理モデルで表し、各細胞数の時間的変化、およびその分裂回数をシミュレーションによる計算で求めた。また、Sfpi1遺伝子の自然突然変異確率に着目し、シミュレーションで得られた結果をもとに放射線によるマウスAML発症リスクを計算し、実験データと比較したので報告する。
著者
甲斐 倫明 遠藤 章 高橋 史明 佐藤 薫 伴 信彦
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

CT診断からの臓器線量計算を行うWebシステムWAZA-ARIにおいて、年齢と体型の個人差を考慮できるシステムに拡張したWAZA-ARI 2を開発した。未成年はフロリダ大学で開発した年齢別ファントムを用いた。成人体型の違いを計算するために、日本人の標準体型からBMIで2倍の標準偏差だけ外れるやせ型、2倍と5倍の標準偏差だけ外れる肥満型のファントムを皮下軟組織のみを変形することでファントムを構築した。また、実際の臨床で得られたCT画像をもとにボクセルファントムを構築し、臓器線量の個人差を実際の体型ごとに計算し、体型と臓器線量の関係を導いた。有効直径が体格の指数として利用できることがわかった。
著者
田渕 康子 吉留 厚子 伴 信彦 草間 朋子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.248-255, 2014-06-15

目的:本研究の目的は,正常周期女性の月経状態および月経随伴症状を明らかにすること,および1周期あたりの月経血量を実測し,月経血量の多寡に関する自己の認識を明らかにすること,さらに月経血量と月経随伴症状との関連を分析することである。 方法:19~39歳の女性184名の1周期の月経血量を実測した。初経年齢や月経周期日数,月経持続日数,月経血量に対する自己の認識,月経随伴症状について質問紙を用いて調査した。 結果:質問紙の回収率は168部で,正常周期133名,正常周期でない者27名(稀発月経,頻発月経など)だった。正常周期女性の1周期の平均総月経血量は77.4gであった。その中には,過少月経が4名,過多月経が11名いた。月経血量は月経開始後2日目にピークがあり,その後は急激に減少するパターンを示した。月経血量に対する自己の認識は,「少ない」17名,「ふつう」104名,「多い」11名だった。月経時の下腹部痛を自覚している者が74.7%,腰痛が54.9%であった。月経血量と腰痛との間には有意な関係が認められた。 考察:184名の女性の1周期の月経血量を測定した。正常周期月経にある女性の月経状態を明らかにした。月経血量の多寡を正しく自己判断することの困難さが示唆された。
著者
日本保健物理学会医療放射線リスク専門研究会 甲斐 倫明 伴 信彦 太田 勝正 小野 孝二 酒井 一夫 長谷川 隆幸 福士 政広 吉永 信治
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 : hoken buturi (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.42-51, 2011-03-01
参考文献数
20

Radiation use in medicine generally gives us the benefit that outweighs the risk. However, some patients are much concerned about the risk while some medical people are unaware of radiation risk. The aim of this report is to review the low dose risk not only in the reports of ICRP, UNSCEAR, BEIR and French academy but also in the scientific papers that have been paid attention to. On these bases, we discuss the low dose risk and how we face the risk in medicine in order to go for medical use of radiation to the right way. In particular, we hope this report will support medical people as well as radiation protection experts should understand the radiation risk in medicine on current scientific basis.