著者
⻆谷 詩織
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.184-205, 2023-03-30 (Released:2023-11-11)
参考文献数
188

2021年から文部科学省「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」が開催されるなど,ギフティッド児の理解とその支援の必要性が広く認識され始めている。本稿は,ギフティッドの的確な理解と,それに基づく今後の教育心理学分野における研究や実践の発展を目的とする。まず,世界的に共通理解のなされているギフティッドの定義と特性を押さえる。次に,日本における関連研究を概観する。その上で,ギフティッド研究や実践に取り入れると有効と思われる観点を4つあげる。まず,(1)ギフティッド児であれば誰もが特別な支援を要するわけではないという点を確認した上で,誰が支援を要するのかを明確にする。また,(2)ギフティッドの判定や診断の問題と,当該ギフティッド児が身を置く教育環境において特別な支援やプログラムを要するか否かとを分けて考える必要性を論じる。関連して,(3)ギフティッド判定において,その子に潜在的な才能があるかどうかとそれを発揮できるかどうかは分けて検討することの重要性を論じる。最後に,(4)現行の教育制度や実践に存在するギフティッド教育の要素を活かす可能性について論じる。