著者
横畠 徳太 高橋 潔 江守 正多 仁科 一哉 田中 克政 井芹 慶彦 本田 靖 木口 雅司 鼎 信次郎 岡本 章子 岩崎 茜 前田 和 沖 大幹
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.214-230, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
45
被引用文献数
1

パリ協定における目標を達成するために脱炭素社会を実現し,今後も変化する気候に社会が適応するためには,多くの人々が気候変動のリスクに関して理解を深めることが重要な課題である。このため我々の研究グループは,これまでに気候変動リスク連鎖を包括的に分かりやすく可視化する手法の開発を行った。本論文では,我々が開発した手法によって得られた,水資源・食料・エネルギー・産業とインフラ・自然生態系・災害と安全保障・健康の7つの分野に関連するリスク連鎖の可視化結果(ネットワーク図・フローチャート)について議論することにより,気候リスク連鎖の全体像を明らかにする。また,可視化結果を利用して行った市民対話イベントの実例を紹介することにより,我々の開発したネットワーク図・フローチャートの有用性や,気候リスクに関する市民対話の重要性について論じる。さらに,日本における気候変動リスク評価の概要について紹介し,気候変動リスク連鎖を評価するための今後の課題について議論する。
著者
木口 雅司 井芹 慶彦 鼎 信次郎 沖 大幹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_241-I_246, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
8

本研究では、地球温暖化に伴う気候変動が進行して、ある臨界点(ティッピングポイント)を過ぎた時点で不連続のような急激な変化が生じて、大きなインパクトをもたらすような気候変動の要素(ティッピングエレメント)の発現可能性について解析した。先行研究で述べられたティッピングポイントを用いて、4つの排出シナリオや緩和目標としての戦略シナリオと、ティッピングエレメントのうち北極海の夏の海氷の喪失とグリーンランド氷床の融解について関連性を導いた。その結果、ティッピングポイントの不確実性があるものの、各排出シナリオでのティッピングエレメントの発現可能性が示された。一方戦略シナリオでは、複数気候シナリオを用いて検討した結果、気候シナリオとティッピングエレメントの両方の不確実性を組み合わせて議論する可能性が示された。
著者
沖 大幹 芳村 圭 キム ヒョンジュン ゴドク タン 瀬戸 心太 鼎 信次郎 沈 彦俊
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.61-61, 2007

地下水、土壌水分、積雪水量などの陸水貯留量の変化は陸域水収支の特に季節変化を考える際には非常に重要である。最新のデータに基づき3種類の独立の手法で推定された大河川の総陸水貯留量の季節変化を相互比較し、それらの間の対応を検討した結果を報告する。
著者
内海 信幸 瀬戸 心太 鼎 信次郎 沖 大幹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_421-I_426, 2012 (Released:2013-03-26)
参考文献数
11

A new method to assess the causes of the changes in the extreme precipitation under changed climate was proposed. Previous methods have not explicitly considered the contribution of changes in the near surface atmospheric humidity to the changes in the extreme precipitation under changed climate, although the changes in the extreme precipitation can be affected by the changes in near surface atmospheric humidity through the changes in lifting condensation level. The new method can consider changes in near surface atmospheric humidity as well as the changes in atmospheric circulation and lapse rate of the ascending air parcel. The new method was applied to atmosphere-ocean coupled model output, provided for the Coupled Model Intercomparison Project Phase 5. It was confirmed that the new method can assess the regional difference of the contribution of the changes in near surface atmospheric humidity to the changes in the extreme precipitation with climate change.
著者
植木 仰 吉川 沙耶花 鼎 信次郎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

国際河川流域は,各流域国の間で農業,工業,生活,環境用水をめぐる争い(越境水紛争)の舞台となってきた.多くは流域国同士の話し合いにより解決する努力がなされてきたが,武力行使による軍事衝突が20世紀の間にアフリカと中東にて7件報告されている.人口増加や気候変動により世界規模での将来の水逼迫が深刻化した場合,稀少となった水資源を確保するために,国家間で政治的対立や武力衝突が頻発するリスクは否定できないため,水逼迫と水紛争の関係性を定量的に分析することは大変重要な課題であると言える.そこで,本研究では全球水資源モデルから推定された水逼迫指標を用いた過去の水逼迫状態や考えられる過去の水紛争要因から国際河川流域における越境水紛争生起確率モデルを構築した.構築されたモデルは概ね良好な予測性能を有すると言える結果となった.しかし,モデル構築に関して仮説の設定や説明変数の選出にはまだまだ検討の必要な課題があり,今後も情報収集を進めて,モデルの改良に取り組む予定である.