著者
大沢 真理 小笠原 祐子 ロバーツ グレンダ 田中 和子 合場 敬子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、経済グローバル化のもとで、「ニュー・エコノミー」として生じているとされる産業構造や労働組織など変化について、英、独、米および日本について、ジェンダー関係との関連を比較分析するもの。たとえば、産業や労働の組織の「フラット化」や「柔軟化」が語られながら、じつは社会的格差の拡大が懸念されること、また、近年の規制改革や福祉国家改革のベクトルでも、規制緩和や民営化ばかりではなく、再規制化やセーフティネット強化の要素が見逃せないこと、これらの事象のいずれもジェンダー関係と交差していること、が指摘される。対象4国は、今日の世界経済で大きな比重をもち、かつ相互に意味ある好対照をなしている。なにより4つの国は、異なる性格のジェンダー・レジームを持っている。アメリカは女性の就業を促進する方向に最も進んでおり、日本は女性の世帯内役割を最優先するジェンダー・レジームであるように見える。福祉と産業労働、家庭を横断するジェンダー・レジームは、収斂しているのか、あるいは強い経路依存性のもとで分岐しているのかなどの論点が、本研究で解明され発表されてきた。すなわち、2002年9月3日には東京大学において、公開シンポジウム「グローバル時代の「ニュー・エコノミー」-日米欧の比較ジェンダー分析」を開催し、本研究のコンセプトについて研究グループの外部から意見等を得た。その内容は、雑誌『現代思想』31巻1号(2003年1月号)の特集「トランスナショナル・フェミニズム」として発表された。2003年9月末にはブレーメン大学、2004年3月初めには日本国内で、海外共同研究者との研究会を集中的に開催した。研究の成果を広く社会に還元するべく、2004年3月4日に東京大学において、公開シンポジウム「グローバル時代の「ニュー・エコノミー」-日米欧の比較ジェンダー分析II」を開催(第18回東大社研シンポジウム)。
著者
ロバーツ グレンダ KAWANO SATSUKI KAWANO S.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究では、現代日本において、急激に進んできた少子化の傾向が、先祖供養に与える影響及びその対応策について考察しています。近年、子供のいない家庭や成人の未婚者も増加し、伝統的な家制度に基づいた先祖祭祀が難しくなっており、子孫がいなくても入れる合祀墓や自然葬(散骨)を選ぶ人も増えています。本研究ではそれらの対処法を選んだ人々の動機、家族背景、特に少子化との関連について参与観察、インタビュー、アンケート調査を行いました。また、少子化と先祖供養の存続に関する地域差を明らかにするため、本年度は北海道恵庭市、札幌市、青森県弘前市、岩手県水沢市及び真城町、東京都檜原村、愛知県岡崎市、名古屋市、京都府西京区、岡山県浅口郡船穂町、倉敷市の11か所で調査を行いました。その結果、高度経済成長期に町村部から都市に移住してきた人々の間では、少子化が合祀墓や散骨を選ぶ理由になりやすいことが明らかになりました。また、自然葬を行っているNPO法人「葬送の自由をすすめる会」の協力を得、自然葬を行った人々の追悼行為ついて遺族調査も行いました。その結果、遺族は従来の仏式の祭祀形態に必ずしもとらわれず、故人の意志を尊重し、その人らしさを大切にした追悼を行っていることが明らかになりました。従来の葬送形態の批判として行われることもある「生前葬」に関する調査結果も研究論文にまとめ、生前葬がその人らしい人生の最終章を飾る自己表現の一儀礼として行われていると論じました。