- 著者
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大沢 真理
- 出版者
- 日本家族社会学会
- 雑誌
- 家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.1, pp.24-35, 2015
- 被引用文献数
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働いて稼ぐこと,子どもを生み育てることにかかわる社会政策の影響を,比較ジェンダー分析する.1985年以来の相対的貧困率や非正規労働者比率の推移,近年の賃金動向を手がかりとして,日本において就業条件が劣化してきたことを概観する(Ⅲ).また,2000年代末のOECD諸国の貧困率および貧困削減率を検討する.日本では,税・社会保障制度による貧困削減率が,成人が全員就業する世帯や子ども(がいる世帯)にとって,マイナスである(Ⅳ–1).所得再分配がかえって貧困を深めるという事態はOECD諸国で異例であり,労働力人口の急減が憂慮される社会として,極めて不合理である.税・社会保障の負担面を見ると,日本の制度は累進度が最も低い部類であり,ひとり親世帯の負担が不釣り合いに重い.ただし民主党政権下の子ども手当は,所得が低い層ほど負担を大きく軽減していた(Ⅳ–2).Ⅴではアベノミクスの「成果」を検証したうえで,若干の展望を述べる.